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カイウスの話12
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ローズはそれから口を閉ざしたままで、俺がそんな事を言うとは思っていなかったのだろう。
別にエーデルハイドを離れても、任命された騎士団長の仕事はちゃんとやる。
ただのカイウスになって、ライムとのんびり過ごすのもいいだろう。
そして、やはり俺が信じていた通りライムは何も悪くはなかった。
ローズは真相を知っても、ローベルトの兵士を屋敷に招き入れたという疑いは晴れていないと完全に白になるまで謝る気はないそうだ。
ローズはライムを傷付けたんだから謝らせたいが、ライムが何処にいるのか探すのが先だ。
ライムが落ちた筈の地面をくまなく探す、この高さから落ちてすぐに動けるなんて考えにくい。
草を掻き分けてライムに繋がる証拠が一つでもないかと探していたら、なにかが飛び出してきた。
それを目で追い、手を伸ばしてキャッチすると飛び出してきたものの正体が分かり手を離した。
精霊が隠れていたようで、悪かったと詫びを入れていたら俺の服の袖を掴んで引っ張っていた。
俺を何処かに連れて行こうとしているのか?ここにいたのならライムの居場所を知っているかもしれない。
「君はライムを知っているのか?」
精霊は一瞬だけ俺の方を振り返り、引っ張る事に専念していた。
来れば分かる、そう言われているようで大人しく精霊の後を付いて行った。
結構な距離を歩いて、ライムは本当にこの先にいるのか不安になっていく。
そこで、俺は見慣れた森の前にいる事に気付き精霊が森の中に入っていくのを眺めていた。
ここは俺とあの子の思い出の場所だ、ライムとは関係ない筈なのに何故心がこんなにざわつくのだろうか。
一歩踏み出すと、弾かれたように歩き続けて森の中に入った。
精霊は森の前まで道案内してくれたが、もう何処に行ったのか分からなくなる。
でも俺は惹かれるように、行く道に迷いは一切なくそこにむかった。
目指すは俺の人生を変えた、あの出会いの場所…今更あの子とどうかなるつもりはない。
ただ、一言だけ…感謝の言葉を伝えたい…ライムと出会うまでの間、俺の心の支えになってくれてありがとうと…
近くまで行くと、歌が聞こえた…あの子の歌だ…俺が間違える筈はない。
そして、俺はあの子を見つけてとても驚いていたがすぐに納得した。
俺は、最初から今までずっと気持ちは変わらなかったんだな。
俺が好きだったあの子は、今は俺が全てを捨てても守りたい存在だ。
美しい歌を奏でるライムに、心を奪われて愛しげに見つめた。
でも、何故だか悲しい感じがする歌だ…今のライムの心を歌っているのか?
歌い終わると、ライムは精霊と話していたから俺もライムのところに向かった。
「ありがとう、俺は大丈夫だよ…ただ一つだけお願いを聞いてくれる?カイウスのところに行ってマリーがどうなったか教えてくれる?」
「その必要はない」
ライムはメイドの事が心配で精霊に伝言を頼んでいた、伝言なんてしなくても俺はここにいる。
俺と目が合ったライムは、俺がここにいるのが不思議なのか呆然としていた。
精霊達がライムをここまで運んだのだろう、服に地面に当たった時の土が付いていない。
ライムに会えた喜びで、少しだけ足を速めて包み込むように抱きしめた。
もう離さない気でいたが、すぐにライムに肩を押されて簡単に距離が出来る。
何故ライムは俺を拒絶するんだ?ライムがいなくなる前にも腕を伸ばしたが掴んではくれなかった。
悲しい歌が関係しているのだろう、ライムの悲しみを俺が取り除きたい。
「カイウス、俺はマリーさんを傷付けたんだ…優しくしないでくれ」
「何をしたんだ?」
「…ぺ、ペンで刺したんだ…マリーさんの肩を…」
ライムの手が震えている、とても怖かったんだな…傍にいてやれなくてごめん。
またライムが逃げそうだったからしっかりと手を掴んで、指を絡めた。
あれは事故だと言うとライムは机からペンを掴んで刺したんだと言った。
握っていない方の手に視線を向けると、いろいろと納得した。
ライムが持っているものは俺が幼少期の頃に作った花のブレスレットだった。
あの子のために作ったものだ、ライムのものだから持っていっても構わないがこれのせいで勘違いしているんだな。
俺はパニックを起こしてまだ気付いていないライムの前にブレスレットをずっと握っている手を見せた。
「あのペンは机に置いていない、机にあったのはこれだ」
ライムはやっと自分が何を持っていたのか気付いたみたいだった。
でも気持ちが晴れていないライムに、自分のせいじゃなくてもメイドが心配なのだろう。
それは分かるし、ライムの優しさでいいところだが…ライムの頬に触れる。
少しでも早くライムが他の奴を気にしないように、真実を話した。
やっとライムから緊張が少し解けて、安心していた…俺も別の意味で安心した。
ローズの話もして、俺はやっぱりローズはライムを傷付けたとライムが許すなら代わりに俺が殴ろうか聞いてみた。
ライムは俺をギュッと抱きしめて止めるから、ローズへの怒りが吹き飛んだ。
あんな事をして謝らないローズを許すなんて、ライムは天使か?…いや、俺の嫁だ。
ローズの事はほっといて、俺はライムから花のブレスレットを取りライムの腕を掴んだ。
昔ライムが俺を手当てしてくれた、この手に今…贈り物をしよう。
「これ…」
「ライムのために作ったんだ、渡しそびれたものだ」
悪魔の紋様に口付けをすると、ライムはまだちょっと気にしているのかびっくりしていた。
俺は暴走しない、だってライムと過ごすこの幸せなひと時を自ら壊すわけないだろ?
俺はライムの全てを受け入れる、だからライムも俺の全てを知ってくれ。
自然と引き寄せられていき、口付けを交わす…遠回りだったけどやっと俺達は結ばれるんだ。
言葉ではまだ好きだと言われた事はないが、拒まない事がライムの答えだろう。
深い口付けを終わり、名残惜しそうに少し離れるとライムの腰を軽く引き寄せた。
「ライム、今からお前を抱く…最後までするけどいいか?」
「…うん、これが俺の気持ちだから」
そして俺はライムと最高な時間を共に過ごして、想いをより深めた。
別にエーデルハイドを離れても、任命された騎士団長の仕事はちゃんとやる。
ただのカイウスになって、ライムとのんびり過ごすのもいいだろう。
そして、やはり俺が信じていた通りライムは何も悪くはなかった。
ローズは真相を知っても、ローベルトの兵士を屋敷に招き入れたという疑いは晴れていないと完全に白になるまで謝る気はないそうだ。
ローズはライムを傷付けたんだから謝らせたいが、ライムが何処にいるのか探すのが先だ。
ライムが落ちた筈の地面をくまなく探す、この高さから落ちてすぐに動けるなんて考えにくい。
草を掻き分けてライムに繋がる証拠が一つでもないかと探していたら、なにかが飛び出してきた。
それを目で追い、手を伸ばしてキャッチすると飛び出してきたものの正体が分かり手を離した。
精霊が隠れていたようで、悪かったと詫びを入れていたら俺の服の袖を掴んで引っ張っていた。
俺を何処かに連れて行こうとしているのか?ここにいたのならライムの居場所を知っているかもしれない。
「君はライムを知っているのか?」
精霊は一瞬だけ俺の方を振り返り、引っ張る事に専念していた。
来れば分かる、そう言われているようで大人しく精霊の後を付いて行った。
結構な距離を歩いて、ライムは本当にこの先にいるのか不安になっていく。
そこで、俺は見慣れた森の前にいる事に気付き精霊が森の中に入っていくのを眺めていた。
ここは俺とあの子の思い出の場所だ、ライムとは関係ない筈なのに何故心がこんなにざわつくのだろうか。
一歩踏み出すと、弾かれたように歩き続けて森の中に入った。
精霊は森の前まで道案内してくれたが、もう何処に行ったのか分からなくなる。
でも俺は惹かれるように、行く道に迷いは一切なくそこにむかった。
目指すは俺の人生を変えた、あの出会いの場所…今更あの子とどうかなるつもりはない。
ただ、一言だけ…感謝の言葉を伝えたい…ライムと出会うまでの間、俺の心の支えになってくれてありがとうと…
近くまで行くと、歌が聞こえた…あの子の歌だ…俺が間違える筈はない。
そして、俺はあの子を見つけてとても驚いていたがすぐに納得した。
俺は、最初から今までずっと気持ちは変わらなかったんだな。
俺が好きだったあの子は、今は俺が全てを捨てても守りたい存在だ。
美しい歌を奏でるライムに、心を奪われて愛しげに見つめた。
でも、何故だか悲しい感じがする歌だ…今のライムの心を歌っているのか?
