丘の上のお姫様~姫島 皐月の場合~

よしき

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丘の上のお姫様~姫島皐月の場合~5

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  「いい腕前なのは確かみたいだな」
  聖さんは、私をヘリで送ってくれた後、私の経営する喫茶店「坂の上」まで送ってくれた。
  「しかし、あまり肝心はしないな」
  少しすねたように、聖さんは言った。
「どうしたの⁉聖さんは?」
おもわず私は、聖さんの少し幼い様な仕草に笑ってしまった。
  当の聖さんにしてみたら、不名誉な話だろう。自分より年下の女性に、言われるのだから。
「とにかく、あまり二人っきりの時間は持たないように。」
  せつかく、お店に来てくれたからと、コーヒーを振る舞ったのだが。聖さんは、どこかイライラしている様子だ。 私がおかしくって、笑おうとしたとき・・・
「聖、なんで勝手なことをしてくださったの⁉」
  カランコロンとお店のドアが空いたそこには、皐月さんが↑やや息を切らして立っていた。
「遅かったな」
  聖さんも、まるで来ることが分かっていたかのように・・・
「誰かさんの尻拭いをしたまでですわ。お陰で、少し遅れてしまいましたの」
  どこか、皐月さんは機嫌の悪そうな顔をしている様に見えるのは、きのせいだろうか?
  皐月さんは、私たちのいるカウンターに座ると、何やら丁寧に梱包された物を私に渡してきた。
「先日の。御約束したコピー・ルクアですわ。今日、これが手に入りましたの。でも、このおじ様のお陰で、危うくもらえないところでしたのよ」
  私には、意味が分からなかったが。多分皐月さんは、先程まで誰かと会っていたのだろう。
「それにしても・・・コピー・ルクアの本物って初めてです。」
「好きな人は、ハマるかも知れないな。俺は、ここのブレンドの方が好きだけれどな」
  聖さんは笑った。
「私は屋敷でも飲めるから。色々迷惑をかけている、珠子さんの分ですわ。」
「迷惑だなんて。私もエステを受けられて、ありがたいです。」
「まあ、そうてすの・・・相変わらずお安いこと。」
  皐月はコロコロと笑うと、
「仕事の後は、上品なコーヒーよりもここのブレンドが私も好きですわ。今度、私もお付き合いしている方を、ここにつれてこようかしら?」
  しれっと、重大な事を言った後、皐月さんもブレンドを注文してきた。
「で、その仕事は上手く行ってそうだな」
  聖さんは、何時もとは違う笑い方をしてコーヒーを飲む。皐月さんも、私には見せたことのない笑いかたをチラリと見せる。
「誰に向かって言ってらっしゃるのかしら?」
・・・
  ある種、仕事において、この二人は似ている。その事だけは分かるのだが、それ以上は、あまりかかわらない方がいいと、本能が教えてくれる。
「ブレンドをどうぞ。」
  オーダーされた物を皐月さんにお出しすると、
「あなた、本当に良いところにいらっしゃるのよね・・・」
  そう言うと、不服そうな聖さんの横で、皐月さんは美味しそうにコーヒーを一口飲んだ。
「この次は無いからな!」
  ・・・。
  私だけが知らずして、何かが進んでいる。二人を見て、そう思ったが、『私が聞いてはいけないこと』と、無意識に思ったので、質問することを止めた私であった。


  
  
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