世界終わろう委員会

初瀬四季[ハツセシキ]

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世界終わろう委員会

選択肢は

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 結局のところ、人の死を予見することができない限り、僕達には選択肢がないに等しい。

 他人を殺めるか、他人を見殺しにするか。

 どちらにしろ人の命を犠牲にしない限り、僕達が共にいることは出来ない。

 だけど、人を直接的に殺めなくとも、間接的に誰かを蹴落とすなんてことはきっと誰もがやっていることなのだろう。
 他人を利用し、貶め自分の糧にする。
 その結果、蹴落とされた他人がどんな目に遭おうとも自己責任。
 それが社会のルールだと、社畜の父親が酒に呑まれながら愚痴っぽく語っていた。

「でも、そんなのは加害者の勝手な言い分よね」

「まぁ、そうなんですけどね。でも、そうやって成り上がった人間が社会をつくるから、結局またその連鎖が続くんだそうです」

 だからって。と尾張さんが続ける。

「私達まで、その社会のルールに則る必要性はないわ」

「尾張さんは、もう社会の一員ではないですしね」

 非難めいた視線が向けられる。誤魔化そうと、話題を逸らす。

「そういえば、尾張さんってある意味二回死んだようなものじゃないですか?」

「紀美丹君は私と戦争がしたいのかしら?」

 馬鹿な。話題は逸らしたはず。よく考えると全く逸れてなかったため、慌てて弁明する。

「いえ、違うんです! ちょっと聞いてみたかっただけなんです!」
 
 尾張さんは、どこから取り出したのか、猫のキーホルダーのリングをクルクル回している。

 それで一体何をするつもりですか?

「聞きたいって何を?」

 その表情は、返答次第では貴方の世界を終わらせるわ。と言外に語っていた。
 ゴクリと唾を飲み込むと、尾張さんに質問する。

「いまどんな気持ち?」

 尾張さんはニッコリと満面の笑みを浮かべる。ただ、目だけが笑っていなかった。

「ここで煽ってくるなんて、紀美丹君もなかなか図太い神経してるわね? 私はもう少し細くて神経過敏の方がいいと思うわよ?」

「これでもかなり神経質な方だと自負しております。なので、そんなにキーホルダーをブンブンブンブンーーちょっ⁉︎ 近い⁉︎ 僕、今動けないんですけど⁉︎ やめっ⁉︎ あっ⁉︎」

「水滴を額に一滴ずつ、等間隔で垂らし続けるっていう拷問が、昔あったらしいわ」

 それと今のこの状況に何の関係が?
 猫のキーホルダーが僕の眉間すれすれを何度も何度も通過する。

「あの拷問の肝はね、人間の眉間っていう神経が集中した場所に刺激を与え続けることで精神が疲弊して、やがて精神崩壊するって所にあるらしいの」

「・・・・・・へぇ、怖い、ですね」

 ヒュンヒュンヒュンヒュン眉間の間を猫が通過する。

「私ね、これでもできる気がするのよ」
 
「待って⁉︎ やる気なんですか⁉︎ 僕を精神崩壊させるつもりなんですか⁉︎」
 
 尾張さんはニッコリと笑いながら、キーホルダーを回し続ける。

 ヒュンヒュンヒュンヒュン。ーーヒュンヒュンヒュンヒュン。ーー病室では、少年の狂ったような静止を求める声が繰り返された。





 
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