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前章 星降る夜(ニュイ・エトワレ)
魅惑のサマーバケーション4
「なんだそれ」
腰をかがめて狭い場所に挟まっていた花弁を拾った。
白い花びらだ、なんの変哲もない。
ところがそれは奇妙なことだった。
「植木の花にしては近くには一本も咲いてるのがないな。野花にしてはやけに大きいし。やぶから迷い込んだっていう線もあるがあそこになにか咲いてたか?」
「いえ、奇妙な札だけでしたよね。細い葉がついた若木はたくさんありましたけど、花びらはみてませんよ。林は緑一色でした!」
「……どういうことだ?」
リュカ様はあごに手をおいてお考えになる。
「おい、よく見たらここだけじゃなくあたりの隙間の白いの、全部この花だろ」
「本当だ!」
びっちりと埋まった穴をみつめて僕は驚嘆の声をあげた。
「とりあえずこの先に行ってみよう。入口付近にはめぼしい町人がいないようだし」
「ですね」
というわけで僕らは移動を開始した。
昼過ぎの町中を歩くが不思議なことに人っ子一人出会わない。思わず窓から覗きこんでしまったが家主が不在なだけで室内には生活感がありそうだ。
この状況そのものが少し、ホラーだけど。
「くわぁあ……。全然人影がないな」
「おかしいですね? なんででしょう」
「そら、めいたんてい、解いてみせろよ」
「えええ!? 謎解きなんて責任重大じゃありませんか!? 僕に分かるかなあ……?」
「はっはっは、まさか生け垣で迷子になるお前に解けるなんざ最初から思ってねーよ。情報さえ集めてくれれば、それでいいんだ」
(むっ)
「あー、ずるい! 一番イイとこだけもってく気ですね! でも、そうはさせません。この名探偵が……」
「それはそうと本当に解ける自信あるのか?」
「ない……こともないかもしれません」
ちらっと街頭をみたふりをするも、リュカ様には浅はかな思考は読まれていた。
「ありそうな素振りだが目が完全に泳いでるな。はぁ~~、前途多難っぽいな、こりゃ。日が暮れる前に帰れたらいいか。せめて食事をとっているのが救いだな」
たしかに。空腹で行き倒れるなんて笑い話では済まないかもしれない。
「そういえば列車内でのランチ、おいしかったですよね。エビの……なんちゃらオマールがけ。もっと食べとけばよかったなー」
「よだれ垂れてるとこ悪いが肝心の料理名が出てないじゃないか」
「うそっ!? え、あ、二重でうそですよね!?」
「冗談だ、ははっ。そんなにウマかったのか」
「もー、からかわないでください!!」
なお僕が思い浮かべた料理名はまるっきり合っていなかったし、なんなら素材名らしかった……、がくり、とんだ笑い話である。
靴底で地面を蹴って抗議する僕などお構いなしにリュカ様が先導する。
少し遅れて眠気を誘う木漏れ日の中を歩いた。
遊歩道沿いには青々とした木が並んでいて鳥が止まり木代わりに利用していた。
「並木道か、ずいぶん静かでいいな」
僕は再度前に出る。
その後ろを迷いなくついてくるご主人。
一応花びらが目についたところを歩いているが手がかりはまだ見つからない。
それでも、僕を見放さずついてきてくれるのはなんだか信頼されているようでこそばゆかった。
#
昼下がりの広場、抜けた路地からにぎやかな声がしている。
突然のことに僕はリュカ様へ振り返る。
リュカ様はたちまち合図を出した。
「あそこ人だかりができてる。ちょうどいいから俺達も行ってみるぞ」
「はい……、あ!」
(やっぱりおいしいところはリュカ様にもってかれたような気が……)
「っていうか、足速っ! ……ああっ、待ってくださいよぉー!」
(ぜぇはぁ……、運動神経までいいなんて……)
なんとか後ろにしがみつくとリュカ様は眼の前をじっとみつめている。
(なんだろ?)
