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3 手に取るようにわかるパターン
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「君は......本当に記憶がないのか」
アーサーは全身から血の気が引いたように顔色が悪くなり、声も掠れて、どうしたらいいのかわからない表情になっている。
仕方ないわねえ。
頭が悪いだけで、根は悪くないのかしら?
反対する両親を宥め、一旦、アーサーを応接室に招き座らせる。
そして、私は静かにナタリーが入れたお茶を飲んでいた。
「全くごさいません。先ほど目覚めて、なんだったら、知らないあなたの突撃のせいで、医師の診察も受け損なってますのよ。」
だが、こういう所作は体が覚えている。
このクズ男の隣に立つために必死に訓練した動き───
記憶にはないけど...
「ねえ、ナタリー、私はこの男を好きだったのかしら?」
「いえ、王子という以外取り柄がないと申しておりました」
そのナタリーの言葉に私は頷く。
だが第三者から聞かされる言葉は衝撃なのか?
アーサーは、目を見開き、呆然としている。
おかげで会話すらしばらくなく、空気は固まり、ピンと張り詰めてしまった。
私は、再度アーサーを見つめて諭すように話す。
「納得いただけて?あなたに縋る理由がなくてよ。多分なんですけど、あなたから婚約破棄をされてショックで倒れたのではなくて、そこで何かがあったのではないかと思っているの」
「なら、そのようにご両親に説得してくれないか?じ、実は、自分の両親には、まだ話をしていない。」
アーサーは、額に汗を流す。
「そんなに焦るなら先に自分の両親を説得したらよかったのに。どうしてあなたは考えなし......そう私は普段からあなたに言っていなかった?」
「そうだ。君は私を認めようとしなかった」
わたしは、少し考えをまとめてみることにする。
何でこんな男に注意していたのかしら?
「恐らくですけど...キャサリンは王子だから...ではなくて、王子だからこそあなたに厳しい言葉をかけていたのでは?」
私は眉を悲しそうに下げてアーサーに語った。
極悪令嬢なんていわれて、やりたくもないマナーを身につけて、このクズ男は運命の愛に溺れる。
コレはダメよ。
「多分...ですわよ。だって記憶にないのですから。でも、記憶にない私でも分かりますわ。夫になる人が短絡的で、それが国を背負うとなると...」
自分で何とかしようと思ってない他力本願型だから、注意したって逆恨みしたんでしょうね。
まあ、とりあえず、このバカに最後通牒を突きつけましょ。
「あなたがやった行為は公衆の面前でしなければならなかった事なの?明らかに、キャサリンを傷つける行為じゃない。キャサリンの人間性は分からないけど、少なくともあなたのために所作は身につけていたみたいよ。記憶がないのに、体が勝手に動くんだもの」
アーサーの手は、私からそう言われて、じっとわたしの動きを見た。そして、ハッと気づいたように、膝の上で震えている。
というよりも、本当に、私の両親と王家のパワーバランスを考えてなぜ動かなかったのかしら?
「俺は...君に対しても、彼女に対しても、不誠実になりたくなかったんだ」
は?
どの口がそれを言う?
「で、公衆の面前で...そう行動することが、誠実だと思われたわけね?」
「.......」
肩を落とし、完全に落ち込んでいるアーサー。
あらあら、これは地雷を踏んだかしら?
