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「んで?本当にアイリは聖女様なのか?」
「そう見える?」
「見えない」
「だよね。……私も分からないんだよね。でも、聖女として連れてこられたのは本当なんだ」

私はエドにこれまでのことを話した。
私が聖女として、この世界に呼び出されたこと。
呼ばれたのに、何も説明がなかったこと。
この世界のことも聖女のことも何も分からないこと。
おまけに自分が本当に聖女の力があるか分からないこと。
薬もしくは何かしらの術で、もう一人の聖女?の真美ちゃんが操られていること。

「待て待て。じゃあお前はこの世界の人間じゃねぇってことか?えーっと、でもこの国の言葉は分かるんだな」
「その辺はまぁ……よく分からないけど」
「帰る算段はついてるのか?」
「分からない。エドは聖女召喚の儀式について何か知ってる?」
「俺が知ってると思うか?王族秘伝の術なんだろ?噂は聞いたことあったけど、マジで違う世界から聖女を引っ張る魔法があるなんてな……夢物語かと思ってたぜ」
「まぁ。私も異世界転移なんてラノベかよって思うよ」
「ラノベ?」
「気にしないで。ひとりごと」

ふぅっと二人して溜息をついているとパレードのほうから一人の男が近づいてくるのが見えた。

「え?あの人」

騎士団長と言われていたあの男だった。

「逃げるか?」
「あの人、私のことを庇ってくれたし、話聞いてみようよ」
「でも、お前を捕まえに来たんだろうよ」
「……この国に聖女って必要だと思う?」

私の問いに答えたのはエドではなく、近づいてきた男の方だった。

「必要だ。間違いなく」
「……そうでしょうね」
「本当にあなたは聖女なのか?」
「どうでしょう」
「はぐらかさないでくれ」
「いや。本当に分からないんです」

私は首を振って答える。
とにかく説明不足で投げ出されたのだから仕方ない。

「どういうことだ」

この人を信用してもいいのだろうか。
異世界から来た事。
聖女として呼ばれたことも、……まして王族に薬か変な術をかけられそうになったことも、真実ちゃんが操られていることも。
この人は、一応騎士団長なんだよね…。ってことは、王族の味方ってことで、あの腐った王様の仲間ってことだもんな。そんな人にいろいろと打ち明けてしまってもいいのだろうか。

「私では信用ならないか」
「アルベルト隊長!」
「シルバー」
「…アイリ。エドまで…どうしたんだ?それにアルベルト隊長となぜ一緒にいるんだ?」
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