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第4章・北方諸国漫遊と、契約の精霊と
第179話・バレンタインデー、キッズ? 私は子供じゃありませんよ。
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バザールの店舗に集まった人々は、急遽開いた串焼き屋でどうにかことなきを得まして。
クリムゾンさんに近所の肉屋まで走ってもらったり、柚月さんは私の手持ちの調味料を合わせてオリジナルのタレを作ったりと大奮闘。
私もノワールさんと一緒に串焼きを焼きつつ、接客を行ったりと大忙し。
そんなこんなで夕方六つの鐘が鳴る頃には商品は全て売り切りました。
そしてキヌガッサ王国でのバザールはこれでおしまいであること、私たちはロシマカープ王国へ向かうこともお伝えして、無事にバザールでの楽しい日々は幕を閉じました。
──そして
「ふぅ……本当に凄いわね、この馬車は。ねぇ、もしも追加注文ができるのなら、私も発注したいのだけど、どうなのかしら?」
キヌガッサ王国を後にして、私たちを乗せた馬車は街道をそれで大雪原を疾走しています。
それはもう、雪を吹き飛ばすこともなく足跡も残さず、ひたすらにエセリアルモードでの最短コースを駆け抜けています。
ボリマクールさんと、あとは彼の護衛であるガッシュさんという女性騎士も同乗していますが、しっかりと口止めはしてありますよ。
「残念ですが、これは入手不可能です。クリスティナさまもこれを手に入れるために、どれだけ苦労をしたことか……」
「うむ。それにな、これを悪用する輩が出ないとも限らんからな。それこそ、この状態で王城まで駆け上がり、玉座に座っている国王を後ろから惨殺とかやる気になれば不可能じゃないからな」
「……クリムっちは、物騒なことを言わないし。それよりもお昼ご飯の時間だから、テーブルの上を片付けるし」
お昼は私と柚月さんの二人で用意しました。
【型録通販のシャーリィ】で、『日本全国、グルメお取り寄せ』なるページの商品を購入し、簡単な調理方法を柚月さんにレクチャーしてもらいました。
それと、あと一つ……。
これは柚月さんからのアドバイスで、ちょっと珍しいものを朝一番で届けて貰ったのですよ。
「これは……」
「産地直送のローストビーフをふんだんに使ったサンドイッチです。おかわりもありますから、ごゆっくりとどうぞ」
──ゴクッ
ボリマクールさんは私が出す商品に慣れてしまっているので、このようなとんでもない料理を前にしてもあまり驚きません。
けれど、護衛のガナッシュさんは目を丸くしています。
サンドイッチは何処にでもありますけれど、ここまで贅沢に作るものではありませんからね。
「それじゃあ、頂きましょうか」
「お待ちください。まず、このガナッシュが毒味を」
「毒味って、クリスティナさんはそんなことはしないわよ?」
「いえいえ、これも務めですので」
止めるボリマクールさんを制しつつ、ガナッシュさんが小さくカットしたサンドイッチを口の中へ。
ゆっくりと肉の旨み、柔らかいパン、そして新鮮な野菜を堪能しつつ……。
「こ、これは……一口では確認できませんわ。これは私が毒味として全て」
「そんなことを言って、あなたが食べたいだけじゃない?」
冷静に突っ込むボリマクールさんと、真っ赤な顔で無言のまま頷くガナッシュさん。
「は、はい……とっても、美味しいです」
「まあまあ、少し多めに作ってありますから、余った分はお土産用に取っておきますよ。私のアイテムボックスは時間停止処理もできますから」
「あら、それは便利ね。私のなんて、収納拡張の加護も付いているけれど、時間緩和しかないから助かるわね」
「その二つがあるだけでも凄いですよ。では、到着まではまだ時間がありますので、ゆっくりしてくださいね。お暇ならクリムゾンさんが色々とお相手してくれますので」
ええ、馬車の後ろの箱には、さまざまなゲームが入っています。
クリムゾンさんは一通りのルールを覚えていますので、楽しいひと時を過ごせますよ。
だって、エセリアルモードで走っていれば、魔物や盗賊にも感知されませんので安全なのですから。
………
……
…
「さて、それじゃあ時間も足りないから、作業を続けるし」
「はい、お願いします!!」
食後の時間は、柚月さんの料理教室です。
といっても、【型録通販のシャーリィ】で購入した、『手作りチョコレートキッド』というものを使ってバレンタインチョコレートを作るだけなのですけどね。
いえ、これは柚月さんとノワールさんの提案でして、普段からお世話になっているペルソナさんやクラウンさん、あとはジョーカーさんと遠くで頑張っているブランシュさんへお渡しするためのものなのです。
ええ、感謝の気持ちを込めて作っているのですよ。
「……うん、溶けたらこっちの肩に流し込むし。あとは冷気の結界を作るので、そこでゆっくりと粗熱を取ってから固まるまで待つし……その間に、ラッピングとかの準備もするし」
「へぇ~。ただ箱に入れるだけじゃダメなのですね?」
「気持ちは必要だし。ということで、手書きのメッセージカードも用意する必要があるし。クリスっちは私たちの言葉は読めるんだよね? 書ける?」
いえ、勇者言語の解読能力はありますが、書いたことはありませんね。
「書いたことはないですよ。だって、普段は使わないですよね?」
「それなら、あーしがサンプルで何枚か作るから、それを写し書きしてみるし」
「それなら便利ですね。では、早速!!」
──カキカキカキカキ
まずは、ペルソナさん用。
『A toi, mon précieux, avec amour.』
(大切な貴方へ、愛を込めて贈ります……)
って、普段見たことがない文字でしたけど、書き写したら意味が分かりましたよ!!
