世界終わろう委員会

初瀬四季[ハツセシキ]

文字の大きさ
82 / 85
世界の終わりを君に捧ぐ

世界の終わりを君に捧ぐ 急 2

しおりを挟む
 他の露店でも、いくつか民芸品等をお土産として購入する。
 そんな事をしていると、屋台から良い匂いが漂ってくる。ちょうど小腹が空いてきたので、軽く食事をとる事にした。

「次はどこに行きましょうか?」

 アルマさんが、皿に盛られた野菜料理に口をつけながら、そう聞いてくる。

「そうですね、尾張さんはどこか行きたいところありますか?」

「そうね。砂漠の中にあるオアシスっていうものには少し興味があるわね」

 尾張さんは口元に指を触れさせる。

「オアシスですか。ーーつまり、水着ということですよね?」

「なんでそうなるのよ! 水辺から風景を眺めるだけに決まってるでしょう!」

「いえ、泳げますよ?」

 アルマさんが、尾張さんの言葉を否定する。

「やっぱり水着じゃないですか!」

「泳ぐとは言ってないでしょう!」

 尾張さんがまだグダグダと言っているが、とりあえずオアシスまで行くことになった。

「それじゃあ、行きますか!」

 急にやる気を見せはじめる僕とは対照的に、尾張さんがため息をついている。

「・・・・・・そうね」

 座っていた椅子から立ち上がる。
 その時、背中にドンッと衝撃を受け、つんのめる。

 僕にぶつかってきたのは、顔を大きな布で隠した人物であった。

 その人物は、現地の言葉で何事か叫ぶと、狂気に満ちたような目で周囲を見回す。

 その言葉を聞いた周囲の人々は、ざわざわと騒ぎ出すと一斉に逃げ惑う。

「紀美丹君‼︎」

 訳もわからず、困惑している僕を尾張さんの緊迫感に満ちた声が現実に引き戻す。

 その人物は、また繰り返し何かを叫ぶと手に持ったスイッチを押す。

 眩い閃光と爆音が鳴り響いた。



 彼の仕事のことはあまりよく思っていない。
 必要な事だと分かってはいるけれど、それでも彼が自ら危険に飛び込むことを手放しで喜べるほど、彼らとの付き合いは短くはなかった。

 昼食をとるために入った馴染みの定食屋さんで、サバ味噌定食を頼んでお冷に口をつける。

 何となく見ていたテレビのニュースでは、外国での自爆テロの事件を取り扱っていた。

 あれ? この国、紀美丹君達が行くって言ってた所。ーー複数の邦人の安否が不明だと、アナウンサーの女性が告げる。

 自然とガラスのコップを掴む手に力が入るのがわかった。
 溶けかけの氷が、カランと音をたてる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

12年目の恋物語

真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。 だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。 すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。 2人が結ばれるまでの物語。 第一部「12年目の恋物語」完結 第二部「13年目のやさしい願い」完結 第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中 ※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。

御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました【完結】

日下奈緒
恋愛
10年付き合った恋人と別れ、恋に臆病になっていた30歳の千尋。そんな彼女に、取引先で出会った御曹司・神楽木律が突然のプロポーズ。「交際0日で結婚しよう」なんて冗談でしょ?──戸惑いながら始まった新婚生活。冷めた仮面夫婦のはずが、律の一途な想いに千尋の心は少しずつほどけていく。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】シュゼットのはなし

ここ
恋愛
子猫(獣人)のシュゼットは王子を守るため、かわりに竜の呪いを受けた。 顔に大きな傷ができてしまう。 当然責任をとって妃のひとりになるはずだったのだが‥。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

その出会い、運命につき。

あさの紅茶
恋愛
背が高いことがコンプレックスの平野つばさが働く薬局に、つばさよりも背の高い胡桃洋平がやってきた。かっこよかったなと思っていたところ、雨の日にまさかの再会。そしてご飯を食べに行くことに。知れば知るほど彼を好きになってしまうつばさ。そんなある日、洋平と背の低い可愛らしい女性が歩いているところを偶然目撃。しかもその女性の名字も“胡桃”だった。つばさの恋はまさか不倫?!悩むつばさに洋平から次のお誘いが……。

処理中です...