神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空

文字の大きさ
14 / 117

魔法の才能(4)

しおりを挟む
 昼食になるころにはゲオルクもエルンも食事のために帰ってくる。
 食事しながらイルゼは二人にゼファイル村長に魔導書を頼んだことを話すと、なぜかゲオルクの顔色が曇った。
「どうして?」
 イルゼは怪訝にゲオルクの顔を覗き込んだ。
「だってそうだろ。エルンがどんどんすごい魔法師になったら鍛冶屋はどうする?」
「鍛冶屋はあんた一代で終わりよ。魔法師は名誉職よ。王様の側近にだってなれるのよ。鍛冶屋では王様の側近になるのは無理でしょ」
「なにも王様の側近にならなくてもいいだろ」
「エルンの出世をじゃまし​なくてもいいじゃない。エルンにはエルンの夢があるのよね、エルン」
「……でも、僕はまだ魔法師になろうとも考えてないんだけど……」
「ほらみろ、勝手にエルンの将来を決めるな。鍛冶屋が一番だ、危険じゃないし、食いっぱぐれもない。男らしい仕事だ」
「エルンには無理なの」
「いや、できる」
「無理」
 ゲオルクとイルゼはフォークを片手に睨みあった。

 昼食を終えてイルゼは後片付け、ゲオルクはパイプを吹かし、エルンは自室で捕まえたトンボと遊んでいる。そんなときゼファイル村長がドアを叩いた。
「皆、そろっているようだな。ちょうどいい、何軒か回って借りられるものを借りてきた。エルンに見てもらおうかな」
 背中には重そうな布袋を担いでいる。
「そうでしょ、皆エルンに期待してるのよ。村長さんからも言ってやってください。ゲオルクがエルンを魔法師にするのは反対だっていうんですよ。鍛冶屋にするつもりなのよ」
「反対ではないけど……」
 ゲオルクもゼファイル村長の前では強気な態度は消え失せる。
「なぜだね? 親なら子供の才能を伸ばしてやるのは当然の義務ではないかね」
「はあ、そうですか。……ならいいです」と仏頂面。
「まだ、決まったことではない。色々なことに挑戦させてみたらどうかね。わしも協力させてもらうから」
「はあ」といいながらもゲオルクはやっぱり何だか不機嫌。
 ゼファイル村長は背中の布袋を床に下ろすと、中から分厚く古めかしい本を数冊取り出しテーブルの上に置いた。
「こんな小さな村でも探せば結構あるもんですね」とイルゼが目を丸くする。
「まだあるぞ。頼んでおいたから後から持ってきてくれるそうだ。みんな屋根裏部屋や地下室にしまい込んでいるから探し出すのにひと苦労なんだ。誰一人満足に使いこなしていないらしい」
 ゲオルクとイルゼは机に並べられた本を一冊一冊手に取って見てみるが、何が書いてあるかさっぱりわからなかった。
 イルゼが一冊を手にゼファイル村長に聞いた。
「これは何語なんですかね」
「わしに聞かれても困るな。さっぱりわからん」
「エルン、ちょっとおいで」
 ゲオルクが呼んだ。
「何?」とエルンが走ってくる。
 エルンの元気そうな顔を見てゼファイル村長は満面の笑みを浮かべた。
「やあエルン。元気そうだね」
「こんにちは村長さん。……わぁーすごい魔導書、魔解書だ。どうしたのこんなに」
「エルンに持ってきたんだ。読めそうな本を選びなさい。全部でもいいぞ。しかし、本当にこんな難しい本を読めるのかな。わしはちょっと疑問なんだが」
 エルンは椅子に座ると身を乗り出してテーブルに並べられた本を物色し始めた。
 皆がエルンの表情を見ていた。
 嬉しそうなエルンの表情は次第に曇っていった。
「どうしたエルン。読めないか? ちょっと難しいか」
 ゼファイル村長がエルンの表情に疑問を持った。
 エルンはゼファイル村長の顔を見ながら言いにくそうに言った。
「村長さんがせっかく持ってきてくれたんですが、ここにある本のほとんど偽物だよ」
 エルンは一冊の本を指さすと「これは『猿でもできる魔法百選』、次の本は『あなたも今日から魔法使い』、その次、『最短十分でできる魔法九十九』……」
「これらは大量に作られた偽物なんです。いろんな薬品を使って古く見せてますが、本そのものは新しいんです。書かれている内容も嘘ばかりなんです」
「村長!」
 ゲオルクがゼファイル村長に厳しい目を向けた。
「いや、わしも、そんなことは知らなかった。……困ったな」
「でも」とエルンがニコリと笑った。「この本だけは本物です。『魔法職のための魔力を増大させる薬草とキノコと虫』これはすごく興味があります。使っていた人の魔力がほんのりと残ってます。これを貸してください」
「そうか、そうか、これは、確か、大工のゲルハルトから借りてきた本だ。そうだ、あそこの婆さん、昔、大きな街で魔法使いをやっていたらしい。占いや人探し、ヒーリングで病気を治していたって聞いたことがある。だから本物を持っていたんだな。他の連中は見栄や好奇心で手を出すから偽物を掴まされるんだ」
「申し訳ありませんが、他の本は返してきてもらえませんか」
 イルゼが済まなそうに言う。
「仕方がないな。そうするとするか。でもな、これに懲りずに探してきてやるから安心しろ。魔法が使える者が村にいてくれれば心強い」
 ゼファイル村長は嫌な顔もせず持ってきたときのように重そうな布袋を担いで帰っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!

日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」 見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。 神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。 特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。 突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。 なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。 ・魔物に襲われている女の子との出会い ・勇者との出会い ・魔王との出会い ・他の転生者との出会い ・波長の合う仲間との出会い etc....... チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。 その時クロムは何を想い、何をするのか…… このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

処理中です...