世界終わろう委員会

初瀬四季[ハツセシキ]

文字の大きさ
14 / 85
世界終わろう委員会

確かなもの 

しおりを挟む
 長い沈黙が夕暮れの部屋に落ちる。
 
 なにも、言えなかった。

「先月、帰り道で通り魔に殺されたって。あなたの方が詳しいはずでしょ? 紀美丹君」

 そう、彼女は僕と買い物に行った日に
帰り道で別れた後、通り魔に殺された。
 そして、その犯人はいまだに捕まっていない。

「・・・・・・ねぇ、大丈夫? 紀美丹君。あなた、尾張さんとはとても仲が良かったから、ショックなのはわかるけど・・・・・・でもーーーーーーーーーー」
 
 椎堂さんは、少し躊躇しながらそれでも言葉は止めない。

 ーーーーーーーーーー死んだ人はもう、戻っては来ないのよ?

 椎堂さんの言葉が僕を揺さぶる。

「たしかに、彼女は殺されました。・・・・・・でも! いるんです! そこに!」

「・・・・・・どこに?」

 椎堂さんの目には本当に尾張さんの姿は写っていないようだった。

「いるんですよ! ここに! 見てください! ちゃんと、存在してる! 尾張さんはーーーーーーーーーー」

 ーーーーーーーーーーいるんです。

 そう続ける僕を見つめる、椎堂さんの表情は、次第に険しくなっていく。

「紀美丹君。あなた、ちゃんとカウンセリングは受けてる? あの事件の後、学校側でも対応してくれてるはずだけど」

 その言葉に、僕は唇を引き結ぶ。

 僕がおかしいのだろうか。いや、たしかに、実際におかしいのだろう。死んだ人が見えるだなんて。

 最初に彼女を見たときは、恐怖した。  
 彼女が僕との思い出を覚えていなかったことは悲しかった。
 だけど、彼女と話すのはそれでも楽しかった。
  
 それらすべて、ただの妄想だったとでもいうのだろうか。

 僕は、確かなものを求めて手を伸ばす。その手は、俯く少女の背中に触れる。

「ひゃっ!」

 可愛らしい悲鳴が聞こえた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

12年目の恋物語

真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。 だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。 すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。 2人が結ばれるまでの物語。 第一部「12年目の恋物語」完結 第二部「13年目のやさしい願い」完結 第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中 ※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。

訳あり冷徹社長はただの優男でした

あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた いや、待て 育児放棄にも程があるでしょう 音信不通の姉 泣き出す子供 父親は誰だよ 怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳) これはもう、人生詰んだと思った ********** この作品は他のサイトにも掲載しています

君が見た春をもう一度

sika
恋愛
高校時代、ひとつの誤解で離れた二人。 十年後、東京で再会した彼女は、もう誰かの「恋人」になっていた。 置き去りにした想い、やり直せない時間、そしてそれでも止まらない心。 恋と人生のすれ違いを描く、切なくも温かい再会ラブストーリー。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

処理中です...