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世界終わろう委員会
独白:私の世界の終わり1
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世界はいつだって優しくない。
昔からそうだった。仲良くなれたと思っていた娘は、私の事を貶めるために近づいてきただけだった。
友達になれたと思っていた男の子は、私に恋愛感情を抱いていて、こちらにその気がないことがわかったら、酷く怒って離れて行った。
だから、彼のような人は珍しい。私の事を好きだって言いながら、私にその気がないって伝えても、態度を変えない。
そんな彼にいつのまにか惹かれていたのかもしれない。
そのままの自分で向き合っても、壊れたりしない関係。そんなものを彼となら築いていけるかもしれない。
勝手にそう思っていた。
そう思っていたのに。
だから、私はこんな世界は終わって欲しいとそう願うのだ。
彼と別れた後、寄り道をして、すっかり暗くなった家までの帰路。
朝に見たテレビの天気予報の予想通り、嵐が近づいてきていた。
「紀美丹君があんな話をするから」
右手に持った紙袋の温かさを感じながら、街頭に照らされた淡い闇の中を歩く。
どうにも一度食べたくなってしまうと抗えない魔力のようなものがファストフードにはある。
健康に良くないからと、小さな頃はあまり食べさせてはもらえなかった。
その反動からか、自分で買い物を出来るようになってからは、好きなように買い漁るようになった。
だから、私は悪くない。悪いのはきっとーー誰かしらね。紀美丹君かしら?
そんな事を考えながら歩いていると、頬に雨粒が当たった。
「降ってきちゃった」
雨が降り始めるより前に帰る予定だったため、傘を持ってきていなかった。
生憎、家まではまだ結構な距離がある。
一度、コンビニに寄ってビニール傘を買おう。そう考えて、近くのコンビニへ入る。
コンビニの中には、立ち読みをしている少年と、数人の店員が居るのみだった。
入り口近くに置いてある商品を持ってレジへと向かう。
「これお願いします。それと、コーヒーを一つ。レギュラーで」
女性の店員に商品を手渡し、スマホの決済機能で支払う。
軽く会釈をして、コンビニを出る。
暗い夜道を歩く。雨が少し強くなってきた。
冷たい雨が傘に打ちつける。
澄んだ空気の中で鼻をくすぐる一杯のコーヒーの香り。
そんな何気ない一瞬が冷えた身体を少しだけ暖めてくれる。
晴れていれば、活気に溢れているような広場も生憎の天気で、人もまばらだった。
もうすぐ、家に着く。
なんとか嵐が本格的になる前に辿り着けそうだ。
そう思いホッと息を吐く。
その時、小さな鳴き声が聞こえた。
それを聞き逃すほど、私の耳はまだ衰えてはいなかった。
それは子猫の鳴き声だった。
暗い路地裏を覗くと、ダンボールに入れられた小さな子猫が身を乗り出してこちらを見ていた。
「猫!」
ついついテンションが上がってそちらへ向かって歩き出してしまう。
しかたない。これは本当にしかたない事なのだ。捨て猫をこんな嵐の中放置してしまえば、きっと死んでしまう。
早急に保護しないと。そんな、小学生の頃から何度も繰り返しては、母に叱られている悪癖をこんな日にまで発揮しなくとも良いのに。
理性では、理解しているが、しかし感情がどうにもブレーキを甘くしている。
それはきっと楽しかった今日一日の思い出がブレーキの効き目を緩くしてしまっているのだろう。
だから、これも彼のせい。
私がこれから母に怒られるだろう事も、この子猫がそれで一晩の宿を得られるだろう事も。
家に帰ったら彼にメッセージを送ろう。
今日は楽しかったって。
そんな事を考えながら飲み干したコーヒーのカップを紙袋に入れる。
そして、紙袋を小脇に抱え、首と肩で傘を挟みながら、猫を抱き上げようと右手を伸ばす。
その時、背中に衝撃が走った。
「っあ。・・・・・・えっ?」
背中に受けた衝撃はその後、鈍く深い痛みになって全身を襲った。
紙袋を取り落とし、膝から崩れ落ちる。急激に身体の熱が失われていくのがわかった。
なに、これ?
