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エルンの誕生日(1)
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二カ月が過ぎたころ、エルンはふと思い出したことがあった。
「もうすぐ誕生日なんだ」と朝食をしているさなか漏らした。
「誕生日? エルン、誕生日を覚えているのか」
ゲオルクがスプーンの動きを止め、イルゼと見つめあった。
「ずっと気になってたのよ。いつ誕生日なのかなって。だって誕生プレゼントいつ用意したらいいかわからないでしょ」
「おお、俺もだぞ。本当だぞ。いつなんだ?」
「七月三日。なぜかそれだけははっきりと思い出したんだ」
「もうすぐじゃないか。で、今日何日だ?」
「あと二日しかないわ。大丈夫よ、何とかするから」
「エルンは何がいいんだ」
「うん……何でもいいよ。おじさんとおばさんが選んでよ」
「そうか、じゃあ、ちょっと考えてみるか」
七月二日の夜。毎晩続いていた妙な家の揺れはこのころにはなくなっていた。いまだにあの揺れの正体がわからなかった。
ゲオルクとイルゼはもう眠りについているようだった。
エルンはランプの明かりの下で遅くまで魔導書を読んでいた。
ゼファイル村長が隣の村の神父様から借りてきてくれた「我が身を守るため、魔力により風を圧縮し硬化させ光のごとく押し出す魔法 ルフトシュラーグ」の魔導書である。初めての攻撃魔法である。炎を攻撃に使うこともできるが、威力としてはそれほどではない。小さな相手であれば倒せないことはないが大きな相手となると効果は薄い。しかし、今度の魔法は違う。圧縮の密度や速度で相手を吹き飛ばすこともできれば、貫くこともできるのである。必要になる時が必ず来るような気がしてならなかった。身につけておいて損はないと考えて数日前から練習をしているのだが、なかなかうまくいかなくて焦っていた。
確かにやってみると風は起こすことはできる。しかし、数メートル先のロウソクの炎を消す程度の風しか起こせないのだ。
魔力量のせいか、根本的に何かが違っているのかわからない。
そうこう悩んでいるうちに日付が変わったような気がした。七月三日となった。
「そうか、僕は今の瞬間、十歳になったんだ。エルン、誕生日おめでとう」
自分で祝辞を述べた瞬間、妙な感覚に襲われた。
——何だ? 何か変。頭が痛い——
その突然の感覚に恐怖を感じ始めたとき、頭の中で何かが膨らみ始めたような錯覚に陥った。
——痛い。頭が膨らむ……頭が割れる……——
エルンは椅子から落ち、転げまわるようにして頭を抱えた。
のたうち回っていると、先ほど読んでいた魔導書に載っていた攻撃魔法ルフトシュラーグの呪文が蘇ってきた。
——フェアライエ ミア ディー マハト、デン ベーゼン ディンゲン フォー ミア ツー フェアニヒテン……——
『私の前の邪悪なものを打ち滅ぼすため、高圧の風を放つ魔法の権限を与えよ! そして放て』
エルンは両手に魔力が集まるのを感じると両腕を上へと掲げた。
——ああ、暴発する……——
次の瞬間、両手から何かが発動し、エルンは背後へと吹き飛ばされた。
耳をつんざく音が轟くと屋根へと突き抜けた。
パラパラと木片がエルンの頭に降り注いだ。
エルンは我に返った。
頭の痛みどころではない。
——どうしよう……屋根に穴が開いちゃった——
「もうすぐ誕生日なんだ」と朝食をしているさなか漏らした。
「誕生日? エルン、誕生日を覚えているのか」
ゲオルクがスプーンの動きを止め、イルゼと見つめあった。
「ずっと気になってたのよ。いつ誕生日なのかなって。だって誕生プレゼントいつ用意したらいいかわからないでしょ」
「おお、俺もだぞ。本当だぞ。いつなんだ?」
「七月三日。なぜかそれだけははっきりと思い出したんだ」
「もうすぐじゃないか。で、今日何日だ?」
「あと二日しかないわ。大丈夫よ、何とかするから」
「エルンは何がいいんだ」
「うん……何でもいいよ。おじさんとおばさんが選んでよ」
「そうか、じゃあ、ちょっと考えてみるか」
七月二日の夜。毎晩続いていた妙な家の揺れはこのころにはなくなっていた。いまだにあの揺れの正体がわからなかった。
ゲオルクとイルゼはもう眠りについているようだった。
エルンはランプの明かりの下で遅くまで魔導書を読んでいた。
ゼファイル村長が隣の村の神父様から借りてきてくれた「我が身を守るため、魔力により風を圧縮し硬化させ光のごとく押し出す魔法 ルフトシュラーグ」の魔導書である。初めての攻撃魔法である。炎を攻撃に使うこともできるが、威力としてはそれほどではない。小さな相手であれば倒せないことはないが大きな相手となると効果は薄い。しかし、今度の魔法は違う。圧縮の密度や速度で相手を吹き飛ばすこともできれば、貫くこともできるのである。必要になる時が必ず来るような気がしてならなかった。身につけておいて損はないと考えて数日前から練習をしているのだが、なかなかうまくいかなくて焦っていた。
確かにやってみると風は起こすことはできる。しかし、数メートル先のロウソクの炎を消す程度の風しか起こせないのだ。
魔力量のせいか、根本的に何かが違っているのかわからない。
そうこう悩んでいるうちに日付が変わったような気がした。七月三日となった。
「そうか、僕は今の瞬間、十歳になったんだ。エルン、誕生日おめでとう」
自分で祝辞を述べた瞬間、妙な感覚に襲われた。
——何だ? 何か変。頭が痛い——
その突然の感覚に恐怖を感じ始めたとき、頭の中で何かが膨らみ始めたような錯覚に陥った。
——痛い。頭が膨らむ……頭が割れる……——
エルンは椅子から落ち、転げまわるようにして頭を抱えた。
のたうち回っていると、先ほど読んでいた魔導書に載っていた攻撃魔法ルフトシュラーグの呪文が蘇ってきた。
——フェアライエ ミア ディー マハト、デン ベーゼン ディンゲン フォー ミア ツー フェアニヒテン……——
『私の前の邪悪なものを打ち滅ぼすため、高圧の風を放つ魔法の権限を与えよ! そして放て』
エルンは両手に魔力が集まるのを感じると両腕を上へと掲げた。
——ああ、暴発する……——
次の瞬間、両手から何かが発動し、エルンは背後へと吹き飛ばされた。
耳をつんざく音が轟くと屋根へと突き抜けた。
パラパラと木片がエルンの頭に降り注いだ。
エルンは我に返った。
頭の痛みどころではない。
——どうしよう……屋根に穴が開いちゃった——
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