「な、ゆ、柚月さん!! これは愛の告白じゃないですか!!」
「あ、間違えたし。こっちこっち」
テヘッと笑いつつ舌をぺろっと出す柚月さん。
「今度は騙されませんからね」
では、内容を確認して。
『Merci pour tout.Nous nous réjouissons de travailler avec vous à l'avenir.』
(いつもありがとうございます。これからもよろしくお願いします)
うん、硬いです。
もっと優しい文章にしたいですね。
「柚月さん? もう少しこう、手加減といいますか。業者同士のやり取りすぎません?」
「うん、あーしもそう思ったし。それじゃあ、これは?」
『Voici un chocolat pour vous remercier de votre soutien.
Nous nous réjouissons de poursuivre notre relation avec vous.』
(日頃の感謝の気持ちを込めてチョコレートです。 これからもお付き合いをお願いします)
うん、まあ、気持ちが大切。
でも、柚月さんっていろいろな国の言葉が使えるのですね。
勇者さんは言語万能という加護を持っているから、当然と言えば当然ですよね。
「よし、あとはラッピングして完了だし。メッセージカードはちゃんと箱の中に納めて、ここに並べるし」
「はい、師匠!!」
これで夕方のペルソナさんの定期便には間に合いそうです。
まあ、クラウンさんとブランシュさんの分はお預けしますし、クラウンさんの分は明日の朝、直接お渡ししますから大丈夫ですよね。
クリムゾンさんに近所の肉屋まで走ってもらったり、柚月さんは私の手持ちの調味料を合わせてオリジナルのタレを作ったりと大奮闘。
私もノワールさんと一緒に串焼きを焼きつつ、接客を行ったりと大忙し。
そんなこんなで夕方六つの鐘が鳴る頃には商品は全て売り切りました。
そしてキヌガッサ王国でのバザールはこれでおしまいであること、私たちはロシマカープ王国へ向かうこともお伝えして、無事にバザールでの楽しい日々は幕を閉じました。
──そして
「ふぅ……本当に凄いわね、この馬車は。ねぇ、もしも追加注文ができるのなら、私も発注したいのだけど、どうなのかしら?」
キヌガッサ王国を後にして、私たちを乗せた馬車は街道をそれで大雪原を疾走しています。
それはもう、雪を吹き飛ばすこともなく足跡も残さず、ひたすらにエセリアルモードでの最短コースを駆け抜けています。
ボリマクールさんと、あとは彼の護衛であるガッシュさんという女性騎士も同乗していますが、しっかりと口止めはしてありますよ。
「残念ですが、これは入手不可能です。クリスティナさまもこれを手に入れるために、どれだけ苦労をしたことか……」
「うむ。それにな、これを悪用する輩が出ないとも限らんからな。それこそ、この状態で王城まで駆け上がり、玉座に座っている国王を後ろから惨殺とかやる気になれば不可能じゃないからな」
「……クリムっちは、物騒なことを言わないし。それよりもお昼ご飯の時間だから、テーブルの上を片付けるし」
お昼は私と柚月さんの二人で用意しました。
【型録通販のシャーリィ】で、『日本全国、グルメお取り寄せ』なるページの商品を購入し、簡単な調理方法を柚月さんにレクチャーしてもらいました。
それと、あと一つ……。
これは柚月さんからのアドバイスで、ちょっと珍しいものを朝一番で届けて貰ったのですよ。
「これは……」
「産地直送のローストビーフをふんだんに使ったサンドイッチです。おかわりもありますから、ごゆっくりとどうぞ」
──ゴクッ
ボリマクールさんは私が出す商品に慣れてしまっているので、このようなとんでもない料理を前にしてもあまり驚きません。
けれど、護衛のガナッシュさんは目を丸くしています。
サンドイッチは何処にでもありますけれど、ここまで贅沢に作るものではありませんからね。
「それじゃあ、頂きましょうか」
「お待ちください。まず、このガナッシュが毒味を」
「毒味って、クリスティナさんはそんなことはしないわよ?」
「いえいえ、これも務めですので」
止めるボリマクールさんを制しつつ、ガナッシュさんが小さくカットしたサンドイッチを口の中へ。
ゆっくりと肉の旨み、柔らかいパン、そして新鮮な野菜を堪能しつつ……。
