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27話 強敵

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(ここは、どこ? 空は紫色、私を担いでるのは仮面をかぶっているひと? その横には綺麗な......)

 映像を見ながら、サキュアはリュウガイとの戦いを見ていた。

「昔よりは強くなってるみたいね!」

 嬉しそうに言う、だが強くなっても勝てる自信がある。

「でも、私の前では相手にならないけどね、楽しみにしているわ、ウルク」

---

 先輩を下ろし、顎先を持ちあげるようにして頭を後ろにそらし、気道確保を行う。

「フェリックスさん」

 とても心配そうに見つめる、するとふきかえしたのか咳き込んだ。

「ごほ、ごほ!」

 自分のせいで先輩がという気持ちが残っていて、とても心配していた。

「フェリックスさん!」

 するとゆっくりと起き上がる。

「先生、ありがとう」

 先生は先ほどよりも汗をかいている、すると次は私の方を向いた。

「間に合ってよかった、あとはシャル」

 そう言って頰に手を当て、治療を施す。
 頰が緑に光っている、体がとても軽くなった感じがする、先生は何度も何度も治療をしていて、とても辛そうだが、救助優先で自分よりも私たちのことを優先してくれた。

「はあ、これで大丈夫だ」

 流石に疲れたのか、座り込み、二人の戦闘を眺める。
 クライマックスが近づいていた。
 炎の矢ではなく、透明の矢が放たれた。
 イオリが先生にあれは何かと聞く。

「あれは「幻想矢(イリュージョンロー)」

 炎の矢は殺傷能力があるが、幻想矢は殺傷能力はない、相手を驚かせることができる魔法だ。

「じゃあ、あれが敵に当たっても死なないの?」

 何も言わずに頷く、そして矢が敵を貫くと、敵は意識を失い動かなくなった。
 その時、確信した、ウルク先生が勝ったということを。

「さすが、だなウルクは」
「ですね、それよりも先生大丈夫ですか?」

 先輩も横で座っていて、心配をしている。

「はあ、俺は大丈夫だ、それよりウルクの心配をして上げろ」

 イオリとユアンは歓喜の渦に包まれている。
 先生に手を振る、こちらに気づいた先生も手を振りながら、こちらに近づいてくる。

「ないすだ、ウルク」

 二人はハイタッチをする。

「それよりも、まだ敵は残っている」

 崖があった奥の方を見て話す、これまで沢山の強敵と戦ったが、本番ではない。
 本当の敵はサキュアだ。
 今の敵でも充分強かった、それよりも強いとなると、どうなるかわからない。

「サキュアって人は強いんですよね?」

 私は恐る恐る、その人がどれほど強いかを聞く。

「強い、私が戦ったとき、一瞬だった」

 そのことを覚えているウィデア先生が話を付け足す。

「その戦闘のせいで、ウルクは左手を失っているんだ」

 衝撃的すぎて言葉も出ない、ユアンが恐る恐る聞く。

「ということは、先生の左手は義手ですか?」

 義手だと思えないほど、実際の手と変わらない。
 すると先生は自分の左手を取り外し、本当だと証明する。

「ああ」

 その姿はとても痛々しい。
 私は慌ててつけるように頼んだ。

「つけてください!」

 再び付け直す。

「先生、片腕がなくなったのに関わらず、どうしてあれほどの威力が?」

 イオリが真剣に聞く、確かにそうだ、片腕より両腕の方が威力は上がるが負担もかかる。
 私たちは片手だけで発動していて、あの威力、先生も片手で発動していて、両手以上の魔力を発動させることができている。

「努力、だな」

 その話を努力という言葉で、片付ける、でも私はそれは間違っていないと思う。
 先生は話を切り替えて、今後の動きを話す。

「さっきのリュウガイはこの反魔法軍のトップ三に当たるやつだ」

 トップ三ということは、サキュアを含めればあと一人強敵がいるということ。

「ということは、あと二人強敵がいるということですわね?」

 ユアンはじっくりと考えながら話す。

「ああ、一人はサキュア、ここのボスだ、それともう一人は」

 その時、地面が揺れだした。

「何これ!」

(きたか!)

 地面に亀裂が入る、音を響かせている。

〈ピキピキ〉

 その亀裂がこちらに向かってきている。

「逃げるぞ!」

 とりあえず亀裂が入っていないところに逃げることにする、先生は先輩をおぶって走っている、ウィデア先生は一番後ろでゆっくりと走っている。
 亀裂が入ったところから、何者かの声が聞こえた。

「ここで終わりだ!」
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