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波間で揺れる
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煌く波飛沫が砕け散って、跳ねる。
俺の祖国が海に囲まれた島国だったと言えば、リオネール海に連れて来られた。俺は金槌で泳げないから波打ち際でライが付きっきりで傍にいた。ライの服をつまんで、歩く。裸足の足に冷たい水が気持ちいい。
「金槌のくせに、そんな所まで行くな。危ねぇぞ」
「どうせライが助けてくれるだろ?」
「俺だってそんなに泳ぎに自信はねぇよ」
「犬掻きが出来るのに?」
「……いや、犬掻きなんざしねえよ。お前、俺をなんだと思ってる?」
笑うのも苦しい。ライを見ていると、変な気分になる。あいつにとって俺はただの……ただの、なんだろう。境界人? それとも一夜の相手? 護衛相手? 神子としてしか見られてないんだろうか。
思うだけで、ごぽごぽと溢れてしまいそうになる。これは、何?
ああ、俺……ライのことが好きなんだ。しっくりくる。隣……よりかは離れてるけど、いつも近くに居る。その些細な温もりすら愛おしい。
毎日を一緒にしていると不思議と、この騎士が嫌いじゃないことに気付いた。相変わらずくだらない嘘から酷い嘘まで嘘、嘘、嘘ばっかりな奴だけど……。
だけど――愛されてみたいよ。この嘘吐騎士に。
「シズク、……あのさ」
真剣な顔をして、ライが俺を見つめる。振り返られたその顔は、何故か硬直してた。
「何?」
「……――なんでもない」
ふいっと彼は前を向いてしまう。
首を傾げる俺。だけど、そんな俺の手を黙って握る騎士。痛いぐらいの力で。
これ以上、優しくしないで。でも、甘く傷付けられたら、もっと、もっと好きになっちゃうから。
まっすぐに、お前を見られないよ……。
波と海面。美しく煌く水面。そんなたゆたう光景を見ていたら、考えが少し、変わってきた。
愛されなくてもいい。俺は――俺はライをこの胸で愛したい。あいつに拒絶されるのは嫌だけど、愛を知らない男を目一杯愛したいんだ。気持ちを返されなくても構わない。
大げさな表現だけど、ライを……救いたい。愛を知らない騎士に愛を与える、その役目は他の誰でもない、俺が成し遂げたいから。
そしていつか、ライの胸に愛が芽生えたらいい。
この恋は歪だ。俺が一方的に愛そうなんて思うのだから。消えることなく、刻み付けたい。だから、だからちょっと傷付けさせてくれないか?
そっと彼と繋いだ手を持ち上げて、口元に持っていく。口を開いて、迎えて――がぶり。
「痛ぇっ!? え、何? どうしたんだよ!?」
「いや、ちょっとおいしそうで」
「やめろよ。こえええ」
「随分嫌がるね?」
ぺろり、と血こそ出ていない指を舐めあげる。
「腹空いたなら普通のもんを食えよ」
「腹は減ってない。胸が空いただけだ」
「どういう表現なんだよ、それ」
「ちょっと足りなくなったから。補給しようかと」
「意味分かんねー」
俺は今、ライを満たしたい。この生まれたての気持ちで。
静かになった波間を、歩いていた日のことだった。
俺の祖国が海に囲まれた島国だったと言えば、リオネール海に連れて来られた。俺は金槌で泳げないから波打ち際でライが付きっきりで傍にいた。ライの服をつまんで、歩く。裸足の足に冷たい水が気持ちいい。
「金槌のくせに、そんな所まで行くな。危ねぇぞ」
「どうせライが助けてくれるだろ?」
「俺だってそんなに泳ぎに自信はねぇよ」
「犬掻きが出来るのに?」
「……いや、犬掻きなんざしねえよ。お前、俺をなんだと思ってる?」
笑うのも苦しい。ライを見ていると、変な気分になる。あいつにとって俺はただの……ただの、なんだろう。境界人? それとも一夜の相手? 護衛相手? 神子としてしか見られてないんだろうか。
思うだけで、ごぽごぽと溢れてしまいそうになる。これは、何?
ああ、俺……ライのことが好きなんだ。しっくりくる。隣……よりかは離れてるけど、いつも近くに居る。その些細な温もりすら愛おしい。
毎日を一緒にしていると不思議と、この騎士が嫌いじゃないことに気付いた。相変わらずくだらない嘘から酷い嘘まで嘘、嘘、嘘ばっかりな奴だけど……。
だけど――愛されてみたいよ。この嘘吐騎士に。
「シズク、……あのさ」
真剣な顔をして、ライが俺を見つめる。振り返られたその顔は、何故か硬直してた。
「何?」
「……――なんでもない」
ふいっと彼は前を向いてしまう。
首を傾げる俺。だけど、そんな俺の手を黙って握る騎士。痛いぐらいの力で。
これ以上、優しくしないで。でも、甘く傷付けられたら、もっと、もっと好きになっちゃうから。
まっすぐに、お前を見られないよ……。
波と海面。美しく煌く水面。そんなたゆたう光景を見ていたら、考えが少し、変わってきた。
愛されなくてもいい。俺は――俺はライをこの胸で愛したい。あいつに拒絶されるのは嫌だけど、愛を知らない男を目一杯愛したいんだ。気持ちを返されなくても構わない。
大げさな表現だけど、ライを……救いたい。愛を知らない騎士に愛を与える、その役目は他の誰でもない、俺が成し遂げたいから。
そしていつか、ライの胸に愛が芽生えたらいい。
この恋は歪だ。俺が一方的に愛そうなんて思うのだから。消えることなく、刻み付けたい。だから、だからちょっと傷付けさせてくれないか?
そっと彼と繋いだ手を持ち上げて、口元に持っていく。口を開いて、迎えて――がぶり。
「痛ぇっ!? え、何? どうしたんだよ!?」
「いや、ちょっとおいしそうで」
「やめろよ。こえええ」
「随分嫌がるね?」
ぺろり、と血こそ出ていない指を舐めあげる。
「腹空いたなら普通のもんを食えよ」
「腹は減ってない。胸が空いただけだ」
「どういう表現なんだよ、それ」
「ちょっと足りなくなったから。補給しようかと」
「意味分かんねー」
俺は今、ライを満たしたい。この生まれたての気持ちで。
静かになった波間を、歩いていた日のことだった。
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