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「そうと決まれば、さっそく婚約破棄の用意をしようか。せっかくだから、莫大な慰謝料を請求してやろう。まぁ、我が家にこれ以上お金は必要ないんだがな!」

こんなことを平民に聞かれたら、また抗議文が殺到するに決まっています。金が必要ないのであれば、俺たちに渡せという手紙が送られてくるのは、日常茶飯事ですからね。

「そのお金は孤児院に寄付いたしましょう。…ふふ。婚約破棄のお金で寄付するだなんて、なんて愉快なんでしょう」
「きっと兄上は、払えないだろうから、借金をさせましょう」
「そうだな。こちらで取り立ての準備もさせておこうか。逃げられないように、きっちりと書類を作っておかねば…」
「私との婚約が破棄されれば、王太子としての身分もはく奪されますのよね?」
「もちろん!我が家を取り入れたくて、陛下は、あの無能を王太子にしたのだから」
「まぁ、お顔だけは整っていますし、女遊びが大好きなようですから、そういったお仕事をされてもいいのかもしれませんね」
「一応、王族だからな…。難しいかもしれん。…まぁ。そこは管轄の店で働いてもらうことになれば、うまくいくかもしれんが…」
「一応、王族というところが悩ましいですね」
「そうだな…。正当な血筋の持ち主だからな。あんな男でも、勝手に子孫が増えてしまうのは、困りものだ」
「そこは、父上と相談してみましょうか。…しかし、兄上は、書類仕事は全くできませんし、肉体労働なんて、絶対に、死んでも、やらないことでしょう」
「そうですね。きっとそんなことするくらいなら、ありとあらゆる手を使ってでも…なんでしたら、自身の体を使ってでも、やりませんよね…」
「それが、兄上の特技ですからね…」

王太子とは思えないほど、性に奔放な方ですからね…。
あの方、体を繋げられるなら、殿方でも大丈夫なそうです。
殿方とも体の関係を持っているという情報を最近入手したばかりで、知った当初は、本当にこの方は、私をあらゆる意味で裏切ってくださるわ…。と、謎の感動に包まれました。
私、殿方にも負けるほど、魅力がないと知ったときのショックもありましたけど…。

……。
ええ。気になんてしておりません。
私は、確かに顔も体も普通ですから。
家が、お金持ちである以外、私に長所なんてありませんから。ええ。自覚しております。別に傷ついてなんかありません。

「どうしたの?なんか、泣いてる?」
「何でもありません。ええ。別に。いいんじゃありませんか?風俗でもなんでも、売り飛ばせばよろしいのではないのでしょうか」
「ナターシャ?」
「娘は、殿方にも負けたことに、少しだけショックを受けているみたいだ」

さすがお父様。
自身の娘の突飛な発言にも驚きません。
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