また会えたのは嬉しいんだけど…これ、どうすれば?

フリージア

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「わー!綺麗なところですわね!」
リーゼもみんなも湖の美しさに圧倒されている。私はと言うと…
「嘘…この魔力…」
思わぬ形で過去の産物と出会いを果たし、驚きを通り越してむしろ冷静になっる。確かに、立地や植生は似ているとは思ったけど…もうずっと昔の事だ、とっくに変化して…いや、そう言えば保存魔法かけていたんだっけ?通りで、今では幻と言われる薬草がこんなにも生い茂って…あの薬草、ハーブティーにするとすごく美味しんだよなー。随分と時が流れてしまい、当時の記憶が曖昧だ。まあ、半ば駆り立てらるようにここから離れたしな…あの時私はこの場所に1人でいることが…じゃなくて!思いっきり頭を振る。いつまでも過去に囚われてはいけない。どんなに記憶が曖昧でも、今目の前に広がる光景が、私がここに住んでいたことを教えてくれる。ざっと見ただけでも、結界魔法、隠蔽魔法、空間魔法、時空魔法…まあとにかく、今の時代では滅多にお目にかかれない珍しい魔法が沢山かけられている。そしてそのどれもがオリジナルレベルに手が加えられていて、最早その魔法式は本人にしか解読不可能だろう。そもそもこれを魔法と認識すること自体が困難だ。実際、誰一人として気が付いて無いみたいだし。
「シア、行かないのか?」
ウィルが尋ねて来る。他のみんなは湖の辺りで遊んでいる。ひどく懐かしい光景だ。私たちも…
「私はここでいい。ウィルも行って来たら?」
その場にしゃがみ込む。今、あの場へ行ったら間違いなく私は私で居られなくなる。もう自分の中で消化できたと思っていたのに…私は…
「じゃあ、俺もここに居る」
ウィルが私の隣に座る。今は1人にしてほしいんだけど…思わず抗議の視線を送ると、
「無駄に考え込むな。どうせ悩んでもしょうがない。」
「!?」
ウィルがはっきりした口調でそう言った。図星を突かれて驚く。何で私の考えが読め…
「出会った時から、お前はよくそんな顔をしていた。年月が経つにつれ、減ってはいったが。」
嘘…出会った頃からって…と言うか、私ってそんなに顔に出てる?
「今になっても答えが出ないんだ。考えても無駄だろ。」
ウィルのあっけらんとした物言いに思わずため息をついてしまう。
「そこまで割り切れたら、こんなに長い間悩んで無いから」
思わず言い返してしまう。ウィルは気にした風もなく、
「だろうな」
…だろうなって!結局何が言いたいんだよ…
「ずっと長い間思い悩んでいるんだ。お前にとっては大切な事なんだろ?じゃあ…『無理矢理忘れようとするな』」
ウィルが私の瞳を射抜く。
「…何を言って」
ウィルの言っている意味が分からない。私は…
「お前はそれを忘れる方法を探していた。そうだろ?」
ウィルが私の顔を覗き込む。嘘は許さないと目が言っている。
私は…あれから1人ぼっちになって、初めて孤独を知った。心にぽっかり穴が開いたような感じがして、それを何とかして埋めようと、思い出の地から離れ、人との関わりを断ち、研究に明け暮れた。けど、結局穴は埋まらなくて、長い時が流れ…そして、なんやかんやで学園の教師になって忙しい毎日を送った。思えば、この時が1番思い出さずに…え?待って今、私…
「思い出さずにいれてよかったと思った?」
声に出して愕然とする。よくよく考えてみれば、この地から去ったのも、仲間との関わりを絶ったのも、研究で他のことを考えないようにしたのも、全部…
「忘れようとしてたからだ…」
声が掠れる。全ての辻褄が合うと同時に心底自分のことが嫌いになる。あの時の悲しみに耐えきれず、それまでの楽しかった思い出も全て忘れようとしていたなんて…こんな私を知ったら彼は…いや、きっと怒ることもなく優しく微笑むのだろう。たとえ自身のことを忘れられようとも、それで私が幸せになるならばと納得してしまう人だ。本当に…
「自分が情けない」
膝を抱えて縮まり込む。このまま消えてしまいたい。全てを捨ててどこか遠くへ…
「気が付けたならそれでいいだろ。これからは大切なもの、自分から捨てようとするなよ。」
ウィルが私の頭を撫でながら優しい声で言う。…なんでそれを言っちゃうかな。
「…ウィルはやっぱりエスパー?」
「そんな冗談を言えるならもう大丈夫だな。ほら、俺らも薬草詰みに行くぞ。」
ウィルが私の手を引く。今の私には、いや、今の私にも大切なものが沢山ある。家族に、友人、教え子に…
「なんだ?そんなに見つめて?」
ウィルの手を取りながら、
「なんでもない」
そして、ウィル。彼は私が立ち止まった時、ふらりと現れては私を先へ先へと引っ張っていく。始めはなんて礼儀のなっていないガキだろうと思ったが、結果的にはあの時、彼が連れ出してくれたおかげで私は今ここに居る。人生、どう転ぶか分からないものだ。
「ありがとう」私をあそこから連れ出してくれて
ウィルは意地の悪い笑みを浮かべながら、
「お礼は体でいいぞ」
うっ…!でも、ウィルのおかげで少し吹っ切れたんだ。仕方ない…
「分かった…」
「はっ?」
ウィルが驚いた顔をする。もっと驚くがいい!
「ここの珍しい薬草、全て採取してあげよう!」
この周辺のものは全部私が育てていた物だし、品質は最上級!当時でも珍しかったものが色々…
「やっぱりそうなるよな…」
ウィルがつまらなそうな顔をして呟く。ひどい!私の薬草、結構評判良かったんだよ!?私が調合した薬をもらいに遠くからいろんな人が訪ねて来て…まあ、ほとんどの人にはお帰り願ったけど。ウィルの反応に若干納得いかない私であった。
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