15 / 29
1st STAGE ~Eternal Echoes~
第15話【赤い翼】前編
しおりを挟む
────────────────――――
秋の音楽室で、二人の音が静かに響き合う。
怜からの赤いプレゼントが、彩花の音に新しい翼を与える瞬間。
二人の絆が夕陽の中で輝き、新しい旋律が生まれる。
切なく温かな一章が、いまここに始まる――
────────────────――――
・音楽室の聖域:響き合う絆・
10月中旬、霧咲高校の音楽室は夕暮れの茜色に染まる。
怜と彩花の聖域だ。
秋風が紅葉の桜並木をそよぐ中、怜のギターが繊細なアルペジオを爪弾き、彩花のキーボードが透明で温かなメロディを紡ぐ。
怜は彩花の制服姿と、メガネが夕陽に知的に光る姿に心がそっと揺れる。
彩花の音は秋の情景を呼び、優しく心に響く……
こんな音と一緒に音楽できるなんて……
彩花は鍵盤を見つめ、怜の緩めたネクタイとブレザーのカジュアルなスタイルに胸が温かく高鳴る。
怜のギターに心がそっと揺れる……
私、こんな音、怜と作れるなんて…… 幼い頃、母さんが弾く古いピアノの童謡に合わせて絵本をめくった。
あの音、物語のページみたいにキラキラしてた……ピアノ教室の堅いレッスンは苦手だったけど、母さんが『彩花の音は物語みたいね』って笑ってくれた。
その日から、音で心を解放するのが好きになった……
怜のギターも、なんだかそんな物語を紡いでるみたい……
告白の温もりと音楽室での時間が、彼女の心を希望で満たす。
・赤い翼のサプライズ・
ある日、怜は音楽室の隅に赤いボディのシンセサイザー「North Element3」を持ち込む。
10年落ちの中古品だが、インストゥルメンタルに最適な深みのある音色を持つプロ用機材だ。
怜は新しいギターの購入を諦め、CDショップのアルバイトで貯めたお金で、彩花の誕生日を祝うためにこれを選んだ。
彩花の才能を、もっと遠くへ飛ばしたい……
このシンセ、彼女の翼になる……
「彩花、これ見て……!」
前髪をかき上げ、照れながら笑う。
「彩花の音、もっと遠くに届けたくて…… これ、少し早いけど、誕生日プレゼント。North Element3、プロ用のシンセサイザーだよ。試してみない?」
彩花は目を丸くし、赤い筐体に触れる。
鮮やかな赤が夕陽に映え、心を掴む。
怜が私の誕生日を……?
この赤……私を飛ばしてくれる翼みたい……!
メガネを直し、興奮が胸を高まらせる。
「怜……これ、ほんとに……? 誕生日プレゼント……? すごい……!」
声が弾み、目を輝かせる。
シンセをアンプにつなぎながら、怜は優しく微笑む。
「彩花なら絶対すごい音になるよ。プリセットから試してみたら? 彩花の感覚なら、すぐにマスターできるって!」
彩花は深呼吸し、Element3の前に座る。
無数のスライダーやコントロールノブが、まるで宇宙船の操縦席みたい……
指先が震える。
――これがプロの世界。怜が、私のために……
彩花はそっと鍵盤に触れた。
最初に響いたのは、温かみのあるエレクトリックピアノの音。息を吹きかけたように柔らかく、指のタッチに敏感に応える。
澄みわたったパッド音が広がり、ブラスは、奏者の息遣いまで感じられるリアルな響きで、胸の奥に直接染み込んでくる。
ロータリースピーカー……?
オルガンの音を試しながら、彩花は直感でスライダーを操作した。
低音の倍音が厚みを増し、心をゆさぶるうねりが加わる。フットスイッチを踏むと、揺らぎの速さが変わり、秋風が渦を巻くように音がうねる。
KASHIMA TONEの平板なオルガンとは違う――この音は、息をしている。
彩花は目を閉じた。
口元に、天使のような微笑みが自然に浮かぶ。
パッド音をレイヤーで重ね、コーラスを深くかける。
彩花は感覚だけで、新しい音の世界を切り開いていく。
怜は息を呑んで見つめていた。
何も教えていないのに――彩花は、まるでこのシンセを何年も使い続けてきたように、自由に、鮮やかに、音を紡いでいる。
天才だ……、こんな天才、本当にいるんだ……
彩花は微笑みを浮かべたまま、ゆっくり目を開けた。
怜の視線を感じ、頬をほのかに染める。
「このシンセ……怜のギターと一緒に演奏したら…… 私たちの音、もっと遠くまで届くよね?」
彼女の指が再び動き、紅葉の森を思わせる即興のハーモニーが音楽室を満たす。
夕陽が二人の影を長く伸ばし、新しい音が、静かに、確かに、未来を予感させた。
────────────────――――
・次回予告 第16話【赤い翼 後編】
怜の贈り物は、彩花の翼になった。
二人の音が重なり、新たな旋律が世に解き放たれるとき、彩花は懐かしい記憶を呼び覚ます…… 次回「赤い翼 後編」へ続く。
・読者の皆さまへ
彩花の誕生日プレゼント、怜の想いが込められたシンセ。
この赤い翼が、彩花の音をどこまで飛ばすのか……
続きもぜひ、ご一緒にお待ちください。
