私が作るお守りは偽物らしいです。なので、他の国に行きます。お守りの効力はなくなりますが、大丈夫ですよね

猿喰 森繁

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私の心は弾んでいた。新しい街に新しい店。
アスランが聖樹を出現させてくれたおかげで、すべてが予想以上にうまく進んでいる。
翌日、店を開けると予想以上の行列ができていた。

「うわぁ……こんなに人が!」

店を開けた途端、目の前の光景に息を飲んだ。通りには長い列ができ、冒険者たちの装備が太陽の下でキラキラと輝いている。剣士の鎧、弓使いの革防具、魔法使いの杖──さまざまな職業の冒険者たちが集まっていた。そして彼ら全員が同じ目的を持っている。

「お守りのお店って本当にあるのか?」
「あの噂は嘘じゃなかったな」
「教会の加護なしで瘴気から身を守れるって言ってたけどマジなのか?」

口々にそんな会話をしながら待つ人々を見て、昨晩の不安が嘘のように吹き飛んだ。

「すみません。順番に並んでくださーい!」

冒険者たちが次々と店に入ってくる。
今日は開店初日ということもあって、最初は少しずつ来てくれたら良いかなと思っていたのに。

「ほら。そこ列を乱さない!」
「わんわん」

ポン助やアスランが列の整備をし、私がお守りの販売をする。
子どものアスランと犬のポン助が列整備をしているので、お客さんたちが驚いて目を丸くしている。こちらはアルバイトを雇う暇もお金もないので、猫の手ならぬ犬の手を借りているわけだ。

「すみません。こちらでお守りはいくらで販売されていますか?」
「え~っと……」

昨日計算しておいた値段表を確認する。
ギルド共和国は物価が高いから少し高めに設定しているのだ。
それでも教会で祈りを受けるよりもずっと安いはず。
さらにギルド共和国では聖女様がいないため、お守りの需要はさらに高い。

「はい。大銅貨2枚になります」
「それだけでいいのか?」

意外そうな顔をして驚いている。
教会よりもずっと安いからだろうか?
もちろんこのお守りに込められた効果は本物だ。
これまで多くの人々を救ってきた証拠もある。

「じゃあ、20個お願いします!」
「え?そんなに?」
「だってこのお守りを身につけていたら絶対に死なないって聞いたんだよ」
「死ぬかどうかは分かりませんが、確かにこのお守りを身につけていれば魔物から身を守れますよ」
「よーし。じゃあもっと買っちゃおうかな」
「あはは。ありがとうございます!」

とまあそんな感じでどんどん商品が売れていく。
冒険者たちは特に命に関わる仕事なので命を守るものに対してお金を惜しまないようだ。

「次の方~!こちらのお守りでお間違いないですか?」
「ああ。瘴気を完全に無効化するやつが欲しいんだ」
「それならこちらで十分ですよ。ただし、一年で効果は切れてしまいますので……」

だいぶお客さんの波が緩やかになってきた。今は、もう一時間に一人、二人やってくる程度である。
アスランは退屈そうにカウンターの上で足をぶらぶらさせている。子ども扱いされるたびにむくれ顔になるのは相変わらずだが、今は何も言わずに様子を見ているようだ。たまに客と目が合うと、大人ぶって咳払いをしてみせるが、それがまた子どもっぽくて逆効果になっている。

「すごい……今日だけでこんなに売れた」

夕方になり、最後のお客さんが帰った後で売り上げを数えると、持って来た素材や道具の代金を差し引いても大儲けだった。

「これならこの国でもやっていけそうだね」

ポン助が尻尾を振って「わん!」と答える。三人で乾杯するにはまだ少し早い時間だけれど、ジュースで軽くお祝いをした。

翌朝も店を開けると、昨日以上の行列ができていた。噂は瞬く間に広まったらしい。遠方から訪れた冒険者パーティーは、仲間の分までまとめて購入していく。ギルド職員の制服を着た女性が「正式に採用したい」と申し出てきた時は驚いた。教会に頼らずに済むなら格安だと喜んでいる様子だ。

「すごいよ!アスラン。こんなに儲かるなんて!」
「よかったな」

しばらくは目も回る忙しさだった。とにかくこの土地に慣れるのとお客さんを定着させたいために、休み返上で働き続けた。そして、半年が経った頃、ようやくお店も順調に軌道に乗り、仕事にも町にも慣れてきたころだった。

「最近、顔色が悪い人が多いような……」
「わふ」

今日は定休日。
買い出しに街を歩いていると、咳をしている人をたまに見かけるようになった。ひどくつらそうにしている。

「最近東の鉱山町で熱病が流行ってるらしい」
「ああ。それで」

咳をしていたのは、この町のギルドに品物を売りに来ている人や買い出しに来ている人たちだったのだ。
この町は、ギルドがたくさんあるので、人の入れ替わりが激しい上に他の街から商人や冒険者が来る。
ある日の午後、薬草採取帰りだという年配の冒険者がふと漏らした。

「鉱山の奥に湧いた瘴気が原因だって噂だ」
「瘴気……」
「おかげで薬草が、よく売れるようになった。こちらはありがたいがね。お嬢ちゃんも体には、気をつけなさい」
「ありがとうございます。お客さんもお気をつけて」
「また来るよ」

胸の奥がざわついた。鉱山町は聖樹の影響範囲から少し外れているとはいえ、そう遠くはない。たまたま病人が出たのかもしれない。それでも不吉な予感がした。

「アスラン」
「ん?」
「今の話聞いた?」
「ああ」

アスランはお茶をすすっていた手を止めた。いつもふざけた目つきが真剣な色を帯びる。

「魔物が狂暴化する前兆かもしれん」
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