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よく考えると
かたおもい
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肩が重い。
昨日から続けていた作業がやっとひと段落し、汚れと疲れを洗い流そうと、風呂場に移動する。
熱いシャワーを浴びながら、昨日のことを思い出す。
彼女に別れを切り出し、納得をえないまま無理矢理さよならをした。
彼女には恨まれてしまっただろうか。
しかし、それも仕方ないだろう。
彼女は、花屋の店員だった。母のお見舞いの花を買いに行った時分に出会い、一介のサラリーマンである私のなにに惹かれたのか、彼女の方から告白をしてきた。
彼女は、綺麗だった。長い黒髪と、きめ細やかな肌に赤い色がよく映えた。
ただ、性格はあまり良いとは言えなかった。他の女性と話をしただけで嫉妬し私を束縛しようとする。それが原因で壊れた人間関係も多かった。
思えば、最後の引き金は、あのことだったのかもしれない。私が近所の野良猫を拾ってきた際、彼女はあまりいい顔をしなかった。
「私、猫って嫌いなの」
そう言って、その日からしばらくウチを訪れなかった。そんなある日、仕事から帰ってきて、猫に餌をあげようと探すが、見あたらない。
代わりに合鍵を持っている彼女が家の中で料理をしていた。
「珍しいな。この頃はあまり来なかったのに」
「そう? まぁ、気まぐれよ」
野菜を刻む音が室内に響く。
「ところで、猫を見なかったか?」
「さぁ? 散歩にでも行ったんじゃない。それより、今日はシチューよ。良いお肉が手に入ったの」
口に合うと良いけど。という彼女は、ニッコリ笑うと、サラダと一緒に、ビーフシチューをテーブルに並べる。
スプーンで口にシチューを運ぶ。
「どうかしら?」
「あ、ああ、美味しいよ」
彼女の手前、そう言ったが、シチューの味は、褒められたものではなかった。
「いっぱい作ったからお代わりしてね」
正直、もう遠慮したかったので、あまり体調が良くないからと、辞した。
その日から彼女は良くウチに入り浸るようになった。代わりに猫の姿はとんと見あたらなくなっていた。
シャワーを一度止めて、髪を洗い始める。昔から、この動作は苦手だ。目を瞑ると、どこからか視線を感じる気がする。
そんなことはありえないと、心のどこかでわかっているのに、つい、後ろを気にしてしまう。
猫の鳴き声が聞こえた気がした。勢いよく、後ろを振り返る。
帰ってきたのか? しかし、何もいない。
正面を向くと鏡に何か、黒いものが映っているのが見えた。
もう一度、後ろを向く。何もいない。見間違いだろうか。
正面の鏡にも、もう私以外何も映ってはいなかった。
はぁ。と深くため息をつき、シャンプーを洗い流す。やはり見間違いだったようだ。ふと、下をみる。排水口に何かが詰まっているようだ。それは、長い黒髪だった。
背筋を、ゾクリとした悪寒がはしる。
ありえないことではない。彼女もここを利用することはあった。しかし、先頃綺麗に掃除したはずだった。
彼女の痕跡を残すのが嫌で、部屋の隅々まで念入りに。
その時、排水口も確かに綺麗に掃除したはずだ。
私の身体についていたのだろうか。彼女の痕跡は全て洗い流したはずだが。
そう思い、自らの身体を触る。特に汚れているところはない。
ほっと胸を撫で下ろして、肩をまわす。しかし、肩がこる。左肩を右手で揉むようにする。
その内、マッサージにでも行くかな。と何の気なしに右手を見ると、赤い血がべったりと付着していた。
「まだ、付いてたのか」
そう思い身体を洗う。今度こそ、彼女の痕跡は全て洗い流したはずだ。
昨日から続けていた作業がやっとひと段落し、汚れと疲れを洗い流そうと、風呂場に移動する。
熱いシャワーを浴びながら、昨日のことを思い出す。
彼女に別れを切り出し、納得をえないまま無理矢理さよならをした。
彼女には恨まれてしまっただろうか。
しかし、それも仕方ないだろう。
彼女は、花屋の店員だった。母のお見舞いの花を買いに行った時分に出会い、一介のサラリーマンである私のなにに惹かれたのか、彼女の方から告白をしてきた。
彼女は、綺麗だった。長い黒髪と、きめ細やかな肌に赤い色がよく映えた。
ただ、性格はあまり良いとは言えなかった。他の女性と話をしただけで嫉妬し私を束縛しようとする。それが原因で壊れた人間関係も多かった。
思えば、最後の引き金は、あのことだったのかもしれない。私が近所の野良猫を拾ってきた際、彼女はあまりいい顔をしなかった。
「私、猫って嫌いなの」
そう言って、その日からしばらくウチを訪れなかった。そんなある日、仕事から帰ってきて、猫に餌をあげようと探すが、見あたらない。
代わりに合鍵を持っている彼女が家の中で料理をしていた。
「珍しいな。この頃はあまり来なかったのに」
「そう? まぁ、気まぐれよ」
野菜を刻む音が室内に響く。
「ところで、猫を見なかったか?」
「さぁ? 散歩にでも行ったんじゃない。それより、今日はシチューよ。良いお肉が手に入ったの」
口に合うと良いけど。という彼女は、ニッコリ笑うと、サラダと一緒に、ビーフシチューをテーブルに並べる。
スプーンで口にシチューを運ぶ。
「どうかしら?」
「あ、ああ、美味しいよ」
彼女の手前、そう言ったが、シチューの味は、褒められたものではなかった。
「いっぱい作ったからお代わりしてね」
正直、もう遠慮したかったので、あまり体調が良くないからと、辞した。
その日から彼女は良くウチに入り浸るようになった。代わりに猫の姿はとんと見あたらなくなっていた。
シャワーを一度止めて、髪を洗い始める。昔から、この動作は苦手だ。目を瞑ると、どこからか視線を感じる気がする。
そんなことはありえないと、心のどこかでわかっているのに、つい、後ろを気にしてしまう。
猫の鳴き声が聞こえた気がした。勢いよく、後ろを振り返る。
帰ってきたのか? しかし、何もいない。
正面を向くと鏡に何か、黒いものが映っているのが見えた。
もう一度、後ろを向く。何もいない。見間違いだろうか。
正面の鏡にも、もう私以外何も映ってはいなかった。
はぁ。と深くため息をつき、シャンプーを洗い流す。やはり見間違いだったようだ。ふと、下をみる。排水口に何かが詰まっているようだ。それは、長い黒髪だった。
背筋を、ゾクリとした悪寒がはしる。
ありえないことではない。彼女もここを利用することはあった。しかし、先頃綺麗に掃除したはずだった。
彼女の痕跡を残すのが嫌で、部屋の隅々まで念入りに。
その時、排水口も確かに綺麗に掃除したはずだ。
私の身体についていたのだろうか。彼女の痕跡は全て洗い流したはずだが。
そう思い、自らの身体を触る。特に汚れているところはない。
ほっと胸を撫で下ろして、肩をまわす。しかし、肩がこる。左肩を右手で揉むようにする。
その内、マッサージにでも行くかな。と何の気なしに右手を見ると、赤い血がべったりと付着していた。
「まだ、付いてたのか」
そう思い身体を洗う。今度こそ、彼女の痕跡は全て洗い流したはずだ。
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