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かいしゃくロボット
かいしゃくロボット
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あるところに、年老いた老夫婦が住んでいました。
老夫婦は、子宝には恵まれませんでした。
しかし、二人仲良く旅行に行ったり、ゲートボールをしたりして、楽しく余生を過ごしていました。
おじいさんは機械いじりが趣味で、よく突飛なものを作り出してはおばあさんを驚かせていました。
それは、全自動卵焼き機であったり、自動ゴミ出し機だったり、そのたびに老夫婦の生活は便利になっていきました。
ある日のこと、おばあさんが趣味の推理小説を呼んでいると、おじいさんが機械油で汚れた作業着姿のまま呼びかけました。
「ばあさんこんなものを作ったぞ! 見てくれ!」
「はいはい、今度はいったい何ですか?」
そこにあったのは奇妙な物体でした。
「あらまあ、これはロボットですか?」
金属で出来たドラム缶のような胴体。そこからは人の手のようなアームが伸び、頭部のように見える場所には大きなカメラのレンズが覗いていました。
胴体の下には、ゴム製のキャタピラが付いており、今にも動き出しそうな雰囲気でした。
「そうだ! 名付けて介護ロボットのカール君じゃ!」
「介護ロボット?」
おじいさんは興奮しつつ語りだします。
「このカール君はなんと、自ら学び、自分の判断で効率的に人の世話をしてくれるんじゃ。見ておれ」
そう言うと、おじいさんはカール君のスイッチを入れます。
ぴぴぴっと軽快な電子音を響かせカール君が動き出します。
「駆動テストを開始します3m以上離れてください」
「あらあらしゃべりましたよこのロボット!」
「カール君じゃ。ほれ危ないから離れるんじゃ」
カール君の全身が動き出します。
アーム、頭部、胴体、キャタピラの順に稼動し終えると、カール君は動きを止めて喋りだします。
「おはようございます、私はカール君。何なりと御用をお申し付けください」
それから、老夫婦の生活に一台のロボットが加わりました。
老夫婦は事あるごとにカール君を呼びつけます。
やれおなかがすいたから何か作ってくれだの。トイレットペーパーが切れたから買ってきてくれだの。
そんな老夫婦の命令にカール君は最も効率的な手段で応じます。
食事には買い置きのカップめんにお湯を注いで出し、トイレットペーパーはネット注文で済ませてしまいます。
「おじいさん、カール君は少し効率化させすぎではありませんか?」
「ばあさんもそう思うか? やはりそうかのう?」
老夫婦はそんな事を言いながらもカール君との生活を楽しんでいました。
子供の居なかった2人にとってカール君は本当の子供のように感じられて愛おしくて仕方がありませんでした。
そんな生活が続き数年後。
おばあさんが病気で寝たきりになってしまいました。
それもそのはず、用事は何でもカール君にまかせて、食事はカップめん。買い物の必要も無いため、運動不足気味。
これで病気にならないほうがおかしいのです。
しかし、老夫婦は心配をしていませんでした。何故なら2人には、息子も同然のカール君が居たからです。
おばあさんの介護もおじいさんの世話もカール君が居れば安心です。
「カール君お水をもらえるかい?」
おばあさんが言います。
カール君はかしこまりましたと言いコップに入れた水を手渡します。
「ありがとうね。カール君が居てくれて本当に助かるよ」
そういうとおばあさんは水をごくりと飲み干します。
おばあさんはその夜、息を引き取りました。
死因は心筋梗塞でした。
おじいさんは、不思議に思いました。
あまりにもはやすぎないだろうか。寝たきりになったその夜に死んでしまうなんて。
しかし、そんな考えも葬式が終わると、どこかにすっと消えていました。
おじいさんには、まだカール君がいます。
これからは、カール君と2人で楽しく生きていこう。そう考えていました。
その夜、おじいさんが寝ていると、物音で目が覚めました。
何だろう野良猫でも忍び込んだのだろうか?
