4 / 13
桜に似た花見
しおりを挟む
目の前には桜吹雪。風に散らされて舞う花びら達の美しさに目を奪われる俺。
今日は「花祭り」。春を祝い、花を見て楽しむ行事だ。
それに合わせて俺は大々的なお披露目が成されることになった。
神子の正装を纏う。白地に青や金の刺繍が入った薄い衣は、過度に煌びやかではないが、ふんわりとした生地をいくつも使っていて贅沢な印象を与える。
エレファという、桜色の花。地面から生える背丈の低いその花は、芝桜がもっと桜に近づいたような感じの花だ。
所かしこで宴会が催されて、街の外側は賑わいを見せる。中には騎士団も参加している。今日はいたる所が無礼講。
本来なら、ライも休みだが、俺が花祭りに参加するので、専任騎士として出席している。……見知らぬ人から酒や食べ物をおすそわけされて嫌そうにしているが。
「おら、シズク。やるよ」
「えー、あ、お酒だ。俺、飲んでいいの?」
「いいんじゃねーか。それともお前、お子ちゃまなの??」
「俺は成人済みだ! 酒くらい飲める!!」
杯を片手に一気飲みしたら、周囲がどっと沸く。潔い飲みっぷりをみせたら、遠くの神殿長が頭を抱えているのが見えたが、気にしない。
だって、今日は無礼講。神子様だって、ちょっとくらいハメを外したっていいでしょう? 神様。
風が吹いた。美しいエレファが舞う。珍しく無邪気な横顔をするライにドキっとした。ああ、ライはこんな顔もするのかって。
一度肌を重ねたせいで、たまに妙な気分になることがある。俺は明らかにライを意識している。
だって相手は――
「シズク、この後、暇か?」
「うん?」
「今日――一緒に寝るか?」
「え」
どきっと高鳴る心臓。なにかを期待した自分を忘れようと頭を振ると、
「なあんて。嘘だよ」
ケタケタと笑うライ。相変わらず、彼は嘘吐きだ。その嘘に振り回されそうになる自分が、不思議でならない。
花見の宴会で、結局好意の人々のお酌を断れず、飲まされたせいでダウンしてしまった。うう、気持ち悪い。これ、明日も酷い二日酔いが来るんだろうなぁ。
「そういえば……ライは一杯も飲んでないような……」
ジト目で本人を睨めば、
「ああ、俺酒はからっきしダメだから」
なあんて言葉が返って来る。だからかよ! いやそうな顔をしてたのは! お前、俺に押し付けたのかよ!!
「非番じゃない騎士様だから、とかじゃないんだな!?」
「ああ。俺、飲むと甘え上戸になるの」
「え……意外なんだけど」
「嘘に決まってるだろ」
「この、クソ騎士!」
「神子様が糞とか言うなよ。盛り下がるだろ」
「既に誰も居ない遊歩道だけどな!」
なんだかんだライに介抱されている。
大きな背中だな……。
おぶってくれる背中に額を押し付けた。
「固くて寝心地が悪い……」
俺も可愛げのない嘘を吐いた。
「うるせぇ、黙ってろ。舌噛むぞ」
ライは前を見据えたまま、ゆっくりと歩く。まるで俺に負荷をかけまいとするみたいに。
「なんか……今日優しいね」
「んなわけあるか」
「そうかな」
「そうだ」
断言するライ。それがおかしくて俺はひとしきり笑った。
「変なのはお互い様?」
「……いきなり話が飛んでねえか?」
そんな春の日だった。
今日は「花祭り」。春を祝い、花を見て楽しむ行事だ。
それに合わせて俺は大々的なお披露目が成されることになった。
神子の正装を纏う。白地に青や金の刺繍が入った薄い衣は、過度に煌びやかではないが、ふんわりとした生地をいくつも使っていて贅沢な印象を与える。
エレファという、桜色の花。地面から生える背丈の低いその花は、芝桜がもっと桜に近づいたような感じの花だ。
所かしこで宴会が催されて、街の外側は賑わいを見せる。中には騎士団も参加している。今日はいたる所が無礼講。
本来なら、ライも休みだが、俺が花祭りに参加するので、専任騎士として出席している。……見知らぬ人から酒や食べ物をおすそわけされて嫌そうにしているが。
「おら、シズク。やるよ」
「えー、あ、お酒だ。俺、飲んでいいの?」
「いいんじゃねーか。それともお前、お子ちゃまなの??」
「俺は成人済みだ! 酒くらい飲める!!」
杯を片手に一気飲みしたら、周囲がどっと沸く。潔い飲みっぷりをみせたら、遠くの神殿長が頭を抱えているのが見えたが、気にしない。
だって、今日は無礼講。神子様だって、ちょっとくらいハメを外したっていいでしょう? 神様。
風が吹いた。美しいエレファが舞う。珍しく無邪気な横顔をするライにドキっとした。ああ、ライはこんな顔もするのかって。
一度肌を重ねたせいで、たまに妙な気分になることがある。俺は明らかにライを意識している。
だって相手は――
「シズク、この後、暇か?」
「うん?」
「今日――一緒に寝るか?」
「え」
どきっと高鳴る心臓。なにかを期待した自分を忘れようと頭を振ると、
「なあんて。嘘だよ」
ケタケタと笑うライ。相変わらず、彼は嘘吐きだ。その嘘に振り回されそうになる自分が、不思議でならない。
花見の宴会で、結局好意の人々のお酌を断れず、飲まされたせいでダウンしてしまった。うう、気持ち悪い。これ、明日も酷い二日酔いが来るんだろうなぁ。
「そういえば……ライは一杯も飲んでないような……」
ジト目で本人を睨めば、
「ああ、俺酒はからっきしダメだから」
なあんて言葉が返って来る。だからかよ! いやそうな顔をしてたのは! お前、俺に押し付けたのかよ!!
「非番じゃない騎士様だから、とかじゃないんだな!?」
「ああ。俺、飲むと甘え上戸になるの」
「え……意外なんだけど」
「嘘に決まってるだろ」
「この、クソ騎士!」
「神子様が糞とか言うなよ。盛り下がるだろ」
「既に誰も居ない遊歩道だけどな!」
なんだかんだライに介抱されている。
大きな背中だな……。
おぶってくれる背中に額を押し付けた。
「固くて寝心地が悪い……」
俺も可愛げのない嘘を吐いた。
「うるせぇ、黙ってろ。舌噛むぞ」
ライは前を見据えたまま、ゆっくりと歩く。まるで俺に負荷をかけまいとするみたいに。
「なんか……今日優しいね」
「んなわけあるか」
「そうかな」
「そうだ」
断言するライ。それがおかしくて俺はひとしきり笑った。
「変なのはお互い様?」
「……いきなり話が飛んでねえか?」
そんな春の日だった。
1
あなたにおすすめの小説
獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。
猫宮乾
BL
異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。
《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。
かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる