神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空

文字の大きさ
48 / 117

古魔道具屋の準備(2)

しおりを挟む
 村への帰り道、森の真ん中あたりで一台の馬車が止まっていた。
「あの馬車に気を付けろ。罠かもしれん」
 ガルディから殺気がほとばしった。剣の柄に手がかかる。
 旅人を待ち伏せて油断させて盗賊を働く輩の可能性もある。
 エルンは用心深く馬車へと近づいた。
 ガルディは剣に手を掛けたまま近づいた。
 人の気配があった。六十歳前後の農夫だ。途方に暮れている。
「どうしました」
「ああ、この先のシュバイゲンへ帰るんだが、馬が急に歩けなくなったんだ」
「シュバイゲンの人でしたか。てっきり盗賊かと思いました」
「アハハハッ……まさか……しかし、困った。馬がこの通りだ」
 馬はしゃがみこんだまま息も絶え絶えだ。
「怪我ですか?」
「いや、もう年だからな。それでも無理に働かせてきた。そろそろ寿命なんじゃな」
「この馬、どうするんですか?」
「そうさな。ここで動けなくなるんなら、ここへ置き去りにするしかない。村まで歩ければ殺して肉にするつもりだが」
「ここまで働いてきた馬を置き去りとか、肉にするとか……そんなひどいこと」
 エルンは思わず叫んだ。
 ガルディがエルンを宥めるように言う。
「エルン、それが普通だ。使えなくなった馬を養うことなどできんだろ。最後は肉だ」
「だったら、この馬を僕に譲ってください。五万デリラでどうですか?」
「エルン、バカか。いつ死ぬかわからん馬を買ってどうする。肉にしても高くは売れん」
「わしなら構わんが」と農夫。
「ダメだ。高すぎる」とガルディ。
「馬車も付けてください。馬がいなけりゃ馬車は曳けないでしょ」
 農夫はちょっと考える仕草をした。
「こんなボロ馬車で良ければ付けて譲るが、本当に五万デリラでいいのか」
「ええ、いいです」
「エルン、やめとけ。……爺さん、調子に乗るなよ」
「この子がいいというんならそれでいいじゃないかね」
 エルンはガルディが止めるのも聞かず五万デリラをバッグから取り出すと農夫に渡した。
 店舗の敷金礼金を払った後なので、もうお金はほとんど残ってない。
「五万デリラ、確かに……自分の荷物だけは持っていくがそれは構わないな」
「ええ、構いません」
「それじゃ」
 農夫は自分の荷物だけを背負って村へと向かって歩き始めた。
「エルン、こんな死にぞこないの馬とボロ馬車をこんなところで買ってどうする」
 エルンはガルディに向かってニヤッと笑った。
「何だその笑いは。ときどき気持ち悪い笑い方するよな、お前。どうする気だ?」
 怪訝に見ているガルディの前で、エルンは馬に近づいた。
 馬はどこかが痛いのか身体全体を揺らして喘いだ。
 エルンは馬の周囲を歩き回ると患部を見つけた。右前足の膝だ。酷使されての関節炎のようだ。
 そこに手を当て目を閉じ、魔力を込めた。
 しばらくそのまま時間が過ぎた。
 すると、喘ぎが止まり、馬は立ち上がろうともがき始めた。そしてすっくと立った。
 先ほどまでの息も絶え絶えの馬と見まがうほどしっかりとした足で立った。
 さらにエルンはその馬の胸のあたりに手を当てるとしばらく魔力を込めた。
 弱った心臓の回復。
 すると馬の目が若々しく輝く始めた。
「エルン、お前、ヒーリングの能力もあったのか」
「わかりませんが、できるような気がしたんです」
「ボロ馬車は直せるか?」
「馬車は、このまま村まで乗って、家で直しましょう。いいですよ、僕が直しますから」
「嫌味か? それくらいなら俺でも直せる」
「じゃあ、お任せします」  
 エルンとガルディは馬車に乗り込むと馬の手綱を引いた。
 そして帰路についた。
 途中、先ほどの農夫の横を通る。
「乗ってきますか?」と声を掛けたが、ガルディが「乗せることはないぞ」と馬に鞭を入れると走り過ぎた。
 農夫はきょとんとした顔で二人の乗る馬車を見送った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!

日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」 見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。 神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。 特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。 突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。 なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。 ・魔物に襲われている女の子との出会い ・勇者との出会い ・魔王との出会い ・他の転生者との出会い ・波長の合う仲間との出会い etc....... チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。 その時クロムは何を想い、何をするのか…… このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

処理中です...