「こ、これは……一口では確認できませんわ。これは私が毒味として全て」
「そんなことを言って、あなたが食べたいだけじゃない?」
冷静に突っ込むボリマクールさんと、真っ赤な顔で無言のまま頷くガナッシュさん。
「は、はい……とっても、美味しいです」
「まあまあ、少し多めに作ってありますから、余った分はお土産用に取っておきますよ。私のアイテムボックスは時間停止処理もできますから」
「あら、それは便利ね。私のなんて、収納拡張の加護も付いているけれど、時間緩和しかないから助かるわね」
「その二つがあるだけでも凄いですよ。では、到着まではまだ時間がありますので、ゆっくりしてくださいね。お暇ならクリムゾンさんが色々とお相手してくれますので」
ええ、馬車の後ろの箱には、さまざまなゲームが入っています。
クリムゾンさんは一通りのルールを覚えていますので、楽しいひと時を過ごせますよ。
だって、エセリアルモードで走っていれば、魔物や盗賊にも感知されませんので安全なのですから。
………
……
…
「さて、それじゃあ時間も足りないから、作業を続けるし」
「はい、お願いします!!」
食後の時間は、柚月さんの料理教室です。
といっても、【型録通販のシャーリィ】で購入した、『手作りチョコレートキッド』というものを使ってバレンタインチョコレートを作るだけなのですけどね。
いえ、これは柚月さんとノワールさんの提案でして、普段からお世話になっているペルソナさんやクラウンさん、あとはジョーカーさんと遠くで頑張っているブランシュさんへお渡しするためのものなのです。
ええ、感謝の気持ちを込めて作っているのですよ。
「……うん、溶けたらこっちの肩に流し込むし。あとは冷気の結界を作るので、そこでゆっくりと粗熱を取ってから固まるまで待つし……その間に、ラッピングとかの準備もするし」
「へぇ~。ただ箱に入れるだけじゃダメなのですね?」
「気持ちは必要だし。ということで、手書きのメッセージカードも用意する必要があるし。クリスっちは私たちの言葉は読めるんだよね? 書ける?」
いえ、勇者言語の解読能力はありますが、書いたことはありませんね。
「書いたことはないですよ。だって、普段は使わないですよね?」
「それなら、あーしがサンプルで何枚か作るから、それを写し書きしてみるし」
「それなら便利ですね。では、早速!!」
──カキカキカキカキ
まずは、ペルソナさん用。
『A toi, mon précieux, avec amour.』
(大切な貴方へ、愛を込めて贈ります……)
って、普段見たことがない文字でしたけど、書き写したら意味が分かりましたよ!!
「な、ゆ、柚月さん!! これは愛の告白じゃないですか!!」
「あ、間違えたし。こっちこっち」
テヘッと笑いつつ舌をぺろっと出す柚月さん。
「今度は騙されませんからね」
では、内容を確認して。
『Merci pour tout.Nous nous réjouissons de travailler avec vous à l'avenir.』
(いつもありがとうございます。これからもよろしくお願いします)
うん、硬いです。
もっと優しい文章にしたいですね。
「柚月さん? もう少しこう、手加減といいますか。業者同士のやり取りすぎません?」
「うん、あーしもそう思ったし。それじゃあ、これは?」
『Voici un chocolat pour vous remercier de votre soutien.
Nous nous réjouissons de poursuivre notre relation avec vous.』
(日頃の感謝の気持ちを込めてチョコレートです。 これからもお付き合いをお願いします)
うん、まあ、気持ちが大切。
でも、柚月さんっていろいろな国の言葉が使えるのですね。
勇者さんは言語万能という加護を持っているから、当然と言えば当然ですよね。
「よし、あとはラッピングして完了だし。メッセージカードはちゃんと箱の中に納めて、ここに並べるし」
「はい、師匠!!」
これで夕方のペルソナさんの定期便には間に合いそうです。
まあ、クラウンさんとブランシュさんの分はお預けしますし、クラウンさんの分は明日の朝、直接お渡ししますから大丈夫ですよね。
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