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古魔道具屋の準備(2)
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村への帰り道、森の真ん中あたりで一台の馬車が止まっていた。
「あの馬車に気を付けろ。罠かもしれん」
ガルディから殺気がほとばしった。剣の柄に手がかかる。
旅人を待ち伏せて油断させて盗賊を働く輩の可能性もある。
エルンは用心深く馬車へと近づいた。
ガルディは剣に手を掛けたまま近づいた。
人の気配があった。六十歳前後の農夫だ。途方に暮れている。
「どうしました」
「ああ、この先のシュバイゲンへ帰るんだが、馬が急に歩けなくなったんだ」
「シュバイゲンの人でしたか。てっきり盗賊かと思いました」
「アハハハッ……まさか……しかし、困った。馬がこの通りだ」
馬はしゃがみこんだまま息も絶え絶えだ。
「怪我ですか?」
「いや、もう年だからな。それでも無理に働かせてきた。そろそろ寿命なんじゃな」
「この馬、どうするんですか?」
「そうさな。ここで動けなくなるんなら、ここへ置き去りにするしかない。村まで歩ければ殺して肉にするつもりだが」
「ここまで働いてきた馬を置き去りとか、肉にするとか……そんなひどいこと」
エルンは思わず叫んだ。
ガルディがエルンを宥めるように言う。
「エルン、それが普通だ。使えなくなった馬を養うことなどできんだろ。最後は肉だ」
「だったら、この馬を僕に譲ってください。五万デリラでどうですか?」
「エルン、バカか。いつ死ぬかわからん馬を買ってどうする。肉にしても高くは売れん」
「わしなら構わんが」と農夫。
「ダメだ。高すぎる」とガルディ。
「馬車も付けてください。馬がいなけりゃ馬車は曳けないでしょ」
農夫はちょっと考える仕草をした。
「こんなボロ馬車で良ければ付けて譲るが、本当に五万デリラでいいのか」
「ええ、いいです」
「エルン、やめとけ。……爺さん、調子に乗るなよ」
「この子がいいというんならそれでいいじゃないかね」
エルンはガルディが止めるのも聞かず五万デリラをバッグから取り出すと農夫に渡した。
店舗の敷金礼金を払った後なので、もうお金はほとんど残ってない。
「五万デリラ、確かに……自分の荷物だけは持っていくがそれは構わないな」
「ええ、構いません」
「それじゃ」
農夫は自分の荷物だけを背負って村へと向かって歩き始めた。
「エルン、こんな死にぞこないの馬とボロ馬車をこんなところで買ってどうする」
エルンはガルディに向かってニヤッと笑った。
「何だその笑いは。ときどき気持ち悪い笑い方するよな、お前。どうする気だ?」
怪訝に見ているガルディの前で、エルンは馬に近づいた。
馬はどこかが痛いのか身体全体を揺らして喘いだ。
エルンは馬の周囲を歩き回ると患部を見つけた。右前足の膝だ。酷使されての関節炎のようだ。
そこに手を当て目を閉じ、魔力を込めた。
しばらくそのまま時間が過ぎた。
すると、喘ぎが止まり、馬は立ち上がろうともがき始めた。そしてすっくと立った。
先ほどまでの息も絶え絶えの馬と見まがうほどしっかりとした足で立った。
さらにエルンはその馬の胸のあたりに手を当てるとしばらく魔力を込めた。
弱った心臓の回復。
すると馬の目が若々しく輝く始めた。
「エルン、お前、ヒーリングの能力もあったのか」
「わかりませんが、できるような気がしたんです」
「ボロ馬車は直せるか?」
「馬車は、このまま村まで乗って、家で直しましょう。いいですよ、僕が直しますから」
「嫌味か? それくらいなら俺でも直せる」
「じゃあ、お任せします」
エルンとガルディは馬車に乗り込むと馬の手綱を引いた。
そして帰路についた。
途中、先ほどの農夫の横を通る。
「乗ってきますか?」と声を掛けたが、ガルディが「乗せることはないぞ」と馬に鞭を入れると走り過ぎた。
