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魔法の才能(4)
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昼食になるころにはゲオルクもエルンも食事のために帰ってくる。
食事しながらイルゼは二人にゼファイル村長に魔導書を頼んだことを話すと、なぜかゲオルクの顔色が曇った。
「どうして?」
イルゼは怪訝にゲオルクの顔を覗き込んだ。
「だってそうだろ。エルンがどんどんすごい魔法師になったら鍛冶屋はどうする?」
「鍛冶屋はあんた一代で終わりよ。魔法師は名誉職よ。王様の側近にだってなれるのよ。鍛冶屋では王様の側近になるのは無理でしょ」
「なにも王様の側近にならなくてもいいだろ」
「エルンの出世をじゃましなくてもいいじゃない。エルンにはエルンの夢があるのよね、エルン」
「……でも、僕はまだ魔法師になろうとも考えてないんだけど……」
「ほらみろ、勝手にエルンの将来を決めるな。鍛冶屋が一番だ、危険じゃないし、食いっぱぐれもない。男らしい仕事だ」
「エルンには無理なの」
「いや、できる」
「無理」
ゲオルクとイルゼはフォークを片手に睨みあった。
昼食を終えてイルゼは後片付け、ゲオルクはパイプを吹かし、エルンは自室で捕まえたトンボと遊んでいる。そんなときゼファイル村長がドアを叩いた。
「皆、そろっているようだな。ちょうどいい、何軒か回って借りられるものを借りてきた。エルンに見てもらおうかな」
背中には重そうな布袋を担いでいる。
「そうでしょ、皆エルンに期待してるのよ。村長さんからも言ってやってください。ゲオルクがエルンを魔法師にするのは反対だっていうんですよ。鍛冶屋にするつもりなのよ」
「反対ではないけど……」
ゲオルクもゼファイル村長の前では強気な態度は消え失せる。
「なぜだね? 親なら子供の才能を伸ばしてやるのは当然の義務ではないかね」
「はあ、そうですか。……ならいいです」と仏頂面。
「まだ、決まったことではない。色々なことに挑戦させてみたらどうかね。わしも協力させてもらうから」
「はあ」といいながらもゲオルクはやっぱり何だか不機嫌。
ゼファイル村長は背中の布袋を床に下ろすと、中から分厚く古めかしい本を数冊取り出しテーブルの上に置いた。
「こんな小さな村でも探せば結構あるもんですね」とイルゼが目を丸くする。
「まだあるぞ。頼んでおいたから後から持ってきてくれるそうだ。みんな屋根裏部屋や地下室にしまい込んでいるから探し出すのにひと苦労なんだ。誰一人満足に使いこなしていないらしい」
ゲオルクとイルゼは机に並べられた本を一冊一冊手に取って見てみるが、何が書いてあるかさっぱりわからなかった。
イルゼが一冊を手にゼファイル村長に聞いた。
「これは何語なんですかね」
「わしに聞かれても困るな。さっぱりわからん」
「エルン、ちょっとおいで」
ゲオルクが呼んだ。
「何?」とエルンが走ってくる。
エルンの元気そうな顔を見てゼファイル村長は満面の笑みを浮かべた。
「やあエルン。元気そうだね」
「こんにちは村長さん。……わぁーすごい魔導書、魔解書だ。どうしたのこんなに」
「エルンに持ってきたんだ。読めそうな本を選びなさい。全部でもいいぞ。しかし、本当にこんな難しい本を読めるのかな。わしはちょっと疑問なんだが」
エルンは椅子に座ると身を乗り出してテーブルに並べられた本を物色し始めた。
皆がエルンの表情を見ていた。
嬉しそうなエルンの表情は次第に曇っていった。
「どうしたエルン。読めないか? ちょっと難しいか」
ゼファイル村長がエルンの表情に疑問を持った。
エルンはゼファイル村長の顔を見ながら言いにくそうに言った。
「村長さんがせっかく持ってきてくれたんですが、ここにある本のほとんど偽物だよ」
エルンは一冊の本を指さすと「これは『猿でもできる魔法百選』、次の本は『あなたも今日から魔法使い』、その次、『最短十分でできる魔法九十九』……」
「これらは大量に作られた偽物なんです。いろんな薬品を使って古く見せてますが、本そのものは新しいんです。書かれている内容も嘘ばかりなんです」
「村長!」
ゲオルクがゼファイル村長に厳しい目を向けた。
「いや、わしも、そんなことは知らなかった。……困ったな」
「でも」とエルンがニコリと笑った。「この本だけは本物です。『魔法職のための魔力を増大させる薬草とキノコと虫』これはすごく興味があります。使っていた人の魔力がほんのりと残ってます。これを貸してください」
「そうか、そうか、これは、確か、大工のゲルハルトから借りてきた本だ。そうだ、あそこの婆さん、昔、大きな街で魔法使いをやっていたらしい。占いや人探し、ヒーリングで病気を治していたって聞いたことがある。だから本物を持っていたんだな。他の連中は見栄や好奇心で手を出すから偽物を掴まされるんだ」
「申し訳ありませんが、他の本は返してきてもらえませんか」
イルゼが済まなそうに言う。
「仕方がないな。そうするとするか。でもな、これに懲りずに探してきてやるから安心しろ。魔法が使える者が村にいてくれれば心強い」
