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馬の耳に念仏 「改」

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 とりあえず、生活費の調達は急務なので、ぬこ探しのクエストを受けることにする。

「しかし、ぬこか。見た目がほぼ猫だけど、生態も似てたりするのか?」

 ミリアは先ほどから、何事か考え事をしながら、アスハの後ろをついてくる。

「なぁ、ミリア。どこに生息してるかとか知らないか?」

 考え事をしていたミリアは、上の空で答える。

「ん? 勿論知っているが?」

「本当か? じゃあ、そこまで連れてってくれよ!」

 アスハのその言葉に、ミリアは、

「良いのか? 死ぬかも知れないぞ?」

「なんでだよ!」

 探してるのは愛玩動物じゃないのかよ。
 ミリアは、ニヤリと笑うと、

「行けばわかるさ」

 とアスハを先導するように前を歩く。




 先導するミリアの後を追い、街の門を抜け平原を進むと湿原のような場所にたどり着いた。

「なあ、本当にこんなところにいるのか? 街からずいぶん離れた気がするんだけど?」

「当たり前だ。奴は、人里から離れた自然に近い場所を住処にするからな」

 愛玩動物って言うくらいだから、人里に棲息してるのかと思ってたけど、ぬこってこんな場所に住んでるのか。
 ミリアは、鬱蒼としげる草木をかき分けながら、進む。

「だけど、探してるのは迷いぬこだぞ? 普通こんな遠くまでくるか?」

「お前はなにを言っているんだ?」

 ミリアは不思議そうな顔をしながら、草木の間からひらけた水辺を眺める。

「いたぞ」

「えっ? もう見つけたのか?」

 なんだ、結構楽な仕事だったな。と安堵するアスハがミリアの横から水辺を覗く。

「ドラゴンだ」

「ああ、なかなかのサイズだ。私のエクスカリバーの相手に相応わしい」

 ふむ。ところで、迷いぬこは一体どこにいるんだろう。

「私たちが探してたのはドラゴンだろ?」

「ちげぇよ‼︎」

 ミリアが、なにを言っているんだこいつはと言ったような顔でアスハを見る。

「というか、迷いぬこってなんだ? 私はそんなクエスト受けた覚えは無いぞ?」

「いや、聞いてたよな! 俺がクエスト受注する時、隣にいたよな‼︎」

 アスハのその叫びに気づいたのか、ドラゴンが顔を上げる。

『何者だ』

 その声は、頭の中に直接響いてくるようだった。

「こいつ、直接脳内に!」

 知性を持つドラゴンとか絶対やばい奴じゃねえか。逃げよう。
 アスハがそんな事を考えながら回れ右をするのとほぼ同時、ミリアが二本の剣を抜き放ちドラゴンに斬りかかる。

「くらえぇぇぇぇぇぇ‼︎」

「なにしてんだー‼︎!」

 アスハのそんな叫びが森の中に響き渡った。
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