Fragment〜ショートショート集〜

初瀬四季[ハツセシキ]

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犬と女

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 一人の青年が散歩中、大きな屋敷の前で立ち止まる。
 その屋敷のテラスでは、いつも決まった時間に犬と日光浴をしている女性がいた。

 青年は、毎日その女性が犬に話しかけるのにこっそりと聞き耳をたてるのが日課だった。

「ねぇ、聞いて、今日こんな話を聞いたの」

 犬はわかった。とでもいうように一度吠えると尻尾を千切れんばかりに振る。

「お向かいの家にこの前、物盗りが入ったって、昨日話したわよね」

 犬はそれに返事をするように一度吠える。

「それを聞いた、お隣のおじさんがね、うちは、監視カメラをつけてるから大丈夫ってたかをくくってたら、いつのまにか、物盗りにやられてたらしいのよ」

 犬は、まるでかわいそうとでもいうように耳を垂れる。

「隣のおばさんったら、あなたも注意しないとダメよですって。うちには、あなたがいるから大丈夫よね」

 犬は任せろとでもいうようにすっくと立ち上がり、凛々しい顔を見せる。

 女性は、腕時計を見ると、もうこんな時間。そろそろ、仕事に戻るわ。と犬に話しかけ、車でどこかへ向かっていった。

 犬は、出かけていく女性を名残惜しそうに見つめ続けていた。

 青年は、ポケットからジャーキーを取り出すと、犬に向かって投げる。

 犬は、それに気付くと、喜び勇んでジャーキーにかじりつく。

 青年は、それを微笑ましそうに眺めると、

「僕も、そろそろ仕事しますか」

 と呟くのだった。
 
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