11 / 16
11◇怒りと悲しみと◇
しおりを挟む
「まぁ、ルンガ、大丈夫なの!?」
「あ、はは……平気……だよ」
母に尋ねられ答えたが、本当はちっとも平気じゃない。というか、エルメスに敵でも見るような目をされて畏縮する。
「おい、エルメス! ルンガ様に何をするんだ!」
「何って、あいつが勝手に僕に……僕の傷に触れてこようとしたから突き飛ばしただけだ」
「だからってつっぱねることはないだろう!?」
母の従者とエルメスがけんか腰にやりとりをしている。まずいと思った。俺は慌てて二人の間に入ろうとするが……。
「なぁ、エルメス。話を聞いてくれないか?」
「……話ですって? 僕は生憎、人の傷に無配慮に触れてくるような人と話す言葉を持ち合わせていませんので、これにて失礼致します」
さすがの俺も敬語でのその返しにかちんときた。
「通して下さい。僕はルンガ様を、ルンガ様の亡骸を探します」
「エルメス、ですからルンガはここに……」
「奥様、そんな奴はほっといてルンガ様の帰省祝いをしましょうよ」
場は混沌としていた。しかし、エルメスが強引に母の横を通り抜けてからは、急に静かになった。本当はすぐにでも追いかけて文句の一つでも言ってやりたい所だが、逆にあんな薄情者の顔を見たくも無いという気持ちもあって、俺はふてくされていた。
なんであんなに意固地なんだよ……!!
俺は、俺だったらきっと手放しで喜ぶのに。物語なら歓喜のシーンに違いない。
それをあいつは……頑なに俺がルンガであることを否定した。拒絶の色の強さに俺は今更に悲しくなった。
あんな奴、もう知るか!
きっとあれは何かの間違いだったんだ。俺は夢でも見ていたに違いない。エルメスという人間像を測り間違えていたのだ。そうに決まってる。
それから俺は屋敷に戻り、家族と久しぶりの再会を果たした。豪勢な食事が振舞われ、目一杯皆と笑った。俺は老人だった頃を軽く語ったが、それについては黙って神妙に話を聞いてくれた。内心、どう受け取ったかは分からない。しかし、俺をおかしな目でみる者は一人もいなかった。一家団欒にすさんだ心も解れていき、やがて宴はお開きとなった。
ふかふかのベッドに身を横たえると、疲れがどっと出てきた。まだ昼間だけど一眠りしようか?
うつらうつらと眠気がやってきて、重たくなる瞼。そして頭にはイヤでも彼の姿が過ぎる。
今更、なんであいつのことなんか……。
俺は沼に沈むように、ゆっくりと眠りの世界へ落ちていった。
「あ、はは……平気……だよ」
母に尋ねられ答えたが、本当はちっとも平気じゃない。というか、エルメスに敵でも見るような目をされて畏縮する。
「おい、エルメス! ルンガ様に何をするんだ!」
「何って、あいつが勝手に僕に……僕の傷に触れてこようとしたから突き飛ばしただけだ」
「だからってつっぱねることはないだろう!?」
母の従者とエルメスがけんか腰にやりとりをしている。まずいと思った。俺は慌てて二人の間に入ろうとするが……。
「なぁ、エルメス。話を聞いてくれないか?」
「……話ですって? 僕は生憎、人の傷に無配慮に触れてくるような人と話す言葉を持ち合わせていませんので、これにて失礼致します」
さすがの俺も敬語でのその返しにかちんときた。
「通して下さい。僕はルンガ様を、ルンガ様の亡骸を探します」
「エルメス、ですからルンガはここに……」
「奥様、そんな奴はほっといてルンガ様の帰省祝いをしましょうよ」
場は混沌としていた。しかし、エルメスが強引に母の横を通り抜けてからは、急に静かになった。本当はすぐにでも追いかけて文句の一つでも言ってやりたい所だが、逆にあんな薄情者の顔を見たくも無いという気持ちもあって、俺はふてくされていた。
なんであんなに意固地なんだよ……!!
俺は、俺だったらきっと手放しで喜ぶのに。物語なら歓喜のシーンに違いない。
それをあいつは……頑なに俺がルンガであることを否定した。拒絶の色の強さに俺は今更に悲しくなった。
あんな奴、もう知るか!
きっとあれは何かの間違いだったんだ。俺は夢でも見ていたに違いない。エルメスという人間像を測り間違えていたのだ。そうに決まってる。
それから俺は屋敷に戻り、家族と久しぶりの再会を果たした。豪勢な食事が振舞われ、目一杯皆と笑った。俺は老人だった頃を軽く語ったが、それについては黙って神妙に話を聞いてくれた。内心、どう受け取ったかは分からない。しかし、俺をおかしな目でみる者は一人もいなかった。一家団欒にすさんだ心も解れていき、やがて宴はお開きとなった。
ふかふかのベッドに身を横たえると、疲れがどっと出てきた。まだ昼間だけど一眠りしようか?
うつらうつらと眠気がやってきて、重たくなる瞼。そして頭にはイヤでも彼の姿が過ぎる。
今更、なんであいつのことなんか……。
俺は沼に沈むように、ゆっくりと眠りの世界へ落ちていった。
3
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
アケミツヨウの幸福な生涯【本編完結】
リラックス@ピロー
BL
ごく普通の会社員として日々を過ごしていた主人公、ヨウはその日も普通に残業で会社に残っていた。
ーーーそれが運命の分かれ道になるとも知らずに。
仕事を終え帰り際トイレに寄ると、唐突に便器から水が溢れ出した。勢い良く迫り来る水に飲み込まれた先で目を覚ますと、黒いローブの怪しげな集団に囲まれていた。 彼らは自分を"神子"だと言い、神の奇跡を起こす為とある儀式を行うようにと言ってきた。
神子を守護する神殿騎士×異世界から召喚された神子
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる