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石畳の階段を降りると、冷たい空気が肌を刺した。直径百メートルはある円形の演習場が広がる。壁面は古代魔術結界で覆われ、天井には特殊な防護水晶が幾重にも嵌め込まれていた。
(これが……中級魔法演習場か)
数十人が同時に練習できる設計だ。生徒たちが順番に詠唱台へ進んでいく。
「次! エウレカ・レインハルト」
教師の声が反響する。
詠唱台に立ち、両手を掲げる。指先に魔力を集中させながら深く息を吸い込む。
(落ち着いて。……大丈夫。これくらいなら慣れてる)
教科書の図解が脳裏に浮かぶ。中級魔法『フレイム・クロスボウ』──炎の矢を十字に交錯させる攻撃魔法だ。詠唱は短いが魔力制御が精密を極める。発動後に僅かでも魔力が漏れれば暴発の危険がある。
「火精霊よ 我が掌に宿れ──」
第一節を唱えると掌の中央に紅い炎の球体が生まれた。第二節「灼熱の軌跡を描け」で炎が細長く伸びる。ここまでは教科書通り。問題は最終節だ。
(魔力の配分を均等に……)
「──四方に散れ!」
詠唱終了と同時に炎の矢が四本に分裂し、空中で交差しながら目標の防護結界に命中した。結界表面で火花が散り、小さな爆発音が上がる。
教師が腕時計型魔力測定器を確認し、珍しく拍手した。
「見事だレインハルト。魔力変換効率92%か。初級からここまで安定するとは……」
(よし……クリア)
緊張がほどける感覚。しかし次の瞬間、左隣から異音がした。
「うわっ!」
悲鳴に似た声が上がる。視線を向けると、生徒が青ざめた顔で地面に膝をついていた。
「フレイム・クロスボウ!」
再び詠唱するが、炎は矢を形成せず空中で無秩序に暴れ回る。魔力の制御が乱れている証拠だ。教官が即座に結界補強魔法を発動し危険域を封鎖した。
「魔力を流しすぎだ! 制御を緩めろ!」
教師の怒号も虚しく、生徒の掌で炎の塊が膨張し始めた。顔色が土気色になっている。
(まずい……オーバーフロー寸前だ)
彼の周囲に青い警告魔法陣が浮かび上がる。
思わず一歩踏み出しそうになり、踏み留まった。
(大丈夫。私に出来ることなんてない。それに教師がいるんだもの。きっと大丈夫。プロだもの)
歯痒い思いを押し殺し、ただ祈るしかなかった。
隣の教師が防御魔法を準備している。生徒の額に汗が光る。詠唱を中断しようとしているが魔力が暴走している。ついに、爆発が起きた。そして、その爆発は、結界を壊すのに十分な破壊力を持っていたらしい。
(これが……中級魔法演習場か)
数十人が同時に練習できる設計だ。生徒たちが順番に詠唱台へ進んでいく。
「次! エウレカ・レインハルト」
教師の声が反響する。
詠唱台に立ち、両手を掲げる。指先に魔力を集中させながら深く息を吸い込む。
(落ち着いて。……大丈夫。これくらいなら慣れてる)
教科書の図解が脳裏に浮かぶ。中級魔法『フレイム・クロスボウ』──炎の矢を十字に交錯させる攻撃魔法だ。詠唱は短いが魔力制御が精密を極める。発動後に僅かでも魔力が漏れれば暴発の危険がある。
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第一節を唱えると掌の中央に紅い炎の球体が生まれた。第二節「灼熱の軌跡を描け」で炎が細長く伸びる。ここまでは教科書通り。問題は最終節だ。
(魔力の配分を均等に……)
「──四方に散れ!」
詠唱終了と同時に炎の矢が四本に分裂し、空中で交差しながら目標の防護結界に命中した。結界表面で火花が散り、小さな爆発音が上がる。
教師が腕時計型魔力測定器を確認し、珍しく拍手した。
「見事だレインハルト。魔力変換効率92%か。初級からここまで安定するとは……」
(よし……クリア)
緊張がほどける感覚。しかし次の瞬間、左隣から異音がした。
「うわっ!」
悲鳴に似た声が上がる。視線を向けると、生徒が青ざめた顔で地面に膝をついていた。
「フレイム・クロスボウ!」
再び詠唱するが、炎は矢を形成せず空中で無秩序に暴れ回る。魔力の制御が乱れている証拠だ。教官が即座に結界補強魔法を発動し危険域を封鎖した。
「魔力を流しすぎだ! 制御を緩めろ!」
教師の怒号も虚しく、生徒の掌で炎の塊が膨張し始めた。顔色が土気色になっている。
(まずい……オーバーフロー寸前だ)
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思わず一歩踏み出しそうになり、踏み留まった。
(大丈夫。私に出来ることなんてない。それに教師がいるんだもの。きっと大丈夫。プロだもの)
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隣の教師が防御魔法を準備している。生徒の額に汗が光る。詠唱を中断しようとしているが魔力が暴走している。ついに、爆発が起きた。そして、その爆発は、結界を壊すのに十分な破壊力を持っていたらしい。
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