神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空

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気味の悪い人形

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 ガルディはノコギリとカナヅチを使って半日がかりで馬車を直した。
「お前ならものの数十秒で直せるんだろうな」
「でも、本来、修理というのはそうやって直すものです。その方が物も喜びますよ」
「物が喜ぶわけねえだろ」
——感性の違いだよね——
「もういいです。でも、ガルディさんもなかなか器用ですね」
「ガキのお前に褒められるとなんだかムカつくな」
「どうしてですか。もっと素直になってください」
「余計にムカつくぞ」
 一息ついたガルディはエルンの様子を見ていた。
 エルンは魔道具、骨董品の仕分けを始めていた。そのまま売れそうな物、修理が必要な物、特別に希少性のある物、どう見ても商品になりそうにない物。
「ここにあるのはゴミか?」
「そうです、壊れてますし、直す価値もありません。残してくれたお爺さんには申し訳ないですけど後でみんなまとめて燃やしましょう」
「風呂の薪にできそうだ」
「そうですね、その方がいいかもしれません」
 その中からガルディがあるものを引っ張り出した。
「こりゃなんだ。気味の悪い物があるぞ」
「ええ、それだけは別に燃やしましょう。呪いの人形かもしれません。風呂の薪にするのも気味が悪いですね」
 薄汚れた人形だ。
 体長七十センチほどの薄汚れた人形。
 血の色にも似た赤い帽子を被り、赤いドレスを身にまとっている。顔の部分は泥でできているのかひび割れて、ところどころ欠けて、まるでミイラのようだが不気味に薄ら笑っている。胴体は藁を固めて作ってあるようで火を付ければ簡単に燃え尽きそうだ。
「ガルディさん、落ち葉と枯れ枝を集めておいてください。ランプの火を持ってきます」
「お前、結構人使い荒い奴だな。お前の魔法でぱぱぱっとやりゃいいじゃねえか」
 エルンがランプの火を持ってくると、ガルディは言われたとおりに落ち葉と枯れ枝を集めていた。
 落ち葉に火を付けるとすぐに火は大きくなった。
 ガルディが人形を火の中に投げ入れる。
 すると「ギャー」と悲鳴が上がった。
「なんだ?」
「誰かが叫んだんです。どこかで人が助けを求めているようですよ」
「この人形じゃねえのか」
「まさか……」
 エルンは人形を棒で火の中へ押し込んだ。
 すると再び「アチアチ……熱いじゃねえか」の声。
「この人形のようです」
 ガルディが人形を火の中から摘まみ上げた。
「この人形生きてるぞ? どうりで気持ちが悪いと思った。どこかへ捨ててこようか?」
「ガルディさんが堀った穴に埋めましょう」
「バカ者。いい加減にしろ」
 人形が喋った。
 ガルディが人形を投げ捨てた。
「切り刻んでやる」
 ガルディは剣を抜いた。
「バカ者、やめろ。丁寧に扱え」と人形。
 ガルディが一歩近づいた。
「お前はなんだ」
「その前に、そこの小僧、お前、解除魔法を使えるな。封印を解いてくれ。解いてくれたらお前の望みをひとつ叶えてやる」
「騙されるな、エルン。どうせよからぬことを仕出かして封じ込められたんだ。魔物かもしれん」
「とんでもない誤解です。私は良い魔法使いです。今世紀最強の善良な魔法使いですよ。ホホホ」
「ガルディさん、信じていいですか」
「ダメだ。こんなやつの話を信じるんじゃないぞ。お前は人がいいから」
「しかし、このままじゃ……」
「だってそうじゃないか。今世紀最強の魔法使いがこんな人形に封じ込められるなんて考えられるか? 間抜けもいいとこだ」
「いろいろ事情があるんだ。とにかく、封印を解いてくれ」
「信用することはできん。封印を解いた直後、食われちまうかもしれん。しばらくそのまま様子を見た方がいい。紐をつけて木に吊るしておけばいい」
「そうですね」
「お前たち、七代先まで祟りがあるぞ」と人形。
「ほら、あんなこと言ってるぞ」
「いや、冗談ですよ。カッとすると冗談を言う癖があるんですよ。だから……はやく解いて、お願いよ」
「どうしましょうか」
「頼むから今すぐ封印を解いてくれ。お前ならできる。百二十年待ったんだ」
「百二十年ですか。だったら少しくらい伸びるのは我慢できるでしょ」
「できないんだよ。もう我慢の限界なんだよ。ずーっと暗い納屋の中で誰かが来るのを待ってたんだ。ようやく解除できるお前が来てくれたんだ。できるでしょ、ボクちゃんなら」
「できるかもしれませんが。悪さをしないでしょうね」
「当たり前だ。約束する」
「そんな約束あてになるか。裏切られて命を失った者を俺は三千人知っている」
「でも、このままじゃかわいそうです」
「そうでしょ。私、かわいそうでしょ。だから……」
「……しょうがないですね」
「いいのか。俺は知らんぞ。お前は人が良すぎる。そこが欠点だ」
 エルンは人形を前にすると手を翳した。
 封印の魔力を感じ取るとそれに対する負の力を注ぎ込んだ。
 すると、淡い光が人形を包み込んだ。
 かと思うとそこから赤い光が飛び出し、それがやがて大きくなり人の形となった。
 赤い大きなウイザードハットを被り赤いドレスに身を包んだ美しい女性だった。しかし、目は氷のように冷たい。
「おお、すごいぞ坊主。さすが私が見込んだだけのことはある。取りあえず感謝する」
 すると女はニヤッと笑った。
「坊主、甘いな。私はイルザ・ドルンヘルツ。名前を聞いてからの方がよかったかもしれないな。今となってはもう遅い」
「聞いても知らないです……。ガルディさん知ってますか」
「知らんが邪悪な魔法使いであることは間違いなさそうだ」
「私が蘇ったことを公にされては困るからね。ここでお前たち二人には死んでもらう」
「約束が違うんじゃないでしょうか、イルゼさん」
「イルザだ。……約束? なにそれ。忘れちゃった」
「エルン、だから言っただろ。こいつ最悪の魔女だぞ」
「いまさら気付いても遅いわよ。私は歴史に名を遺す最悪最強の魔女、イルザ・ドルンヘルツ」
「だから知らないって……勉強不足でごめんなさい」
「もういいわよ。……二人とも、消滅しなさい。これが最強の攻撃魔法ブランド・ブリッツ……」
 イルザは二人に向かって右手を差し出すと躊躇いもなく攻撃魔法を放った。
 ???
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