76 / 85
世界の終わりを君に捧ぐ
世界の終わりを君に捧ぐ 序 2
しおりを挟む
入国審査を終えると外は既に暗くなっていた。
日本で事前に紹介してもらった現地ガイドを探す。
それらしい人影が見当たらない。どうしたものかと考えていると、背後から声をかけられる。
「紀美丹恋さんですか?」
そこにいたのは、ヒジャブと呼ばれるスカーフのような布で頭を覆った小麦色の肌をした十四歳ぐらいの少女だった。
「えっと、違いましたか? 失礼しました」
「いや、あってます。僕が紀美丹恋です。あの、あなたが現地ガイドの・・・・・・?」
少女は、うなずくと荷物お持ちしますとトランクを手に取る。
「アルマ・ハーンです。よろしくお願いします」
こんな小さな女の子がガイド?
まぁ、日本でも小学生が英語で観光ガイドをボランティアでやってるってニュースになったりするし、ありえなくもないのかな。
「いや、おかしいでしょう」
尾張さんが、あからさまに不審そうな顔を少女に向ける。
「いや、でも家庭の事情で生活費を稼ぐ子供もいるらしいですし」
「あの、どうかしましたか?」
アルマと名乗った少女は、不安そうな顔で青年を伺う。
「なにか、揉めているようでしたけど、もしかして何か失礼をはたらいてしまったでしょうか?」
「ああ、いや、なんでもないです。それにしても、アルマさん日本語お上手ですね」
彼女が喋る日本語には、イントネーションにも違和感がない。まるで、母国語のように言語を使いこなしている。
「ありがとうございます。わたしの母が日本人ですので、日常的に使ってますから」
通りで、違和感がないはずである。
「それではまず、荷物をホテルへ預けにいきましょう」
空港を出ると、すぐ目の前に自動車が停車しており、運転手が合図するように片手をあげる。
少女は手慣れた様子で荷物を自動車のトランクに積み込むと助手席に乗り込み、運転手に何事か告げる。
遅れながら、青年と少女も自動車に乗り込み、ホテルへ向かった。
ホテルに荷物を預けたあと、食事をするためにそのまま首都へと向かう。
「食事のリクエストなどはありますか?」
「そうですね。ーーこの国の伝統料理のようなものがあったら、それが食べてみたいです」
少女は、少し考える素振りを見せた後、運転手に指示を出す。
着いたのは、一見、民家のような外観の店だった。
「これはーー民家ですか?」
「民家ね」
「民族料理のお店です」
僕たちの素直な感想はすっぱりと切り捨てられた。
店内に入ると、内装は外観からは想像できない程、しっかりとした造りをしていた。
「オススメは、ケバーブです」
日本でも割とポピュラーな料理だが、本場の味を体験するのもいいかもしれない。
そう考えて、とりあえずケバーブといくつかの野菜料理。それと飲み物を注文してもらう。
運ばれてきた料理に手をつける。
「これは、美味しそうですね!」
香辛料の食欲を刺激する良い香りが鼻をくすぐり、お腹が鳴る。
肉にかぶりつく。
スパイシーな香辛料の香りと、ジュワッと溢れ出す肉汁が口の中に広がる。
濃い目に味付けされた肉の脂と塩味を、現地で生産されているというビールで流し込む。
喉を通る炭酸と爽やかな苦味に更に食がすすむ。
「あの、尾張さんはお食べにならないのですか?」
野菜料理に手をつけていたアルマさんがそう質問する。
「えぇ、宗教上の理由で私は絶食中だから」
尾張さんが適当なことを言って誤魔化しながら小声で、
「薄々そうじゃないかと思っていたけどーーこの娘、私のこと見えてたのね」
と、僕に耳打ちする。
「そうですね。やっぱりこの国、少し危なそうです」
小声で尾張さんに返事をしながら、ケバーブを食べるアルマさんを観察する。
一般人の少女が幽霊である尾張さんの姿を見ることができる。その事実が意味するこの国の実態は、なかなかの衝撃だった。
視線に気づいたのか、アルマさんは、
「どうかなさいましたか?」
と、不思議そうな顔でこちらを伺う。それに、なんでもないですと答えつつ、料理を食べ進める。
料理を食べ終え、会計を終えたあと、ホテルへ戻ることにする。
先行きの不安を払拭しようと車内から外の景色を眺める。
有名なフランチャイズのフライドチキン店が車内から見えた時、尾張さんのテンションが上がっているのが印象的だった。
日本で事前に紹介してもらった現地ガイドを探す。
それらしい人影が見当たらない。どうしたものかと考えていると、背後から声をかけられる。
「紀美丹恋さんですか?」
そこにいたのは、ヒジャブと呼ばれるスカーフのような布で頭を覆った小麦色の肌をした十四歳ぐらいの少女だった。
「えっと、違いましたか? 失礼しました」
「いや、あってます。僕が紀美丹恋です。あの、あなたが現地ガイドの・・・・・・?」
少女は、うなずくと荷物お持ちしますとトランクを手に取る。
「アルマ・ハーンです。よろしくお願いします」
こんな小さな女の子がガイド?