農夫はきょとんとした顔で二人の乗る馬車を見送った。
「あの馬車に気を付けろ。罠かもしれん」
ガルディから殺気がほとばしった。剣の柄に手がかかる。
旅人を待ち伏せて油断させて盗賊を働く輩の可能性もある。
エルンは用心深く馬車へと近づいた。
ガルディは剣に手を掛けたまま近づいた。
人の気配があった。六十歳前後の農夫だ。途方に暮れている。
「どうしました」
「ああ、この先のシュバイゲンへ帰るんだが、馬が急に歩けなくなったんだ」
「シュバイゲンの人でしたか。てっきり盗賊かと思いました」
「アハハハッ……まさか……しかし、困った。馬がこの通りだ」
馬はしゃがみこんだまま息も絶え絶えだ。
「怪我ですか?」
「いや、もう年だからな。それでも無理に働かせてきた。そろそろ寿命なんじゃな」
「この馬、どうするんですか?」
「そうさな。ここで動けなくなるんなら、ここへ置き去りにするしかない。村まで歩ければ殺して肉にするつもりだが」
「ここまで働いてきた馬を置き去りとか、肉にするとか……そんなひどいこと」
エルンは思わず叫んだ。
ガルディがエルンを宥めるように言う。
「エルン、それが普通だ。使えなくなった馬を養うことなどできんだろ。最後は肉だ」
「だったら、この馬を僕に譲ってください。五万デリラでどうですか?」
「エルン、バカか。いつ死ぬかわからん馬を買ってどうする。肉にしても高くは売れん」
「わしなら構わんが」と農夫。
「ダメだ。高すぎる」とガルディ。
「馬車も付けてください。馬がいなけりゃ馬車は曳けないでしょ」
農夫はちょっと考える仕草をした。
「こんなボロ馬車で良ければ付けて譲るが、本当に五万デリラでいいのか」
「ええ、いいです」
「エルン、やめとけ。……爺さん、調子に乗るなよ」
「この子がいいというんならそれでいいじゃないかね」
エルンはガルディが止めるのも聞かず五万デリラをバッグから取り出すと農夫に渡した。
店舗の敷金礼金を払った後なので、もうお金はほとんど残ってない。
「五万デリラ、確かに……自分の荷物だけは持っていくがそれは構わないな」
「ええ、構いません」
「それじゃ」
農夫は自分の荷物だけを背負って村へと向かって歩き始めた。
「エルン、こんな死にぞこないの馬とボロ馬車をこんなところで買ってどうする」
エルンはガルディに向かってニヤッと笑った。
「何だその笑いは。ときどき気持ち悪い笑い方するよな、お前。どうする気だ?」
怪訝に見ているガルディの前で、エルンは馬に近づいた。
馬はどこかが痛いのか身体全体を揺らして喘いだ。
エルンは馬の周囲を歩き回ると患部を見つけた。右前足の膝だ。酷使されての関節炎のようだ。
そこに手を当て目を閉じ、魔力を込めた。
しばらくそのまま時間が過ぎた。
すると、喘ぎが止まり、馬は立ち上がろうともがき始めた。そしてすっくと立った。
先ほどまでの息も絶え絶えの馬と見まがうほどしっかりとした足で立った。
さらにエルンはその馬の胸のあたりに手を当てるとしばらく魔力を込めた。
弱った心臓の回復。
すると馬の目が若々しく輝く始めた。
「エルン、お前、ヒーリングの能力もあったのか」
「わかりませんが、できるような気がしたんです」
「ボロ馬車は直せるか?」
「馬車は、このまま村まで乗って、家で直しましょう。いいですよ、僕が直しますから」
「嫌味か? それくらいなら俺でも直せる」
「じゃあ、お任せします」
エルンとガルディは馬車に乗り込むと馬の手綱を引いた。
そして帰路についた。
途中、先ほどの農夫の横を通る。
「乗ってきますか?」と声を掛けたが、ガルディが「乗せることはないぞ」と馬に鞭を入れると走り過ぎた。
農夫はきょとんとした顔で二人の乗る馬車を見送った。
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