歌い終わると、ライムは精霊と話していたから俺もライムのところに向かった。
「ありがとう、俺は大丈夫だよ…ただ一つだけお願いを聞いてくれる?カイウスのところに行ってマリーがどうなったか教えてくれる?」
「その必要はない」
ライムはメイドの事が心配で精霊に伝言を頼んでいた、伝言なんてしなくても俺はここにいる。
俺と目が合ったライムは、俺がここにいるのが不思議なのか呆然としていた。
精霊達がライムをここまで運んだのだろう、服に地面に当たった時の土が付いていない。
ライムに会えた喜びで、少しだけ足を速めて包み込むように抱きしめた。
もう離さない気でいたが、すぐにライムに肩を押されて簡単に距離が出来る。
何故ライムは俺を拒絶するんだ?ライムがいなくなる前にも腕を伸ばしたが掴んではくれなかった。
悲しい歌が関係しているのだろう、ライムの悲しみを俺が取り除きたい。
「カイウス、俺はマリーさんを傷付けたんだ…優しくしないでくれ」
「何をしたんだ?」
「…ぺ、ペンで刺したんだ…マリーさんの肩を…」
ライムの手が震えている、とても怖かったんだな…傍にいてやれなくてごめん。
またライムが逃げそうだったからしっかりと手を掴んで、指を絡めた。
あれは事故だと言うとライムは机からペンを掴んで刺したんだと言った。
握っていない方の手に視線を向けると、いろいろと納得した。
ライムが持っているものは俺が幼少期の頃に作った花のブレスレットだった。
あの子のために作ったものだ、ライムのものだから持っていっても構わないがこれのせいで勘違いしているんだな。
俺はパニックを起こしてまだ気付いていないライムの前にブレスレットをずっと握っている手を見せた。
「あのペンは机に置いていない、机にあったのはこれだ」
ライムはやっと自分が何を持っていたのか気付いたみたいだった。
でも気持ちが晴れていないライムに、自分のせいじゃなくてもメイドが心配なのだろう。
それは分かるし、ライムの優しさでいいところだが…ライムの頬に触れる。
少しでも早くライムが他の奴を気にしないように、真実を話した。
やっとライムから緊張が少し解けて、安心していた…俺も別の意味で安心した。
ローズの話もして、俺はやっぱりローズはライムを傷付けたとライムが許すなら代わりに俺が殴ろうか聞いてみた。
ライムは俺をギュッと抱きしめて止めるから、ローズへの怒りが吹き飛んだ。
あんな事をして謝らないローズを許すなんて、ライムは天使か?…いや、俺の嫁だ。
ローズの事はほっといて、俺はライムから花のブレスレットを取りライムの腕を掴んだ。
昔ライムが俺を手当てしてくれた、この手に今…贈り物をしよう。
「これ…」
「ライムのために作ったんだ、渡しそびれたものだ」
悪魔の紋様に口付けをすると、ライムはまだちょっと気にしているのかびっくりしていた。
俺は暴走しない、だってライムと過ごすこの幸せなひと時を自ら壊すわけないだろ?
俺はライムの全てを受け入れる、だからライムも俺の全てを知ってくれ。
自然と引き寄せられていき、口付けを交わす…遠回りだったけどやっと俺達は結ばれるんだ。
言葉ではまだ好きだと言われた事はないが、拒まない事がライムの答えだろう。
深い口付けを終わり、名残惜しそうに少し離れるとライムの腰を軽く引き寄せた。
「ライム、今からお前を抱く…最後までするけどいいか?」
「…うん、これが俺の気持ちだから」
そして俺はライムと最高な時間を共に過ごして、想いをより深めた。
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