ブラックな国は最強レベルアップで滅ぼそう~5人の仲間と異世界に!ゴブリン男とバカにされただ一人追い出された先のダンジョンが何気にチートだった

ギフト

文字の大きさ
9 / 17

09 元仲間 救えるのか?女神の魅惑に抗うアイリ

しおりを挟む
 異世界から召喚された俺は女神からゴブリン野郎の烙印を押され、あっさりと追放された。

 一緒に召喚された5人の仲間は王宮で過ごしていた。
 大賢者ハルト、聖騎士リューイチ、大聖女アイリ、大魔術師ミサキ、テイマーイチカの5人、全員それなりに卓越した力を持っている。

 この世界の人達と比べたらかなり高いステータスのようだけど、5人は多かれ少なかれ女神の魅惑の影響を受けていたので、理不尽な扱いにも逆らえず最悪の状況へとどんどん流されていった。

 ところが、大聖女アイリは元々持っていた状態異常耐性が強力な魅惑に晒されることで特別な反応をした。しばらく時間がかかったものの耐性を得ることができたのだ。
 新規で魅惑耐性というスキルを得た。

 「えっ ? これって !? イタタタッ !!」

 魅惑の耐性を得るとハッと我に帰った。
 頭がモヤッとしてガンガンと痛み、過ぎた時間の記憶を整理すると、召喚されてから今までのことを思い出した。
 自分の経験したことだというのに、なにかYチューブか映画でも見ていたような感じだ。
 記憶が残っていたのはありがたかったが、色々と残念な行動が多く、その中でもケンタローが追放された事が悔やまれた。

 仲間を助けられなかった事を悔しく思った。しかし、自分達が正常だったとしても助けられたかどうかは解らないとも思った。あの場は完全に支配されていたからだ。

 同室のイチカとミサキは魅了されたままだ。それを解く方法は大聖女の能力をもってしても解らなかった。できることは隙をついて少しずつ話し掛けることぐらいだった。ただ、女神から距離を置くと魅惑は少し和らいだように感じた。

 魅惑されたフリをし続けるのも、いつまでバレずにいられるか分からない。
 とても厳しい状況でケンタローには悪いけれど、仲良しのイチカとミサキ、そして顔見知りの男子二人が身近に居るのは心強かった。
 
 

 
 翌日
 常にそばにいるメイドというよりも世話係が随分早くに起こしに来た。
 「起床の時間です目を覚まして下さい !」

 雑に起こされて、ササッと顔を洗わされ、歯を磨かされ、すぐに腹に入れられる物を食べさせられて、急いで研修する部屋へ連れられた。

 毎朝、時間にゆとりを持って、朝食後のティータイムと読書の30分を楽しんでいたアイリには苦悩でしかなかった。

 それとは逆に、毎朝、ギリギリまで寝て、30分で身仕度して朝ご飯を掻き込んで、コーヒーまですすって目を醒ましてから出掛けるイチカには苦悩は全然無かった。むしろ、ありがたかった ! 

 午前中は女神様も同席で、この国のあらましと一般教養、質疑応答も受け付けた。そもそもこちらは魅了されている身なのだから質問といったところで意味はない気がする。一応バレないように無難な受け答えをしておいた。
 それよりも女神がハルトとリューイチを侍らせる姿にアイリは眉をひそめた。

(どうやらとんでもなくヒドい女神のようね ! いけない、いけない。顔に出さないようにしなくちゃ)
 
 午後からは武術の指導を受けることになった。
 ステータスやスキルの面で優秀なハルトとリューイチはかなり良い線を行っていたんだ。一般の衛兵では模擬戦の相手にならない程だった。

 戦闘の経験など全く無い、普通の学生だった二人なのにスゴい動きを見せるのでアイリはとても驚いていた。それに比べると女子はそれほどでも無かったんだ。アイリとイチカはそれなりに対応できたものの、ミサキは壊滅的だった。

