魔族転生~どうやら私は希少魔族に転生したようで~

厠之花子

文字の大きさ
25 / 29
第1章 異世界に来たのなら、楽しむしかない

22.急な話から始まる

しおりを挟む

 私は絞り出すようにして声を出す。


「・・・・・・、ええっと確かフェンリルが何やら騒いでいたような・・・・・・怖くて私は隠れていたんですけど」


 微かに震える身を縮め上目遣いでエンシャを見つめる。更に、泣きそうな表情をすればもう完璧。目の前で起きた惨劇を見てしまった哀れな被害者の完成だ。
 そう──


 〝 嘘とは息をする程容易いものである 〟


 自然とそう考えた所で、はた、とその思考を停止させた。自分の心に浮かんだ言葉なのに、何故か違和感がある。似たようなネジだが型が合わない──そんな感じだ。


(・・・・・・私はついた嘘を隠し通せる程器用な人間だったか? いや、そんなはずは──)


 思わず俯きかけた、その時。


「なるほどな」


 突然のエンシャの声に、ハッと思考を停止させた。
 バレたかと一瞬思ったが、表情を見る限りそうでも無さそうだ。案の定エンシャは顔を緩めると、優しく私の頭に手を乗せる。


「それは災難だったな。怪我はなかったか?」

「は、はい。隠れていたので、どうにか・・・・・・」

「お主が無事ならば良い・・・・・・すまなかったな、儂が付いてやれなくて」


 とんでもないと私は頭を横に振る。理由は不明だが、このように生かされているだけでも有難いことである。本来であれば喰い殺されていただろうに。


「いえいえ、こうしてもらえているだけでも十分ですので」

「う、うむ。なら良いのだが・・・・・・」


 何故だかエンシャは戸惑っているようだった。何かを言おうとして、だがそれを飲み込む──その繰り返し。結局、何も言わずに目を宙に泳がせる。

 横からため息を吐く音が聞こえた。


「・・・・・・母上様、そろそろお話を」

「あっ、ああ・・・・・・そうだな」


 エンシャは一度目を瞑る。何かを決意すると、真っ直ぐにこちらを見た。紅色の唇が開かれる。


「次の夜、お主には人間の国へと行ってもらう」

「・・・・・・人間の国、ですか」

「ああ、ここから最も遠く離れた国だ」


 顔では精一杯驚いたをしたが、内心は平然とエンシャの話を聞いていた。予想していた日よりも早いが、概ね想定内である。
 わかりました、と笑顔を作ってお辞儀をする。


「短い間でしたが、本当にありがとうございました」

「う、うむ。それでな、訳あってバーバチカも同行するのだが・・・・・・」

「チカちゃんも?」

女子おなご一人では何かと大変だろう。バーバチカなら人間の世界にも慣れておるしな」


 バーバチカの方を向くと本人は了承済みのようで、ふいっと顔をそらされた。どうにも嫌われているようだと私は苦笑する。


「・・・・・・因みに何という国でしょうか?」

「ランバディア帝国だ。──人間の国々の中では指折りの大国だぞ。施設も豊富な上、王都近くは治安も良い」


 それを聞いて、ふむ、と頷いた。

 当然聞き覚えのない国だが、話を聞く限りでは確かにそれは悪くない。施設も豊富だというのだから、護身のための方法を教わる場所だってあるはずだ。もしかしたら学園もあるかもしれない。
 この世界に詳しいバーバチカが付いてきてくれるのも心強い話だ。

 ただ、心残りがあるとすれば──


「・・・・・・どうしても明日の夜、ですか」

「ああ、早ければ早い方がいいのだが・・・・・・どうした?」

「いえ、大丈夫です。明日の夜お願いします」


 エンシャに向けた笑顔の裏で、私は誰に対してでもない舌打ちをする。・・・・・・強いていえば神様に対してだろうか。

 思い浮かべたのは鮮やかな紅い瞳を持つ青年。つい先程出会った同族である。


(あまりにもタイミングが悪すぎる・・・・・・)


 数日あれば色々知ることが出来ただろうに。せっかくのチャンスも一度きりというわけだ。
 満天の星空を仰いで私は虚しい気持ちで呟いた。


「・・・・・・あんまり聞けないかな、これじゃあ」


◇◇
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

ハイエルフの幼女に転生しました。

レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは 神様に転生させてもらって新しい世界で たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく 死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。 ゆっくり書いて行きます。 感想も待っています。 はげみになります。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

処理中です...