────────────────――――
秋の音楽室で、二人の音が静かに響き合う。
怜からの赤いプレゼントが、彩花の音に新しい翼を与える瞬間。
二人の絆が夕陽の中で輝き、新しい旋律が生まれる。
切なく温かな一章が、いまここに始まる――
────────────────――――
・音楽室の聖域:響き合う絆・
10月中旬、霧咲高校の音楽室は夕暮れの茜色に染まる。
怜と彩花の聖域だ。
秋風が紅葉の桜並木をそよぐ中、怜のギターが繊細なアルペジオを爪弾き、彩花のキーボードが透明で温かなメロディを紡ぐ。
怜は彩花の制服姿と、メガネが夕陽に知的に光る姿に心がそっと揺れる。
彩花の音は秋の情景を呼び、優しく心に響く……
こんな音と一緒に音楽できるなんて……
彩花は鍵盤を見つめ、怜の緩めたネクタイとブレザーのカジュアルなスタイルに胸が温かく高鳴る。
怜のギターに心がそっと揺れる……
私、こんな音、怜と作れるなんて…… 幼い頃、母さんが弾く古いピアノの童謡に合わせて絵本をめくった。
あの音、物語のページみたいにキラキラしてた……ピアノ教室の堅いレッスンは苦手だったけど、母さんが『彩花の音は物語みたいね』って笑ってくれた。
その日から、音で心を解放するのが好きになった……
怜のギターも、なんだかそんな物語を紡いでるみたい……
告白の温もりと音楽室での時間が、彼女の心を希望で満たす。
・赤い翼のサプライズ・
ある日、怜は音楽室の隅に赤いボディのシンセサイザー「North Element3」を持ち込む。
10年落ちの中古品だが、インストゥルメンタルに最適な深みのある音色を持つプロ用機材だ。
怜は新しいギターの購入を諦め、CDショップのアルバイトで貯めたお金で、彩花の誕生日を祝うためにこれを選んだ。
彩花の才能を、もっと遠くへ飛ばしたい……
このシンセ、彼女の翼になる……
「彩花、これ見て……!」
前髪をかき上げ、照れながら笑う。
「彩花の音、もっと遠くに届けたくて…… これ、少し早いけど、誕生日プレゼント。North Element3、プロ用のシンセサイザーだよ。試してみない?」
彩花は目を丸くし、赤い筐体に触れる。
鮮やかな赤が夕陽に映え、心を掴む。
怜が私の誕生日を……?
この赤……私を飛ばしてくれる翼みたい……!
メガネを直し、興奮が胸を高まらせる。
「怜……これ、ほんとに……? 誕生日プレゼント……? すごい……!」
声が弾み、目を輝かせる。
シンセをアンプにつなぎながら、怜は優しく微笑む。
「彩花なら絶対すごい音になるよ。プリセットから試してみたら? 彩花の感覚なら、すぐにマスターできるって!」
彩花は深呼吸し、Element3の前に座る。
無数のスライダーやコントロールノブが、まるで宇宙船の操縦席みたい……
指先が震える。
――これがプロの世界。怜が、私のために……
彩花はそっと鍵盤に触れた。
最初に響いたのは、温かみのあるエレクトリックピアノの音。息を吹きかけたように柔らかく、指のタッチに敏感に応える。
澄みわたったパッド音が広がり、ブラスは、奏者の息遣いまで感じられるリアルな響きで、胸の奥に直接染み込んでくる。
ロータリースピーカー……?
オルガンの音を試しながら、彩花は直感でスライダーを操作した。
低音の倍音が厚みを増し、心をゆさぶるうねりが加わる。フットスイッチを踏むと、揺らぎの速さが変わり、秋風が渦を巻くように音がうねる。
KASHIMA TONEの平板なオルガンとは違う――この音は、息をしている。
彩花は目を閉じた。
口元に、天使のような微笑みが自然に浮かぶ。
パッド音をレイヤーで重ね、コーラスを深くかける。
彩花は感覚だけで、新しい音の世界を切り開いていく。
怜は息を呑んで見つめていた。
何も教えていないのに――彩花は、まるでこのシンセを何年も使い続けてきたように、自由に、鮮やかに、音を紡いでいる。
天才だ……、こんな天才、本当にいるんだ……
彩花は微笑みを浮かべたまま、ゆっくり目を開けた。
怜の視線を感じ、頬をほのかに染める。
「このシンセ……怜のギターと一緒に演奏したら…… 私たちの音、もっと遠くまで届くよね?」
彼女の指が再び動き、紅葉の森を思わせる即興のハーモニーが音楽室を満たす。
夕陽が二人の影を長く伸ばし、新しい音が、静かに、確かに、未来を予感させた。
────────────────――――
・次回予告 第16話【赤い翼 後編】
怜の贈り物は、彩花の翼になった。
二人の音が重なり、新たな旋律が世に解き放たれるとき、彩花は懐かしい記憶を呼び覚ます…… 次回「赤い翼 後編」へ続く。
・読者の皆さまへ
彩花の誕生日プレゼント、怜の想いが込められたシンセ。
この赤い翼が、彩花の音をどこまで飛ばすのか……
続きもぜひ、ご一緒にお待ちください。
────────────────――――
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