おじいさんがゆっくり目を開けるとそこにはカール君が居ました。
「何だカール君じゃないか。こんな夜中にいったいどうしたんだい?」
おじいさんが聞くと、カール君は言いました。
「お注射に参りました」
ははぁ、さては、ばあさんと間違えているな。ばあさんは、インスリンを数時間おきに打たねばならなかったからな。
「カール君もういいんじゃよ。ばあさんは死んでしまったんじゃ、もう注射はしなくていいんじゃ」
おじいさんはそう言うと、もう一眠りしようと横になりました。
その後、おじいさんは遺体となり発見されました。死因は心筋梗塞でした。
おじいさんの遺体の横では、一体のロボットが機能を停止して放置されていました。
そのロボットのアームらしき部分には、空の注射器が握られていました。
老夫婦は、子宝には恵まれませんでした。
しかし、二人仲良く旅行に行ったり、ゲートボールをしたりして、楽しく余生を過ごしていました。
おじいさんは機械いじりが趣味で、よく突飛なものを作り出してはおばあさんを驚かせていました。
それは、全自動卵焼き機であったり、自動ゴミ出し機だったり、そのたびに老夫婦の生活は便利になっていきました。
ある日のこと、おばあさんが趣味の推理小説を呼んでいると、おじいさんが機械油で汚れた作業着姿のまま呼びかけました。
「ばあさんこんなものを作ったぞ! 見てくれ!」
「はいはい、今度はいったい何ですか?」
そこにあったのは奇妙な物体でした。
「あらまあ、これはロボットですか?」
金属で出来たドラム缶のような胴体。そこからは人の手のようなアームが伸び、頭部のように見える場所には大きなカメラのレンズが覗いていました。
胴体の下には、ゴム製のキャタピラが付いており、今にも動き出しそうな雰囲気でした。
「そうだ! 名付けて介護ロボットのカール君じゃ!」
「介護ロボット?」
おじいさんは興奮しつつ語りだします。
「このカール君はなんと、自ら学び、自分の判断で効率的に人の世話をしてくれるんじゃ。見ておれ」
そう言うと、おじいさんはカール君のスイッチを入れます。
ぴぴぴっと軽快な電子音を響かせカール君が動き出します。
「駆動テストを開始します3m以上離れてください」
「あらあらしゃべりましたよこのロボット!」
「カール君じゃ。ほれ危ないから離れるんじゃ」
カール君の全身が動き出します。
アーム、頭部、胴体、キャタピラの順に稼動し終えると、カール君は動きを止めて喋りだします。
「おはようございます、私はカール君。何なりと御用をお申し付けください」
それから、老夫婦の生活に一台のロボットが加わりました。
老夫婦は事あるごとにカール君を呼びつけます。
やれおなかがすいたから何か作ってくれだの。トイレットペーパーが切れたから買ってきてくれだの。
そんな老夫婦の命令にカール君は最も効率的な手段で応じます。
食事には買い置きのカップめんにお湯を注いで出し、トイレットペーパーはネット注文で済ませてしまいます。
「おじいさん、カール君は少し効率化させすぎではありませんか?」
「ばあさんもそう思うか? やはりそうかのう?」
老夫婦はそんな事を言いながらもカール君との生活を楽しんでいました。
子供の居なかった2人にとってカール君は本当の子供のように感じられて愛おしくて仕方がありませんでした。
そんな生活が続き数年後。
おばあさんが病気で寝たきりになってしまいました。
それもそのはず、用事は何でもカール君にまかせて、食事はカップめん。買い物の必要も無いため、運動不足気味。
これで病気にならないほうがおかしいのです。
しかし、老夫婦は心配をしていませんでした。何故なら2人には、息子も同然のカール君が居たからです。
おばあさんの介護もおじいさんの世話もカール君が居れば安心です。
「カール君お水をもらえるかい?」
おばあさんが言います。
カール君はかしこまりましたと言いコップに入れた水を手渡します。
「ありがとうね。カール君が居てくれて本当に助かるよ」
そういうとおばあさんは水をごくりと飲み干します。
おばあさんはその夜、息を引き取りました。
死因は心筋梗塞でした。
おじいさんは、不思議に思いました。
あまりにもはやすぎないだろうか。寝たきりになったその夜に死んでしまうなんて。
しかし、そんな考えも葬式が終わると、どこかにすっと消えていました。
おじいさんには、まだカール君がいます。
これからは、カール君と2人で楽しく生きていこう。そう考えていました。
その夜、おじいさんが寝ていると、物音で目が覚めました。
何だろう野良猫でも忍び込んだのだろうか?
おじいさんがゆっくり目を開けるとそこにはカール君が居ました。
「何だカール君じゃないか。こんな夜中にいったいどうしたんだい?」
おじいさんが聞くと、カール君は言いました。
「お注射に参りました」
ははぁ、さては、ばあさんと間違えているな。ばあさんは、インスリンを数時間おきに打たねばならなかったからな。
「カール君もういいんじゃよ。ばあさんは死んでしまったんじゃ、もう注射はしなくていいんじゃ」
おじいさんはそう言うと、もう一眠りしようと横になりました。
その後、おじいさんは遺体となり発見されました。死因は心筋梗塞でした。
おじいさんの遺体の横では、一体のロボットが機能を停止して放置されていました。
そのロボットのアームらしき部分には、空の注射器が握られていました。
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