地面には赤い血だまりが広がっていく。
背後を振り向く。そこにいたのは、背後からの逆光で姿はよくわからないが、背格好から、男性のように思えた。
その男は、少女を押し倒すと、その手に持った厚手のナイフを何度も振り下ろす。
その光景を一匹の子猫だけが見ていた。
昔からそうだった。仲良くなれたと思っていた娘は、私の事を貶めるために近づいてきただけだった。
友達になれたと思っていた男の子は、私に恋愛感情を抱いていて、こちらにその気がないことがわかったら、酷く怒って離れて行った。
だから、彼のような人は珍しい。私の事を好きだって言いながら、私にその気がないって伝えても、態度を変えない。
そんな彼にいつのまにか惹かれていたのかもしれない。
そのままの自分で向き合っても、壊れたりしない関係。そんなものを彼となら築いていけるかもしれない。
勝手にそう思っていた。
そう思っていたのに。
だから、私はこんな世界は終わって欲しいとそう願うのだ。
彼と別れた後、寄り道をして、すっかり暗くなった家までの帰路。
朝に見たテレビの天気予報の予想通り、嵐が近づいてきていた。
「紀美丹君があんな話をするから」
右手に持った紙袋の温かさを感じながら、街頭に照らされた淡い闇の中を歩く。
どうにも一度食べたくなってしまうと抗えない魔力のようなものがファストフードにはある。
健康に良くないからと、小さな頃はあまり食べさせてはもらえなかった。
その反動からか、自分で買い物を出来るようになってからは、好きなように買い漁るようになった。
だから、私は悪くない。悪いのはきっとーー誰かしらね。紀美丹君かしら?
そんな事を考えながら歩いていると、頬に雨粒が当たった。
「降ってきちゃった」
雨が降り始めるより前に帰る予定だったため、傘を持ってきていなかった。
生憎、家まではまだ結構な距離がある。
一度、コンビニに寄ってビニール傘を買おう。そう考えて、近くのコンビニへ入る。
コンビニの中には、立ち読みをしている少年と、数人の店員が居るのみだった。
入り口近くに置いてある商品を持ってレジへと向かう。
「これお願いします。それと、コーヒーを一つ。レギュラーで」
女性の店員に商品を手渡し、スマホの決済機能で支払う。
軽く会釈をして、コンビニを出る。
暗い夜道を歩く。雨が少し強くなってきた。
冷たい雨が傘に打ちつける。
澄んだ空気の中で鼻をくすぐる一杯のコーヒーの香り。
そんな何気ない一瞬が冷えた身体を少しだけ暖めてくれる。
晴れていれば、活気に溢れているような広場も生憎の天気で、人もまばらだった。
もうすぐ、家に着く。
なんとか嵐が本格的になる前に辿り着けそうだ。
そう思いホッと息を吐く。
その時、小さな鳴き声が聞こえた。
それを聞き逃すほど、私の耳はまだ衰えてはいなかった。
それは子猫の鳴き声だった。
暗い路地裏を覗くと、ダンボールに入れられた小さな子猫が身を乗り出してこちらを見ていた。
「猫!」
ついついテンションが上がってそちらへ向かって歩き出してしまう。
しかたない。これは本当にしかたない事なのだ。捨て猫をこんな嵐の中放置してしまえば、きっと死んでしまう。
早急に保護しないと。そんな、小学生の頃から何度も繰り返しては、母に叱られている悪癖をこんな日にまで発揮しなくとも良いのに。
理性では、理解しているが、しかし感情がどうにもブレーキを甘くしている。
それはきっと楽しかった今日一日の思い出がブレーキの効き目を緩くしてしまっているのだろう。
だから、これも彼のせい。
私がこれから母に怒られるだろう事も、この子猫がそれで一晩の宿を得られるだろう事も。
家に帰ったら彼にメッセージを送ろう。
今日は楽しかったって。
そんな事を考えながら飲み干したコーヒーのカップを紙袋に入れる。
そして、紙袋を小脇に抱え、首と肩で傘を挟みながら、猫を抱き上げようと右手を伸ばす。
その時、背中に衝撃が走った。
「っあ。・・・・・・えっ?」
背中に受けた衝撃はその後、鈍く深い痛みになって全身を襲った。
紙袋を取り落とし、膝から崩れ落ちる。急激に身体の熱が失われていくのがわかった。
なに、これ?
地面には赤い血だまりが広がっていく。
背後を振り向く。そこにいたのは、背後からの逆光で姿はよくわからないが、背格好から、男性のように思えた。
その男は、少女を押し倒すと、その手に持った厚手のナイフを何度も振り下ろす。
その光景を一匹の子猫だけが見ていた。
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