私のスキルは相手に贈り物をするスキルです~スキルを使ったらお代吸収によっていきなり最強となりました~

厠之花子

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一章 云わば、慣れるまでの時間

36. 大丈夫だ、私自身の身くらい1人で守れる

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 挟まれたのは、苦笑混じりのグリムの言葉。

 それが終わると同時に、バンッ、と後方で机を叩く音が聞こえた。机に手を乗せ、立ち上がったディルクが憎々しげに言葉を振り絞る。


「・・・・・・あれはイタズラとか生易しいモンじゃねぇよ。下手したら──死ぬ」


 その顔は嘘をついているように見えない。ディルクから伝わってくる、これは本当の話だと。


「だが、流石に教師が・・・・・・」

「あいつはネジがぶっ飛んでんだよ。だから、‪α‬のクラス持ってんの」


 信じられねぇけどな、とディルクが吐き捨てる。その瞳には苦々しいものが浮かんでいた。
 彼はつかつかと前へと出ると、私の側に立つ。いいか、と言い聞かせるようにして話す。


「あいつが止まった時・・・・・・その時に、この教室へ魔法が送られてくる」

「どんなだ?」

「・・・・・・、大体が上から下へ流れるものだ。──魔法を放って止めるしかない」


 確かにそれはイタズラでは済まされないものだ。スパルタ過ぎやしないだろうか。
 天井を見上げる。女子寮の廊下と同じように照明が埋まっているということ以外は、何も変わりはない。

 そう話していると近づいていた気配が──ピタリと止まった。ディルクを見るが、彼は気づいていないようでしきりに天井あたりを警戒している。


「・・・・・・あの」

「ああ゛? なんだよ、邪魔するってぇならタダじゃおかねぇ──」


 いや、とディルクの怒鳴り声を遮る。


「・・・・・・、止まったぞ、気配」

「っそれを早く言え!!」


 伝えてからの行動は早かった。ディルクに目配せされたドーラは、さっと懐から4つ折りにされた羊皮紙を取り出す。床に広げて呼ぶ。


「こっち!!」


 広げられた紙には、複雑な模様と文字列の並んだ魔法陣が描かれている。その上に小さな手が乗せられた。
 不意にエルミータに手を引かれる。すぐさま魔法陣の側に引き寄せられた。


「ドーラは魔法陣学が得意なのよ、これは結界陣」


 エルミータが指差しで説明していると、ドーラがぼそりと言葉を零す。


「・・・・・・こっちは無理、1人多い」


 そう言ってディルクの方を見る。目を逸らし、舌打ちをした。


「俺だって余分に1人で限界だ。あのクソ野郎のイタズラの威力知ってんだろ?」


 ドーラの結界陣にはエルミータが、ディルクの側にはグリムがいる。もう1人分の余裕はもう、ない。


「大丈夫だ、私自身の身くらい1人で守れる」

「えっちょっと、アゼリカちゃん!?」

「・・・・・・ほっとけ、ああ言ってんだ。1人なら大丈夫だろ」


 あくまでも、スキルによる吸収が上手く出来ているのならばの話である。
 泣きそうな顔のエルミータがこちらを見つめてきたが、静かに呟いたディルクの声でその表情は引き締められた。


「来るぞ」


 その声で天井に黄色に光り輝いたのは、巨大な魔法陣。あれが、と感動する間もなく、ソレの光は輝きを増す。


 瞬間──無数の雷撃が降った。


 耳をつんざくような轟音。机や椅子が跳ね、地面が揺れる。思わずしゃがみこみ、膝を抱えて顔を埋めた。ぎゅっと目を瞑れば、チカチカと明るい光が瞼の裏に走る。


(これが・・・・・・魔法か。想像以上だ)


 雷が束となって私の背を打ち付けている。当たっている感覚はあるけれど、その痛みは全くない。ダメージを負っているとも思えなかった。
 スキルの吸収は本当に出来ていたのか、と雷を背に受けながら安堵する。

 その時あの気配と共に、轟音に混じってガラリと扉の開く音がした。


「おーおー、お前ら生きてっか?」


 姿は見えないが、間延びした低い声で男だとわかる。この状況を見て何の反応もないのは、やはり何度も行われているせいだろうか・・・・・・。

 雷の音によって掻き消される声。しかしディルクだけには聞こえたようで、後方から必死さが混じった罵声が飛んでくる。


「──こんのクソ野郎!! 毎回毎回、こんな目に合わせやがって・・・・・・!!」

「愛のムチだよ。実際、魔力壁強くなってんだろ? 今では人ひとり守ってんじゃねーか」


 時間にして数十秒間。ようやく雷は収まり、眩しかった光も今は薄暗い空間へと戻っている。
 度の越えたに、教室は惨劇──のようにはならなかった。

 立ち上がり見渡すと、ぽつりと呟く。


「・・・・・・思いの外、綺麗なものだな」


 机や椅子の乱れはあるものの、何か破損物があるわけでもない。教室自体も綺麗なもので、傷一つついていなかった。
 それはまるで、先程の光景が嘘だったかのように思えてくる程だ。

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