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2章
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王様に会うというのに、髪も服もそのまま直行するとは思わず、王子に付いていくと、長い廊下を歩き続けた先に天井まで届くんじゃないかって程の大きさの扉の前まで来たと思えば、扉を開け、中に入ると、今まで見た中で一番広い空間に案内された。
学生の頃の体育館の3倍はあるんじゃないかという大きさ。呆然としていると、その先に王冠を頭にかぶった男性が座っており、いや、まさか着の身着のままで会える人間じゃあるまいし。と思っていると、前を歩く王子が「陛下。聖女を連れてきました」なんて言うものだから、心底驚いた。
まさか、こんなよれよれのスーツ姿で国王陛下と挨拶するなんて、人生なにが起きるか分かったものじゃない。化粧も崩れているだろうし。思わず後ずさろうとすると、王子に腕を掴まれて引きずられた。
いやいやいや。さすがに失礼すぎる。せめて、化粧直しくらいさせてほしかった。
「そなたが聖女とな」
「は、はぁ……」
「なんだ!その腑抜けた返事は!陛下の御前であるぞ!」
「ぅ、ひっ!」
国王のすぐそばに控えている中世の騎士のような鎧を身に着けている男性に叱り飛ばされ、思わず悲鳴がもれた。怖すぎる。ビシビシとプレッシャーのような圧と殺意というのか、心臓がきゅっと締め付けられるような、パニックになって泣きそうになる。
私だって、わけが分からないまま連れてこられているのに。聖女かどうかも分からないのに。
「先ほどの地震は、そなたが起こしたと聞く。それはまことか?」
「は、はい……おそらく」
「理由は。この国を崩すつもりか」
「そ、そんなっことはしません!そうじゃなくてあの人たちがっ!!!」
私は、私を呼んだと騒いだ男たちを指さした。
「あの人たちが、私に無茶をいうからっ!だから女神様?が怒ったんです!……たぶん」
自信はないし、確証もないので、言葉尻は小さくなってしまった。
私に指さされた神官と呼ばれる男たちは、まさか私に指さされるとは思ってもいなかったのか。全員、ビクリと体を震わせ驚いていた。そして、私の言葉を徐々に飲み込めたのか、口々に「それは誤解ですっ!」「陛下惑わされてはなりません!」「その女は悪魔です!この国を崩すつもりなのです!即刻、死刑にすべきです!」と叫んでいる。
―死刑。
その言葉に驚いたのは私のほうだ。
「呼んだのはそっちのくせして、死刑ってどういうことよ!あなたたちは聖杯?をつかったんでしょ!それで呼ばれたのが私なんだから、仕方ないじゃない!」
「聖杯だと?」
聖杯という言葉に王様の態度が急変した。
王子様が言っていた通り、やはり聖杯というアイテムは重要なものらしい。
確かに国に奇跡を起こすなんて呼ばれているものらしいし。それを勝手に使われたとなれば、黙っていられないのかもしれない。
学生の頃の体育館の3倍はあるんじゃないかという大きさ。呆然としていると、その先に王冠を頭にかぶった男性が座っており、いや、まさか着の身着のままで会える人間じゃあるまいし。と思っていると、前を歩く王子が「陛下。聖女を連れてきました」なんて言うものだから、心底驚いた。
まさか、こんなよれよれのスーツ姿で国王陛下と挨拶するなんて、人生なにが起きるか分かったものじゃない。化粧も崩れているだろうし。思わず後ずさろうとすると、王子に腕を掴まれて引きずられた。
いやいやいや。さすがに失礼すぎる。せめて、化粧直しくらいさせてほしかった。
「そなたが聖女とな」
「は、はぁ……」
「なんだ!その腑抜けた返事は!陛下の御前であるぞ!」
「ぅ、ひっ!」
国王のすぐそばに控えている中世の騎士のような鎧を身に着けている男性に叱り飛ばされ、思わず悲鳴がもれた。怖すぎる。ビシビシとプレッシャーのような圧と殺意というのか、心臓がきゅっと締め付けられるような、パニックになって泣きそうになる。
私だって、わけが分からないまま連れてこられているのに。聖女かどうかも分からないのに。
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「は、はい……おそらく」
「理由は。この国を崩すつもりか」
「そ、そんなっことはしません!そうじゃなくてあの人たちがっ!!!」
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「あの人たちが、私に無茶をいうからっ!だから女神様?が怒ったんです!……たぶん」
自信はないし、確証もないので、言葉尻は小さくなってしまった。
私に指さされた神官と呼ばれる男たちは、まさか私に指さされるとは思ってもいなかったのか。全員、ビクリと体を震わせ驚いていた。そして、私の言葉を徐々に飲み込めたのか、口々に「それは誤解ですっ!」「陛下惑わされてはなりません!」「その女は悪魔です!この国を崩すつもりなのです!即刻、死刑にすべきです!」と叫んでいる。
―死刑。
その言葉に驚いたのは私のほうだ。
「呼んだのはそっちのくせして、死刑ってどういうことよ!あなたたちは聖杯?をつかったんでしょ!それで呼ばれたのが私なんだから、仕方ないじゃない!」
「聖杯だと?」
聖杯という言葉に王様の態度が急変した。
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