ふうん、これはアレね。
「その運命の愛の相手からは、あなたは素晴らしい人だわ。あなたの頑張っている姿をいつも私は見ていました。キャサリン様ってばひどい。私がキャサリン様の立場なら、こんなに落ち込んでいるアーサー様をお一人にしないのに......とか言われたんじゃなくて?」
アーサーがギョッとした顔で、再び私に叫ぶ。
「キャサリン、お前やっぱり記憶にあるんだろ!」
私は露骨に嫌な顔をした。
「全くないから困ってるの。ただ、私には私ではないような記憶があるのよ。それによると、リリーのようなパターンはそんなパターンばかりなのよね。
でも、キャサリンは多分だけど本当にあなたと結婚する気だったんだと思うわ。だって、あなた腐っても王子なんでしょ?他人なら、無難に綺麗な事を言っておけばいいじゃない。でも夫なら困るわよね」
「困る.....」
「そう、困るの。短絡的に国のことを決められたら、尻拭いはキャサリンやその周りがするのよ。それは、本当に夫として支える気はあったんでしょうね。」
「だ、だが、私には真実の愛が!」
「ああ、誤解しないでちょうだい。ぜひともあなたとその真実のリリーの恋が報われるように祈っているわ。」
わたしは、冷ややかな目で、アーサーを捉える。
どうやら、キャサリンはそんな目をしたことがないのだろう。衝撃を受けたような顔をして、わたしを見つめ直す。
「だって、いつキャサリンの記憶が戻るか分からないのよ。少なくとも、わたしはキャサリンみたいにあなたを支えたくないの。くたばって欲しいとは思っているけどね。あなたと婚約破棄をできて、あなたに兵糧攻めと経済封鎖を行えるんですもの。」
そしてこのおめでたい頭に、社会的鉄拳をくらわせてやるわ。
「リ、リリーを見てくれたら分かる。リリーは心優しく、俺のことを気遣ってくれる優しい女性なんだ。そんな浮気とか裏心もない。ただ、俺が不誠実になりたくなくて、まずは君と婚約解消して付き合いを申し込みたいと思った。みんなの前でやったことは、間違っていたかもしれない。でも、本当にそれだけなんだ」
「それだけ...だけ...ね。浮気をする男は、また繰り返すわよ。
アーサーはわなわなと震えていた。
「恐らくですけど、あなたはリリーっていう女から更にこういわれたんでしょ。
アーサー様には、キャサリン様がいるから......と泣かれ、みんなが婚約者ではないとハッキリ理解してくれる状況にならないとお付き合いは無理と言われた...」
「み、見てたのか!」
わたしは、はぁーっとため息をつく。
もう少しテンプレのバリエーションが欲しいところですわね。
「公衆の面前で振るなんて勿論論外ですけど、公衆にわかるようにキャサリンに婚約破棄を迫ることも同じでは?そして、それをそれだけだと言える頭の悪さ...わたしはここで退場しますけど、王家も大変だこと」
アーサーの顔色がさーっと変わっていく。
なんか、こっちが意地悪しているみたいじゃないの
とはいえ、記憶が戻らないのは困るわ。
せっかくだからリリーを見てみましょうかね。
「わかりました。リリー様を見に行きましょう。ただし、私が記憶にその手のパターンの女がしそうなことを全部伝えますから、それを一緒に確認してくださいませ。」
わたしはキッパリ、アーサーに告げた。
アーサーは全身から血の気が引いたように顔色が悪くなり、声も掠れて、どうしたらいいのかわからない表情になっている。
仕方ないわねえ。
頭が悪いだけで、根は悪くないのかしら?
反対する両親を宥め、一旦、アーサーを応接室に招き座らせる。
そして、私は静かにナタリーが入れたお茶を飲んでいた。
「全くごさいません。先ほど目覚めて、なんだったら、知らないあなたの突撃のせいで、医師の診察も受け損なってますのよ。」
だが、こういう所作は体が覚えている。
このクズ男の隣に立つために必死に訓練した動き───
記憶にはないけど...
「ねえ、ナタリー、私はこの男を好きだったのかしら?」
「いえ、王子という以外取り柄がないと申しておりました」
そのナタリーの言葉に私は頷く。
だが第三者から聞かされる言葉は衝撃なのか?
アーサーは、目を見開き、呆然としている。
おかげで会話すらしばらくなく、空気は固まり、ピンと張り詰めてしまった。
私は、再度アーサーを見つめて諭すように話す。
「納得いただけて?あなたに縋る理由がなくてよ。多分なんですけど、あなたから婚約破棄をされてショックで倒れたのではなくて、そこで何かがあったのではないかと思っているの」
「なら、そのようにご両親に説得してくれないか?じ、実は、自分の両親には、まだ話をしていない。」
アーサーは、額に汗を流す。
「そんなに焦るなら先に自分の両親を説得したらよかったのに。どうしてあなたは考えなし......そう私は普段からあなたに言っていなかった?」
「そうだ。君は私を認めようとしなかった」
わたしは、少し考えをまとめてみることにする。
何でこんな男に注意していたのかしら?
