世界終わろう委員会

初瀬四季[ハツセシキ]

文字の大きさ
67 / 85
世界終わろう委員会

少女の感慨

しおりを挟む
 その後、若いナースが病室に入ってくることで、拷問は中断された。

 精神崩壊まではいかなくとも、神経虚弱に陥った少年に少女は語りかける。

「自分の人生が素晴らしかったとか、最低だったとか、そんな事一言で言い表せるわけないじゃない」

 少女の言葉に少年は答えない。

「昔から何でも出来て、だけどむしろそのせいで居場所もなかったから、学校は行く意味があまり分からなかったし」

 少女は靴を脱いで、椅子の上で膝を抱える。

「母は優しかったけど、父は忙しい人だったから、あんまり一緒に遊んだ記憶もない」

 少年は黙って話を聞く。

「高校生なったら、友達って思える人が出来て、これから楽しくなるのかなって時にクラスメイトに殺されて幽霊になるって、どんな罰ゲームよ」

 少女は、猫のキーホルダーを弄りながら続ける。

「でも、幽霊になってからいろんな人にあって、生きてた時には体験できなかった事があって、そして、貴方に気持ちを伝えられた」

 だから、きっと。と、少女は一度言葉を区切ると、抱えていた足を下ろし立ち上がりながら、少年に向けて言う。

「そんなに悪くない人生だったんじゃないかしら?」

 微笑む彼女のその顔は夕暮れの光で赤く染まり、どこか照れているようにも見えた。

「まぁ、幽霊としての霊生? はまだ始まったばかりですけどね」

 神経虚弱から立ち直ったのか、少年が茶々を入れはじめる。

「ええ、そうね。第二の霊生が始まった途端に浮気現場に遭遇した、私の今の気持ちは知りたいかしら?」

「いや、あれは浮気とかじゃないです! 不可抗力とかいうやつです‼︎」

 少女はまた、キーホルダーを回しはじめる。

「私ね、人は人生の中でたった一人を愛し続ける事が幸せな事だと思うの」

「それは、どうなんですかね? 個々人によって考え方に差があるんじゃないですか?」

 少年はキーホルダーを横目に見ながらなんとか逃れようと、ベッドの縁を掴む。しかし、体に力が入らない。

「えぇ、確かに多様性を認めることは大事なことよね。それが浮気した相手であろうと」

「いや、浮気じゃないですから! あれは、椎堂さんがいきなり頭を抱えてきたんです!」

 少年の必死の訴えを聞く二人の少女。

「えっ⁉︎ 私が悪いの?」

「椎堂さん何でいるんですか⁉︎ さっき帰ったはずでは⁉︎」

 いつのまにか、ドアの前に立っていた少女は愕然とした顔をする。
 しばらくしてハッと我にかえると、

「ちょっと忘れ物して」

 と、学生カバンを掴み、そそくさとその場を離れようとする。
 その時、スマホがメッセージの着信を告げる。
 ビクッと震えた少女は、恐る恐るスマホを取り出し画面を見る。

『待ちなさい』

「・・・・・・はい」

 少女は、ドアを閉めると渋々といった様子で、そこにとどまるのだった。

 少女による取り調べは結局、面会時間ギリギリまで行われた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

12年目の恋物語

真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。 だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。 すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。 2人が結ばれるまでの物語。 第一部「12年目の恋物語」完結 第二部「13年目のやさしい願い」完結 第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中 ※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。

訳あり冷徹社長はただの優男でした

あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた いや、待て 育児放棄にも程があるでしょう 音信不通の姉 泣き出す子供 父親は誰だよ 怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳) これはもう、人生詰んだと思った ********** この作品は他のサイトにも掲載しています

君が見た春をもう一度

sika
恋愛
高校時代、ひとつの誤解で離れた二人。 十年後、東京で再会した彼女は、もう誰かの「恋人」になっていた。 置き去りにした想い、やり直せない時間、そしてそれでも止まらない心。 恋と人生のすれ違いを描く、切なくも温かい再会ラブストーリー。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

【完結】シュゼットのはなし

ここ
恋愛
子猫(獣人)のシュゼットは王子を守るため、かわりに竜の呪いを受けた。 顔に大きな傷ができてしまう。 当然責任をとって妃のひとりになるはずだったのだが‥。

処理中です...