まぁ、日本でも小学生が英語で観光ガイドをボランティアでやってるってニュースになったりするし、ありえなくもないのかな。
「いや、おかしいでしょう」
尾張さんが、あからさまに不審そうな顔を少女に向ける。
「いや、でも家庭の事情で生活費を稼ぐ子供もいるらしいですし」
「あの、どうかしましたか?」
アルマと名乗った少女は、不安そうな顔で青年を伺う。
「なにか、揉めているようでしたけど、もしかして何か失礼をはたらいてしまったでしょうか?」
「ああ、いや、なんでもないです。それにしても、アルマさん日本語お上手ですね」
彼女が喋る日本語には、イントネーションにも違和感がない。まるで、母国語のように言語を使いこなしている。
「ありがとうございます。わたしの母が日本人ですので、日常的に使ってますから」
通りで、違和感がないはずである。
「それではまず、荷物をホテルへ預けにいきましょう」
空港を出ると、すぐ目の前に自動車が停車しており、運転手が合図するように片手をあげる。
少女は手慣れた様子で荷物を自動車のトランクに積み込むと助手席に乗り込み、運転手に何事か告げる。
遅れながら、青年と少女も自動車に乗り込み、ホテルへ向かった。
ホテルに荷物を預けたあと、食事をするためにそのまま首都へと向かう。
「食事のリクエストなどはありますか?」
「そうですね。ーーこの国の伝統料理のようなものがあったら、それが食べてみたいです」
少女は、少し考える素振りを見せた後、運転手に指示を出す。
着いたのは、一見、民家のような外観の店だった。
「これはーー民家ですか?」
「民家ね」
「民族料理のお店です」
僕たちの素直な感想はすっぱりと切り捨てられた。
店内に入ると、内装は外観からは想像できない程、しっかりとした造りをしていた。
「オススメは、ケバーブです」
日本でも割とポピュラーな料理だが、本場の味を体験するのもいいかもしれない。
そう考えて、とりあえずケバーブといくつかの野菜料理。それと飲み物を注文してもらう。
運ばれてきた料理に手をつける。
「これは、美味しそうですね!」
香辛料の食欲を刺激する良い香りが鼻をくすぐり、お腹が鳴る。
肉にかぶりつく。
スパイシーな香辛料の香りと、ジュワッと溢れ出す肉汁が口の中に広がる。
濃い目に味付けされた肉の脂と塩味を、現地で生産されているというビールで流し込む。
喉を通る炭酸と爽やかな苦味に更に食がすすむ。
「あの、尾張さんはお食べにならないのですか?」
野菜料理に手をつけていたアルマさんがそう質問する。
「えぇ、宗教上の理由で私は絶食中だから」
尾張さんが適当なことを言って誤魔化しながら小声で、
「薄々そうじゃないかと思っていたけどーーこの娘、私のこと見えてたのね」
と、僕に耳打ちする。
「そうですね。やっぱりこの国、少し危なそうです」
小声で尾張さんに返事をしながら、ケバーブを食べるアルマさんを観察する。
一般人の少女が幽霊である尾張さんの姿を見ることができる。その事実が意味するこの国の実態は、なかなかの衝撃だった。
視線に気づいたのか、アルマさんは、
「どうかなさいましたか?」
と、不思議そうな顔でこちらを伺う。それに、なんでもないですと答えつつ、料理を食べ進める。
料理を食べ終え、会計を終えたあと、ホテルへ戻ることにする。
先行きの不安を払拭しようと車内から外の景色を眺める。
有名なフランチャイズのフライドチキン店が車内から見えた時、尾張さんのテンションが上がっているのが印象的だった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました【完結】
日下奈緒
恋愛
10年付き合った恋人と別れ、恋に臆病になっていた30歳の千尋。そんな彼女に、取引先で出会った御曹司・神楽木律が突然のプロポーズ。「交際0日で結婚しよう」なんて冗談でしょ?──戸惑いながら始まった新婚生活。冷めた仮面夫婦のはずが、律の一途な想いに千尋の心は少しずつほどけていく。
訳あり冷徹社長はただの優男でした
あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた
いや、待て
育児放棄にも程があるでしょう
音信不通の姉
泣き出す子供
父親は誰だよ
怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳)
これはもう、人生詰んだと思った
**********
この作品は他のサイトにも掲載しています
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる