型録通販から始まる、追放令嬢のスローライフ

呑兵衛和尚

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第8章・海洋国家へ向かう道

335話・トラットロード攻防戦……は、終わりのようですか?

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 前略。

 私と柚月さん、ノワールさんはエセリアルモードの馬車の中で一晩過ごしていました。
 ちなみにですが、深夜にも外でなにか騒動があったらしく、騎士団の方々が何者かと戦っていたような物音が響いてきましたよ。
 私も一度目を覚ましましたが、見張り番をしているノワールさんが『大したことではありませんので、ごゆっくりとお休みください』と言ってくれたので熟睡。
 朝6つの鐘がなる少し前には目を覚まし、身支度を整えて【型録通販のシャーリィ】の配達馬車がやって来るのをのんびりと待っていました。
 その時はすでに、外では何事も起きていなかったかのように静かでしたので、本当に大したことなかったのでしょう。 

――ガラガラガラガラ
 やがて聞きなれた音が響いてきますと、黒いローブと鍔広帽子を身に着けたクラウンさんが、配達馬車に乗ってやってきます。
 ですから、私たちも馬車から降りて荷物の受け渡しを行います。

「……それにしても、今回の露店は随分と物騒な場所で開いているのですね。ここに来る途中、東街道あたりでは騎士団と魔族の部隊が交戦状態でしたよ」
「あはは……やっぱり交戦状態になりましたか。でも、相手が魔族となりますと、流石に私たちでは手が出せませんよね」
「ええ。むしろ、首を突っ込むと怒られますわ。クリスティナさまの本分は商人、戦闘には加担してはいけません。そういうのは、その道のプロに任せておくべきです……と、はい、これで納品は完了です。支払いをお願いします」

 すでに【シャーリィの魔導書】にはチャージ済み。
 それで支払いを終らせますと、クラウンさんは馬車に戻っていきます。
 そしてクリムゾンさんも指輪から出てきましたが。

「お嬢や、わしはそろそろタイムリミットじゃな。アリサちゃんのこともあるので、一度、精霊界に戻ることにするぞ」
「はい、ありがとうございました。アリサちゃんによろしく伝えてください」
 
 そう告げると、ニイッと笑ってクラウンさんの馬車に飛び乗り、走って帰っていきました。
 そしてクラウンさんの姿が見えなくなった辺りで、周りに集まっていた商人さんたちが商談したそうにうずうずしています。
 特に、ガメッツィ商会の代表であるガメッツィさんもそこに紛れていまして、睨みつけるようにこちらを見ています。

「フェイール商店さん、今しがた納品された商品を全て、うちに渡してほしいのだが」
「いえいえ、それはできませんのでお断りさせていただきます。フェイール商店の方針としましては、人道支援などの理由が無い限りは、おひとり様5品と決まっていますので」

 ええ、そういうことですので諦めてください。
 するとガメッツィさんがニイッと笑い、右手をスッと上げました。

「私はね、売ってくれと話したのではないのだよ? 寄越せといったのだ。痛い目に合う前に……んんん?」

 右手を上げるのが何かの合図なのでしょうが、周囲の商人さんだけでなく冒険者の皆さん、ついでにガメッツィ商会の雇われ冒険者の皆さんも、近くに集まっては来ているようですが何も反応しません。
 そりゃそうです、認識阻害効果が十分に発揮されているのですから。

「な、なんじゃ、貴様ら、とっととこの小娘の馬車から荷物を引きずり下ろせ!! なにをボーッとしてるんじゃ!!」

 はい、いくら叫んだところで無駄ですね。
 それどころか、今の騒ぎを聞きつけて騎士団の方もこちらに向かってきましたが。
 昨日の移動時は私が許可したので認識阻害効果は発揮されていませんでしたけれど、現在はノワールさんが全力で認識阻害を仕掛けてくれています。
 つまれ、この場には黒幕であるガメッツィとその部下たち、それを取り押さえるために来た騎士の方々、そして野次馬根性旺盛な商人の皆さんが集まっています。
 この状態で認識阻害が溶けたら、どうなるのでしょうか。

「クリスティナさま、そのガメッツィという商人からも、魔族の固有反応を感じます。というか、上位魔族からなにかの加護を得ている可能性がありますわ」
「あ~、昨日、がけ崩れの現場にいた魔族の可能性が高いし……どうしよう? 処す?」
「処す? 処すってどういう意味でしょうか? まさかずっばりと?」

 柚月さんが怖いことを言っていますので、恐る恐る尋ねますと。

「全員纏めて、ぬいぐるみの刑に処すし?」
「あ~、やっぱりですかぁ」

 私と柚月さんがそんな話をしていますと、ガメッツィも堪忍袋の緒が切れたようで、その場でダンダンと足を踏み鳴らしています。

「くそっくそっくそっぅぅぅぅぅぅぅぅっ。どうして体が自由に動かない、どうして皆、儂の命令を聞かない……」
「これが、勇者の加護だし。でも、ガメッツィには半分しか効果がないし……ひょっとして、四天王の一人から加護でも貰ったし?」
 
 その柚月さんの問いかけには、ニイッと笑って見せるだけ。
 まったく、これだから魔族というのは厄介なのですよ。

「ノワっち、魔族で精神干渉に強い人っているし?」
「大賢者ナイトハルト・クロウリーあたりですわね。幾度となくカナン・アーレストさまと戦っていた魔族の大賢者。結局カナンさまでは勝負にはならなかったのです」
「あ~、おばぁが話していた陰険大賢者っていうやつだし……うん、それじゃあ、そのナイトハルトに話しておくし。絶対に倒すって」
「な、な、なんだとこの小娘がぁぁぁぁぁぁぁ」

 柚月さんとノワールさん、二人がかりで煽っていますけれど。
 そろそろ出発しても良いころではないでしようか。
 私たちの周囲には、朝一で迷宮に向かおうとしている冒険者さんたちまで集まってきていますよ。
 野次馬というかなんというか……うん、この場は皆さんにも納めてもらいましょう。

「それじゃあ、そろそろ出発しますわ」
「かしこまりました。では紅に代わりま……ってあら、紅はどこに?」
「クリムっちなら、そろそろアリサちゃんのところに戻る時間だし……って話して、クラウンさんと一緒に乗っていったし」

 あ、ノワールさんは気付いていなかったのですか。
 恐るべしクリムゾンさん。

「ま、まあ、そういうことでしたら。では、エセリアルモード全開、のち認識阻害を解除」

 ノワールさんがそう叫ぶや否や、その場にいた全員が正気に戻ります。
 つまり、ガメッツィを取り押さえようとする騎士たち、ガメッツィを守るべく騎士に向かって戦いを仕掛けるガメッツィ派の冒険者と護衛たち、そして騎士団に要請されたのか、ガメッツィ派を取り押さえようと戦い始めるダンジョン攻略組の皆さん。
 
 なんというか、阿鼻叫喚ですが。
 残念なことに、どこをどう見ても騎士団6名の方が実力は遥かに上。
 ガメッツィたちは次々ととらえられ、そして拘束されていきます。

「ん~、ここはもう、まかせても大丈夫だし。あとは騎士団に任せておいて、うちらは先に進んだ方がいいと思う」
「柚月さんの仰る通りですわ。では、まずはパルフェランに向かい状況を説明したのち、ガンバナニーワへと向かいましょう」
「そうですね……これ以上は、私たちではどうしようもありませんから」

 そう告げて、エセリアル馬車は一路、パルフェランへ。
 ただ、どう考えても魔族の活動が活性化しているように感じます。
 カマンベール王国といい、パルフェラン近郊といい。
 3ん年前以上に、魔族が表舞台に出てきています。
 これも、アリサちゃんの身体に浮かびあがった魔王紋の影響なのでしょうか……。
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