世界終わろう委員会

初瀬四季[ハツセシキ]

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世界終わろう委員会

俺の方が 

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 その男は獲物を追い詰めた獣のように舌舐めずりをすると、ニヤニヤと笑いながら勿体つけるように言う。

「よお、やっと気づいたのかよ。紀美丹ぃ君?」

「水、城⁉︎」

 それは、見知ったクラスメイトの顔だった。

「なん、で?」

「なんで? なんで? はぁ?」

 水城は馬鹿にしたようにその言葉を繰り返す。

「なんでじゃねぇだろうが⁉︎ てめぇが悪いんじゃねぇか‼︎ 全部! 全部! てめぇが‼︎」
 
 そして怒気を含んだ口調で僕を糾弾する。

 水城は、ナイフを握りしめると、僕の顔に向けて振り下ろす。
 それを左の掌で受け止める。指の間が切れて、そこから血が溢れ出す。

「っつ!」

 水城は、ナイフにさらに力を込めて、眼前の獲物を切り裂こうとする。

「お前が。お前が。お前が! お前が‼︎ お前さえいなければ‼︎!」

 その爆発した感情にあてられて、僕はたまらず叫ぶ。

「何の話だよ‼︎」

「決まってるだろうが‼︎ 尾張さんの事だ‼︎」

 尾張さん? 何でここで彼女の名前が?

「お前なんかより俺の方が‼︎ 俺の方が尾張さんの事が好きだったのに‼︎ 何でお前なんかが‼︎ 彼女の隣に‼︎」

 その言葉には、憎悪と嫉妬。そして、隠しきれない悲しみが見てとれた。

「ふざけんな! ふざけんな! ふざけんな! お前なんかに‼︎ お前なんかがいたから‼︎ 尾張さんは死んだんだ‼︎」

 その言葉にたまらず反論する。

「ふざけてんのはどっちだ⁉︎ あんたに尾張さんのなにがわかる‼︎ 尾張さんと僕がどんな気持ちで‼︎」

「うるせぇ‼︎ お前の話になんか興味ねぇんだよ‼︎ お前がいなければ尾張さんだって俺に振り向いてくれたはずなんだ‼︎ 俺が尾張さんの隣にいられたんだ‼︎‼︎ お前なんか‼︎ お前なんかが生まれてくるべきじゃなかったんだ‼︎」

 だから、死ね‼︎ そう叫んで、水城はナイフにさらに力を込める。ナイフの切っ先が頬に触れ、血が流れる。

「あんたの、勝手な都合でーー殺されて、たまるか!」

 痛みに顔をしかめながら、左手のナイフを押し戻す。

「うぜぇんだよ‼︎ お前もあいつみたいにさっさと死ねよ‼︎ 俺の思い通りにならねぇやつなんて俺の世界にはいらねぇんだよ‼︎」

 あいつ?

「ーーなにが、尾張さんが好きだよ! さっきから、好き勝手なこと言ってくれてますけど、あんたのそれは、ただの所有欲じゃないですか。ーー気持ち悪いんですよ。童貞野郎!」

 その言葉に水城は、怒気を強めて言い放つ。

「殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す! あの女と同じ事言いやがって! お前も絶対に殺す‼︎」

 水城の先程からの発言には、聞き逃す事のできない違和感があった。

「ーーさっきから『あいつみたいに』とか『お前も』ってどういうことですか?」

 自然と声のトーンは低くなっていた。

 先程までは、僕が尾張さんの死を招いたのだ考えて、水城が僕に復讐をしようとしているのだとそう思っていた。

 しかし、これが水城の初めての犯行ではないのだとしたら。ーー僕以外もその手にかけているのだとしたら。

 想像してしまった内容を確かめるように、質問を投げかける。

「ーーあんた、他にも誰か殺してるんですか?」

 ナイフを持つ手にピクリと反応があった。

「察し悪いなぁ。お前」

 先程までの怒りの表情から、ニヤニヤと気持ち悪い表情へ変化していく水城の顔を見る事で、僕の疑念は確信に変わっていく。

「尾張さんを殺したのって」

 その時の感情を僕は生涯忘れることはないだろう。

「俺だよ」

 感情が弾けた。


 



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