 その後、魔術の指導を受けた。
 魔術の出来はハルトとアイリが抜群でリューイチとミサキはボチボチ、イチカはイマイチだった。

 ミサキは大魔道師だというのに、レベルの低さが足を引っ張ってそんなに良いところは見られなかった。それだけに印象はかなり悪かった。初日の出来を見て既に女神はハルトとリューイチとアイリは優秀。ミサキは使えないという評価をしていたのだった。

 アイリ以外の四人は魅惑に支配されていて、順調に黙々と研修は進められた。
 傀儡のように従わされる4人の姿はヒドく気味が悪かった。

 そしてその翌日には城から出て、町の様子を見ることができた。美しい町だった。そのまま町の外へ出て戦闘訓練が行われた。

 それには当然女神も同行したんだ。又々当然のようにハルトとリューイチを左右に侍らせていた。ロックオン状態なのだ。

 二人はずっと女神の近くにいるので魅惑がしっかり効き、かなり彼女に気持ちが傾いているように見えた。まるで恋人のように見える。

 「ハルトには負けないからな !」
 「勝ち負けよりも、安全重視だろ ? 慣れるまで、慢心は禁物だよ !」

 二人が競うように魔物を倒していくので、女子が活躍する場はほとんど無かった。
 初日は弱い敵ばかりでレベルはあがらず、二日目に少し強い敵を倒し、ハルトとリューイチはひとつずつレベルが上がった。
 
 5人ともそれなりに、レベルが高くって上がりにくいようだ。
 一番レベルが高いのはハルトが62、次がリューイチの55。

 このクラスだと簡単にはレベルが上がらないモノなんだ。ゴブリンだと1万匹倒しても上がるかどうか判らないからね。

 女神の魅了から脱したアイリは強い自我を見せず静かにして、掛かった振りをしていた。賢明な判断だといえるだろう。女神と目が合うとヒヤッとしたけど今のところばれていないようだった。

 どうにかして仲間の魅了を解きたいけれど、今のところアイリに手段は無い。

 イチカとミサキが女神と接する時に「わたくしの方が女神様を崇拝しています」等と言って、自分が矢面に立つことで彼女達を少しでも遠ざけたのだ。

 女神の魅惑に抗うのは凄くキツくて、頭痛や倦怠感に襲われて吐き気がするほどだったけど、友人を救う為にできることは何でもしたかった。
 ハルト達には悪いけど、女神が男子に掛かり切りなのは都合が良かった。

 心のなかで謝りながらも、女神に鼻の下を伸ばしてデレデレしている男子の姿を見るとちょっとだけイラッとして、自業自得じゃない ? と思ってしまう、思春期の女子だった。


 ところがその日の夜
 「あれっ ? わたし…… ? 痛タタタッ !!」

 アイリの必死な対応が功を奏してか、イチカが魅了から離脱し頭痛を訴えたのだ。

 「ああ、良かったね !」

 アイリは泣き叫びたい程に嬉しかったけど、周りを見渡し監視の目を確認したので、軽く包容して耳元で囁いた。

 「ずっと女神に魅了されていたのよ ! 監視の目があるから普通にしててね♡」

 「うっ、うん、分かった ! アイリ、面倒掛けてゴメンね !」

 「ううん、イチカが目覚めて泣きそうなくらい嬉しいよ ! 取り乱したりしちゃダメだから、冷静に、落ち着いて、バレないようにするから…… 」

 そして、アイリとイチカの二人で語り続けると、翌日になってミサキも脱することができた。二人とも、喜びを押し殺して冷静にミサキに説明した。三人は夜になって、女子の部屋に入ってから、やっと静けさの中で密かに女子全員の回復を祝った。

 魅了から脱し、立ち直った彼女達はそれを悟られることなく上手く相談して協力し合った。
 元々そこそこの仲良しで親友というほどでは無かったけれど、そんな困難を乗り越えることで三人の絆は強くなっていった。

 

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

処理中です...