僕も気になって前方を向いた。
どうやら町をあげて家々を練り歩くなぞの集団を歓待しているようだった。
その一団を出迎えるように道の端には人々が集まっている。
町民たちも一緒に移動しているのか、人だかりが大きないきもののようにまとまりに思える。
群衆の顔は喜びに満ち溢れ、人々は道行く人に声をかけては、この不思議な行いを祝っているようだった。
と、なんとなく観察していると発見があった。僕は驚いてリュカ様にも教えるように指さした。
三階建ての家屋の外壁には林で見た、あの御札が飾られている。どうやら関係があるらしかった。
続けて行動した。
「あの、すみません」
迷うことなく僕は近くにいたおじいさんを呼び止めて声をかけたのだ。
腰をかがめて狭い場所に挟まっていた花弁を拾った。
白い花びらだ、なんの変哲もない。
ところがそれは奇妙なことだった。
「植木の花にしては近くには一本も咲いてるのがないな。野花にしてはやけに大きいし。やぶから迷い込んだっていう線もあるがあそこになにか咲いてたか?」
「いえ、奇妙な札だけでしたよね。細い葉がついた若木はたくさんありましたけど、花びらはみてませんよ。林は緑一色でした!」
「……どういうことだ?」
リュカ様はあごに手をおいてお考えになる。
「おい、よく見たらここだけじゃなくあたりの隙間の白いの、全部この花だろ」
「本当だ!」
びっちりと埋まった穴をみつめて僕は驚嘆の声をあげた。
「とりあえずこの先に行ってみよう。入口付近にはめぼしい町人がいないようだし」
「ですね」
というわけで僕らは移動を開始した。
昼過ぎの町中を歩くが不思議なことに人っ子一人出会わない。思わず窓から覗きこんでしまったが家主が不在なだけで室内には生活感がありそうだ。
この状況そのものが少し、ホラーだけど。
「くわぁあ……。全然人影がないな」
「おかしいですね? なんででしょう」
「そら、めいたんてい、解いてみせろよ」
「えええ!? 謎解きなんて責任重大じゃありませんか!? 僕に分かるかなあ……?」
「はっはっは、まさか生け垣で迷子になるお前に解けるなんざ最初から思ってねーよ。情報さえ集めてくれれば、それでいいんだ」
(むっ)
「あー、ずるい! 一番イイとこだけもってく気ですね! でも、そうはさせません。この名探偵が……」
「それはそうと本当に解ける自信あるのか?」
「ない……こともないかもしれません」
ちらっと街頭をみたふりをするも、リュカ様には浅はかな思考は読まれていた。
「ありそうな素振りだが目が完全に泳いでるな。はぁ~~、前途多難っぽいな、こりゃ。日が暮れる前に帰れたらいいか。せめて食事をとっているのが救いだな」
たしかに。空腹で行き倒れるなんて笑い話では済まないかもしれない。
「そういえば列車内でのランチ、おいしかったですよね。エビの……なんちゃらオマールがけ。もっと食べとけばよかったなー」
「よだれ垂れてるとこ悪いが肝心の料理名が出てないじゃないか」
「うそっ!? え、あ、二重でうそですよね!?」
「冗談だ、ははっ。そんなにウマかったのか」
「もー、からかわないでください!!」
なお僕が思い浮かべた料理名はまるっきり合っていなかったし、なんなら素材名らしかった……、がくり、とんだ笑い話である。
靴底で地面を蹴って抗議する僕などお構いなしにリュカ様が先導する。
少し遅れて眠気を誘う木漏れ日の中を歩いた。
遊歩道沿いには青々とした木が並んでいて鳥が止まり木代わりに利用していた。
「並木道か、ずいぶん静かでいいな」
僕は再度前に出る。
その後ろを迷いなくついてくるご主人。
一応花びらが目についたところを歩いているが手がかりはまだ見つからない。
それでも、僕を見放さずついてきてくれるのはなんだか信頼されているようでこそばゆかった。
#
昼下がりの広場、抜けた路地からにぎやかな声がしている。
突然のことに僕はリュカ様へ振り返る。
リュカ様はたちまち合図を出した。
「あそこ人だかりができてる。ちょうどいいから俺達も行ってみるぞ」
「はい……、あ!」
(やっぱりおいしいところはリュカ様にもってかれたような気が……)
「っていうか、足速っ! ……ああっ、待ってくださいよぉー!」
(ぜぇはぁ……、運動神経までいいなんて……)
なんとか後ろにしがみつくとリュカ様は眼の前をじっとみつめている。
(なんだろ?)
僕も気になって前方を向いた。
どうやら町をあげて家々を練り歩くなぞの集団を歓待しているようだった。
その一団を出迎えるように道の端には人々が集まっている。
町民たちも一緒に移動しているのか、人だかりが大きないきもののようにまとまりに思える。
群衆の顔は喜びに満ち溢れ、人々は道行く人に声をかけては、この不思議な行いを祝っているようだった。
と、なんとなく観察していると発見があった。僕は驚いてリュカ様にも教えるように指さした。
三階建ての家屋の外壁には林で見た、あの御札が飾られている。どうやら関係があるらしかった。
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「あの、すみません」
迷うことなく僕は近くにいたおじいさんを呼び止めて声をかけたのだ。
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