私が作るお守りは偽物らしいです。なので、他の国に行きます。お守りの効力はなくなりますが、大丈夫ですよね

猿喰 森繁

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「邪神って、どういうこと?」
「お前、あいつのお守り見たことあるか?」
「ないわ。でも、みんな効力があるって言ってたけど」
「最初はな」
「最初は?」
「確かに、簡単な願いなら、すぐに叶うだろうな。だが、必ず対価を渡さないといけない上に持ち続けていると、次第に生命力を奪われていく」
「そ、そんな恐ろしいものだったの?」
「多分、魔族の何かに持ち寄られたんじゃないか?人間から、生命力を吸い上げるのが、好きだからな」
「は、はぁ…。世界には、色々と恐ろしいものがあるのね」
「お前も勉強したはずだろう」
「そうだけど。…でも、本当にあるなんて思わないじゃない。そんな、生命力を吸い取るなんて、呪いのアイテムが」
「いや、割とゴロゴロとあるぞ」
「えぇ…」

嫌だなぁ。
確かに浄化士なんて、職業が存在しているし、神官たちの試練には、呪いのアイテムの浄化なんて、項目もあると聞いたことがある。
だからといって、私の町にそんな物騒なものを売りつける店が、存在していたことに驚く。しかも、その店に私は、裁判で負けてしまった上に、こちらが、偽物判定を受けてしまった。
う、なんか屈辱だ。
悔しい。
こっちは、生まれてこの方、コツコツとあの町で、ちゃんと正規品…いや、神様の力を分けてもらっているお守りに対して使う言葉ではないか…。
や。でも、「本物」を売っていたのに、負けたなんて。

「そりゃあ、本物っていったって、そんな簡単に願いを叶えることが出来る万能機じゃないけどさぁ。努力を後押しする、ちょっとした力しかないかもしれないけど。そんな怪しさ満載のほうにいっちゃうかなー」
「人間なんて、大多数が、楽で簡単に事が進むほうに行くに決まってるだろ。お前が、悪いんじゃない。偽物を買ったやつらだって、仕方ないさ。誰だって、願いを叶えることが出来るなら、それに飛びつくはずさ。魔族だって、それを知っているから、作ってるんだからな」
「え、魔族にもお守り屋さんいるの?」
「邪神のだけどな」
「ええ…。気になる。めっちゃ仕事見たい…。魔族の同業者とか、ちょっとおもしろいかも」
「人間の商人に混じって、仕事しているから、お前も仕事とこのまま旅を続けてたら、もしかしたら会うかもしれないな」
「うわー。ちょっと会ってみたいなぁ」
「わんわん!」
「こいつは、絶対いやだってさ」
「ポン助は、邪神を敬っている魔族には、会いたくないかぁ。おもしろいなぁ。魔族にとっては、こっちの神様が、邪神だもんねぇ。向こうもこっちとは、会いたくないかなぁ」
「たぶんな。おそらくポン助に食われると思うし、気配を察して逃げられる可能性のほうが大きい…まぁ、よほど鈍くなければ、出くわさないだろうな」
「そっかぁ。まぁ、このまま魔族と、会わないほうが身のためだしね」
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