私立白百合女子高校〜百合の花束とアイソトープ〜

初瀬四季[ハツセシキ]

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百合童話

百合妖精と魔男くん

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 私立白百合女子高校の図書室。

 この場所は人があまり訪れない為、少女は嫌なことがあるとよくこの場所で本を読んでいた。
 あまり、多くの人と接するのを好まない少女にとって、図書室の静謐さは好ましいものだった。

 少女は本棚の奥の方に置かれた一冊の童話を見つけると、それを開く。



 おやおや? 草花の影に妖精さんがとまっているよ?

「リズ、好きよ?」

「ダメだよキリ。今日はそういうのはなしって言ったでしょ?」

「リズだって、ドキドキしてるくせに」

 わぁ、これは百合妖精だね! とても百合百合しいね!

「バカ。ーーキリの方がドキドキしてる」

「だって、仕方ないじゃない。ーーリズと二人きりでおでかけなんて、久しぶりなんだもの」

 あれあれ? 百合妖精達を見つめる人影があるよ? 誰だろう?

「はぁはぁ。可愛いなぁ。ボクも一緒に遊びたいなぁ」

 あれは、魔男くんだ! どうやら、魔男くんも百合妖精達と遊びたいみたい! でもダメだよ魔男くん! 百合に男は必要ないんだ!

「ねぇ。ボクも仲間に入れてよ!」

 あー⁉︎ ダメって言ったのに! これは大変なことになっちゃうよ? 

「は? 誰あなた? 行きましょうリズ。変な人が話しかけてきたわ」

「ね。行こっかキリ。気持ち悪いね」
 
 ほらね! 百合妖精達も怒って何処かへ行っちゃうよ?

「ま、待ってよ! ボクはただ君達と仲良くしたいだけなんだ!」

 あ! 魔男くんが百合妖精の手を掴んだよ! そんなに強く握ったら⁉︎

 ボキッ

「ああぁああぁあ⁉︎⁉︎」

「リズぅー⁉︎‼︎ 手が! リズの腕が⁉︎」

 あーあ。魔男くんのせいでリズちゃんの腕がありえない方向に曲がっちゃった。

「あ、あ、ボ、ボク。そんなつもりじゃ⁉︎」

「なんで! どうしてこんな酷いことするの! この鬼畜! あんたなんて大っ嫌い!」

「痛いよ、痛いよ。ーーキリ助けてキリ」

 あれ? リズちゃんの泣き声に、他の妖精たちが集まってきたよ? 大変! 魔男くん逃げてー!

「魔男死すべし」

「魔男死すべし」

「魔男死すべし」

 妖精たちが魔男くんを掴んで持ち上げたよ。あれあれ? どうやら洞窟に連れていくみたい。あっ魔男くんが洞窟に入れられちゃった。
 今度は妖精達が大きなお岩を洞窟の入り口に置いちゃった。どうしよう! これじゃ魔男くんが出られないよ!

「出して! ここから出して! 暗いよ! 怖いよ! 助けて!」

 魔男くんが叫びます。でも妖精達は聞く耳を持ちません。

「大丈夫? リズ? 今治してあげるからね?」

 キリちゃんが魔法を唱えるとあら不思議! リズちゃんの腕の怪我が一瞬で治っちゃった。これでもう大丈夫だねリズちゃん!

「大丈夫じゃない。キリがキスしてくれないともうダメ」

「ーーバカ」

 キリちゃんが頬を染めながらリズちゃんの額にキスしたよ! 尊いね! 尊いね!

 あれあれ、お空の天気がおかしいよ? 雲の隙間から、誰かがゆっくり降りてくる!

「妖精たちよ」

 あ! あれは神様だ! 神様が妖精たちに話しかけているよ! 一体なんのようだろう?

「仲間外れは良くない」

 神様がなにか言い始めたよ! でも、何の話だろう? 

「魔男くんも仲間に入れてあげなさい」

 神様が戯言を言っているよ! もしかして邪神かな?

「いじめは良くない」

 神様はいつも理不尽だよ! 虐められたのは妖精たちなのに!

「だけど、あの人いつも暴力的だし、私達のこと変な目で見てくる・・・・・・」

「仲間外れは良くない」

 神様は聞く耳を持たないよ! 全ては神様のご意志だよ!
 妖精たちは渋々岩を退かします。
 すると、魔男くんが洞窟から出てきたよ。

「へ、へへっごめんねごめんねー? でも、これでみんなで遊べるね?」

 魔男くんがニッコリ笑ってるよ! 不気味だね! 嫌な予感しかしないよ!

「さあ、仲直りの握手を」

 神様は空気を読まないよ! どんなに空気が冷え切っていてもお構いなしだよ!
 魔男くんが下卑た笑顔でリズちゃんの手を握ったよ! キリちゃんがとても嫌そうな顔を浮かべているね!

 それからしばらく時間が経ったよ!

 酒池肉林になったよ!

 台無しだね!

 百合妖精は絶滅しちゃったよ! 

 百合妖精はもう戻ってこないよ!

 誰のせいかな?



 少女は、読み終えた本を閉じる。

「サトー?」

 少女の事を呼ぶ、よく知った声に顔を上げる。

「あ、いた。そろそろ帰ろうサト」

 その声は、彼女にとっての妖精の魔法だった。

「うん」

 サトと呼ばれた少女は、本を本棚に戻すと、ボソリと呟く。

「ねぇ、レン。神様っていると思う?」

 レンと呼ばれた少女は、その問いに対して小首を傾げ、考えるような素振りを見せる。

「さぁ。ーーでも、いたらいいんじゃない?」

(レンの馬鹿)

「なんでよ!」

 サトは、頬を膨らませるレンを見て耐え切れないと言った様子で相貌を崩す。

(ずっと一緒にいようね)
 
「なっ⁉︎ーー当たり前でしょ。ーーバカ」
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