世界終わろう委員会

初瀬四季[ハツセシキ]

文字の大きさ
77 / 85
世界の終わりを君に捧ぐ

世界の終わりを君に捧ぐ 序 3

しおりを挟む
 翌日の早朝、ホテルの周辺の景色と街の人々の写真を撮影するために、尾張さんと二人で散策する。
 アルマさんとの約束の時間までの短い間だが、この国の雰囲気を見ておきたかった。

「僕たちなんか目立ってません?」

「紀美丹君が高そうなカメラ持ってるから、狙われてるんじゃない?」

 尾張さんが、適当に返事をしながら、市場で売られている、日本では見かけないような野菜を物色する。

「いや、どちらかというと、尾張さんが見られているような・・・・・・」

「私を見ることができる人がそうそういるわけ・・・・・・」

 お店の人が、現地の言葉で話しかけてくる。
 尾張さんは、いつの間に覚えたのか、現地の言葉が聞き取れるようで、簡単な受け答えをして、その場を離れる。

「見えてるわね」

「見えてますね」

 尾張さんの現在の服装は、いつもの学生服であるが、どうやらここでは、悪目立ちするようだった。

「尾張さん」

「ーーわかってるわよ」

 そういうと、尾張さんは民族衣装を扱っている店舗を目指して歩いていく。

 しばらくすると、大きな布を纏ったような現地の民族衣装で店から出てきた。

「そこまでする必要ありますかね?」

「念には念を入れた方がいいかと思ったのだけど」

 そんな事を言っているが、実際は着たかっただけだろうなぁ。と考えはしたが、言えばめんどくさそうなので、

「似合ってますね」

 とだけ感想を言うに留める。尾張さんは、

「あら、ありがとう」

 とだけ言うと、その場でくるりと回って礼をする。
 ヒラヒラとした布がフワリと広がり、白い素肌が一瞬見える。

 不覚にも、ドキッとしながら、

「そろそろ戻りましょうか。アルマさんがくる時間ですし」

 と誤魔化すように言う。
 尾張さんは、上機嫌で僕の隣を歩きながら、時折民族衣装の布を僕の左腕にぶつけてきた。



 ホテルに着いた時、既にアルマさんはそこに来ていた。

「すいません。お待たせしてしまいましたか?」

「いえ、今来たところです。それに、約束の時間にはまだ早いですから」

 アルマさんは、簡単な挨拶の後、本題に入る。

「ところで、今日は戦闘地域の撮影がしたいということでしたが。ーー本当に行くんですか? 命の保証はできませんよ?」

「はい。お願いします」

 わかりました。と言うと、アルマさんは何やら紙とペンを懐から取り出す。

「では、こちらにサインをお願いします」

「ーー誓約書ですか」

 まぁ、当然か。その誓約書には、もし契約者が死亡しても、自己責任であるという旨が日本語で書かれていた。
 
 誓約書にサインをしながら、質問する。

「ちなみに、今まで誰か亡くなったりは?」

 アルマさんは、

「ぼちぼちです」

 と、使い方は間違ってるのに、意味が通じてしまう日本語で答えてくれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

12年目の恋物語

真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。 だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。 すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。 2人が結ばれるまでの物語。 第一部「12年目の恋物語」完結 第二部「13年目のやさしい願い」完結 第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中 ※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。

訳あり冷徹社長はただの優男でした

あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた いや、待て 育児放棄にも程があるでしょう 音信不通の姉 泣き出す子供 父親は誰だよ 怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳) これはもう、人生詰んだと思った ********** この作品は他のサイトにも掲載しています

君が見た春をもう一度

sika
恋愛
高校時代、ひとつの誤解で離れた二人。 十年後、東京で再会した彼女は、もう誰かの「恋人」になっていた。 置き去りにした想い、やり直せない時間、そしてそれでも止まらない心。 恋と人生のすれ違いを描く、切なくも温かい再会ラブストーリー。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

【完結】シュゼットのはなし

ここ
恋愛
子猫(獣人)のシュゼットは王子を守るため、かわりに竜の呪いを受けた。 顔に大きな傷ができてしまう。 当然責任をとって妃のひとりになるはずだったのだが‥。

処理中です...