神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空

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グリフスの襲来

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 翌日、ゲオルクが仕事に出かけようと家を出たとき、数人の村人が駆け寄ってきた。それぞれの手に斧や剣が握られている。
「ゲオルク、今、森の方へは行かない方がいい。お前さんの仕事場の先でグリフスが出たらしい」
「こんな近くにか?」
「数は二、三頭で大きくはないそうだが、確かにグリフスだったという。樵のペーターが見たというんだ」
「ペーターが言うんなら間違いないだろう。仕事ができないのも困ったが、こんな近くに出るようになったとは……これからどうする?」
「これから村の衆で討伐隊を編成して狩りに行こうと思う。ゲオルクはどうする」
「大丈夫なのか、俺たちだけで」
「街まで知らせに行ってる暇はない。ここは俺たちの村だ。俺たちの村は俺たちで守らんといかん」
「しかし……」
「グリフスくらいなら、何とかなるだろ。数も少ないというから。無理にとは言わんが」と一人が言った。
「無理にとは言わんが」と言われて引き下がることなどできようか。ここで男気を見せたいのがゲオルクだ。
「わかった。ちょっと待っていてくれ。準備をする。その間に仲間を集めてくれ」
 男たちは一旦解散すると、仲間を募って再びゲオルクの家の前に集まった。二十人ほどが集まった。
 ゲオルクはイルゼに事情を説明すると準備をさせた。剣と鎧、兜。鎧、兜と言っても厚手の皮でできた粗末な防具だ。街から離れた田舎の村では盗賊や山賊からの襲撃を想定しなければならない。街まで行って応援を要請する暇などないわけで、そんな時は自警団を結成して対応しなければならない。そのために簡素ながら戦いの防具は各家に用意されていた。
 男たちが森の中へ入って行く後姿をエルンは窓から見ていた。
 エルンは嫌な予感がした。最近のグリフスは以前のグリフスではない。凶暴で狡猾だ。フィリアの一件でそれを感じ取った。あの程度の装備、武器で対応できるか心配だった。

 二十人ほどで結成された自警団一行は森へと入った。
 エルンは自分にできることはないか考えた。一行が森へ入り、その姿が見えなくなったころ、エルンも準備を始めた。ゲオルクからプレゼントされた剣をベルトに差し、イルゼからプレゼントされたバッグを肩に掛け、その中に乾パンと干し肉、水筒を入れる。
「エルンどこへ行くの?」
 イルゼがエルンの身支度を見て不審に思った。
「ちょっとキノコを採りに行って来るだけだよ。心配しないで」
「わかってるわね」
「もちろん」
 エルンはいそいそと家を出た。そして一行のあとを追った。
 子供の足で大人の足を追うのは難しい。ずいぶんと離されたような気がした。しかし、向かった方角はわかる。
 しばらく歩くと、エルンは色々な気配を感じ取った。人の気配、一行がその先にいることがわかった。
 そしてその先に、グリフスの気配もあることがわかった。
 エルンは恐怖を感じた。確かにグリフスの気配はあるが、その数は二、三頭ではなかった。
 少なくとも数十頭。しかもその中にはそれ以外の気配もある。オークやトロールの気配だ。なぜ、オークやトロールがグリフスと一緒にいるのか。
 エルンはあのときの恐怖を蘇らせた。きっと何かに操られているんだと察した。
 そして、これは罠だと直感した。
 二、三頭のグリフスを人間に発見させて、それを退治しに来る人間を待ち伏せ、集団で襲う魂胆だと。
 ダメだ。そのまま行けば、囲まれて全滅しかねない。
 エルンは急いだ。
 しかし、恐怖はそれだけではなかった。背後にも何者かの気配を感じた。背後の気配はエルンへと向かっているものではなかった。
 何だろう、この気配は?
 エルンははっとした。村へ向かっているんだと直感した。村から自警団を引き離し、その間に村を襲う魂胆に違いないと。
 どうすればいいのかエルンにはわからなかった。まず、先の一行に追いつき、それを知らせるのが先と思い歩を進めた。
 しかし、その姿が見え始めたかと思ったとき、怒号が聞こえた。
 待ち伏せしたゴブリン、トロール、オーク、グリフスが一行へ襲いかかったのだ。
 グロイエルやグリフス、人の声、怒号と悲鳴が入り混じって森へと広がった。
 エルンはその中でゲオルクを探した。
 ゲオルクは剣を振るってオークやトロールに切りかかっている。
「おじさん。村が」
「エルン、どうしてここへ」
「村が襲われてる」
 それで皆もようやくわかった。これが罠であると。
「ちくしょー騙された」
 しかし、このままではどうすることもできない。戦い続けるしかなかった。
 エルンも邪悪なものを打ち滅ぼす火球、ブランド・ブリッツで応戦した。
 それは圧倒的な威力だった。周りの戦う大人たちが目を見張るほどだった。
 しかし、グロイエル、グリフスの数はさらに多くなり、戦いは広範囲に広がった。
 どこで、誰が戦っているかさえわからなくなるほど広がった。
 やがて静かになった。
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