ゼファイル村長は嫌な顔もせず持ってきたときのように重そうな布袋を担いで帰っていった。
食事しながらイルゼは二人にゼファイル村長に魔導書を頼んだことを話すと、なぜかゲオルクの顔色が曇った。
「どうして?」
イルゼは怪訝にゲオルクの顔を覗き込んだ。
「だってそうだろ。エルンがどんどんすごい魔法師になったら鍛冶屋はどうする?」
「鍛冶屋はあんた一代で終わりよ。魔法師は名誉職よ。王様の側近にだってなれるのよ。鍛冶屋では王様の側近になるのは無理でしょ」
「なにも王様の側近にならなくてもいいだろ」
「エルンの出世をじゃましなくてもいいじゃない。エルンにはエルンの夢があるのよね、エルン」
「……でも、僕はまだ魔法師になろうとも考えてないんだけど……」
「ほらみろ、勝手にエルンの将来を決めるな。鍛冶屋が一番だ、危険じゃないし、食いっぱぐれもない。男らしい仕事だ」
「エルンには無理なの」
「いや、できる」
「無理」
ゲオルクとイルゼはフォークを片手に睨みあった。
昼食を終えてイルゼは後片付け、ゲオルクはパイプを吹かし、エルンは自室で捕まえたトンボと遊んでいる。そんなときゼファイル村長がドアを叩いた。
「皆、そろっているようだな。ちょうどいい、何軒か回って借りられるものを借りてきた。エルンに見てもらおうかな」
背中には重そうな布袋を担いでいる。
「そうでしょ、皆エルンに期待してるのよ。村長さんからも言ってやってください。ゲオルクがエルンを魔法師にするのは反対だっていうんですよ。鍛冶屋にするつもりなのよ」
「反対ではないけど……」
ゲオルクもゼファイル村長の前では強気な態度は消え失せる。
「なぜだね? 親なら子供の才能を伸ばしてやるのは当然の義務ではないかね」
「はあ、そうですか。……ならいいです」と仏頂面。
「まだ、決まったことではない。色々なことに挑戦させてみたらどうかね。わしも協力させてもらうから」
「はあ」といいながらもゲオルクはやっぱり何だか不機嫌。
ゼファイル村長は背中の布袋を床に下ろすと、中から分厚く古めかしい本を数冊取り出しテーブルの上に置いた。
「こんな小さな村でも探せば結構あるもんですね」とイルゼが目を丸くする。
「まだあるぞ。頼んでおいたから後から持ってきてくれるそうだ。みんな屋根裏部屋や地下室にしまい込んでいるから探し出すのにひと苦労なんだ。誰一人満足に使いこなしていないらしい」
ゲオルクとイルゼは机に並べられた本を一冊一冊手に取って見てみるが、何が書いてあるかさっぱりわからなかった。
イルゼが一冊を手にゼファイル村長に聞いた。
「これは何語なんですかね」
「わしに聞かれても困るな。さっぱりわからん」
「エルン、ちょっとおいで」
ゲオルクが呼んだ。
「何?」とエルンが走ってくる。
エルンの元気そうな顔を見てゼファイル村長は満面の笑みを浮かべた。
「やあエルン。元気そうだね」
「こんにちは村長さん。……わぁーすごい魔導書、魔解書だ。どうしたのこんなに」
「エルンに持ってきたんだ。読めそうな本を選びなさい。全部でもいいぞ。しかし、本当にこんな難しい本を読めるのかな。わしはちょっと疑問なんだが」
エルンは椅子に座ると身を乗り出してテーブルに並べられた本を物色し始めた。
皆がエルンの表情を見ていた。
嬉しそうなエルンの表情は次第に曇っていった。
「どうしたエルン。読めないか? ちょっと難しいか」
ゼファイル村長がエルンの表情に疑問を持った。
エルンはゼファイル村長の顔を見ながら言いにくそうに言った。
「村長さんがせっかく持ってきてくれたんですが、ここにある本のほとんど偽物だよ」
エルンは一冊の本を指さすと「これは『猿でもできる魔法百選』、次の本は『あなたも今日から魔法使い』、その次、『最短十分でできる魔法九十九』……」
「これらは大量に作られた偽物なんです。いろんな薬品を使って古く見せてますが、本そのものは新しいんです。書かれている内容も嘘ばかりなんです」
「村長!」
ゲオルクがゼファイル村長に厳しい目を向けた。
「いや、わしも、そんなことは知らなかった。……困ったな」
「でも」とエルンがニコリと笑った。「この本だけは本物です。『魔法職のための魔力を増大させる薬草とキノコと虫』これはすごく興味があります。使っていた人の魔力がほんのりと残ってます。これを貸してください」
「そうか、そうか、これは、確か、大工のゲルハルトから借りてきた本だ。そうだ、あそこの婆さん、昔、大きな街で魔法使いをやっていたらしい。占いや人探し、ヒーリングで病気を治していたって聞いたことがある。だから本物を持っていたんだな。他の連中は見栄や好奇心で手を出すから偽物を掴まされるんだ」
「申し訳ありませんが、他の本は返してきてもらえませんか」
イルゼが済まなそうに言う。
「仕方がないな。そうするとするか。でもな、これに懲りずに探してきてやるから安心しろ。魔法が使える者が村にいてくれれば心強い」
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