「恐らくですけど...キャサリンは王子だから...ではなくて、王子だからこそあなたに厳しい言葉をかけていたのでは?」
私は眉を悲しそうに下げてアーサーに語った。
極悪令嬢なんていわれて、やりたくもないマナーを身につけて、このクズ男は運命の愛に溺れる。
コレはダメよ。
「多分...ですわよ。だって記憶にないのですから。でも、記憶にない私でも分かりますわ。夫になる人が短絡的で、それが国を背負うとなると...」
自分で何とかしようと思ってない他力本願型だから、注意したって逆恨みしたんでしょうね。
まあ、とりあえず、このバカに最後通牒を突きつけましょ。
「あなたがやった行為は公衆の面前でしなければならなかった事なの?明らかに、キャサリンを傷つける行為じゃない。キャサリンの人間性は分からないけど、少なくともあなたのために所作は身につけていたみたいよ。記憶がないのに、体が勝手に動くんだもの」
アーサーの手は、私からそう言われて、じっとわたしの動きを見た。そして、ハッと気づいたように、膝の上で震えている。
というよりも、本当に、私の両親と王家のパワーバランスを考えてなぜ動かなかったのかしら?
「俺は...君に対しても、彼女に対しても、不誠実になりたくなかったんだ」
は?
どの口がそれを言う?
「で、公衆の面前で...そう行動することが、誠実だと思われたわけね?」
「.......」
肩を落とし、完全に落ち込んでいるアーサー。
あらあら、これは地雷を踏んだかしら?
ふうん、これはアレね。
「その運命の愛の相手からは、あなたは素晴らしい人だわ。あなたの頑張っている姿をいつも私は見ていました。キャサリン様ってばひどい。私がキャサリン様の立場なら、こんなに落ち込んでいるアーサー様をお一人にしないのに......とか言われたんじゃなくて?」
アーサーがギョッとした顔で、再び私に叫ぶ。
「キャサリン、お前やっぱり記憶にあるんだろ!」
私は露骨に嫌な顔をした。
「全くないから困ってるの。ただ、私には私ではないような記憶があるのよ。それによると、リリーのようなパターンはそんなパターンばかりなのよね。
でも、キャサリンは多分だけど本当にあなたと結婚する気だったんだと思うわ。だって、あなた腐っても王子なんでしょ?他人なら、無難に綺麗な事を言っておけばいいじゃない。でも夫なら困るわよね」
「困る.....」
「そう、困るの。短絡的に国のことを決められたら、尻拭いはキャサリンやその周りがするのよ。それは、本当に夫として支える気はあったんでしょうね。」
「だ、だが、私には真実の愛が!」
「ああ、誤解しないでちょうだい。ぜひともあなたとその真実のリリーの恋が報われるように祈っているわ。」
わたしは、冷ややかな目で、アーサーを捉える。
どうやら、キャサリンはそんな目をしたことがないのだろう。衝撃を受けたような顔をして、わたしを見つめ直す。
「だって、いつキャサリンの記憶が戻るか分からないのよ。少なくとも、わたしはキャサリンみたいにあなたを支えたくないの。くたばって欲しいとは思っているけどね。あなたと婚約破棄をできて、あなたに兵糧攻めと経済封鎖を行えるんですもの。」
そしてこのおめでたい頭に、社会的鉄拳をくらわせてやるわ。
「リ、リリーを見てくれたら分かる。リリーは心優しく、俺のことを気遣ってくれる優しい女性なんだ。そんな浮気とか裏心もない。ただ、俺が不誠実になりたくなくて、まずは君と婚約解消して付き合いを申し込みたいと思った。みんなの前でやったことは、間違っていたかもしれない。でも、本当にそれだけなんだ」
「それだけ...だけ...ね。浮気をする男は、また繰り返すわよ。
アーサーはわなわなと震えていた。
「恐らくですけど、あなたはリリーっていう女から更にこういわれたんでしょ。
アーサー様には、キャサリン様がいるから......と泣かれ、みんなが婚約者ではないとハッキリ理解してくれる状況にならないとお付き合いは無理と言われた...」
「み、見てたのか!」
わたしは、はぁーっとため息をつく。
もう少しテンプレのバリエーションが欲しいところですわね。
「公衆の面前で振るなんて勿論論外ですけど、公衆にわかるようにキャサリンに婚約破棄を迫ることも同じでは?そして、それをそれだけだと言える頭の悪さ...わたしはここで退場しますけど、王家も大変だこと」
アーサーの顔色がさーっと変わっていく。
なんか、こっちが意地悪しているみたいじゃないの
とはいえ、記憶が戻らないのは困るわ。
せっかくだからリリーを見てみましょうかね。
「わかりました。リリー様を見に行きましょう。ただし、私が記憶にその手のパターンの女がしそうなことを全部伝えますから、それを一緒に確認してくださいませ。」
わたしはキッパリ、アーサーに告げた。
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