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第1章 異世界に来たのなら、楽しむしかない
23.知ることから始まる
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◇◇
目の前には優しく微笑むエンシャと、冷たく見下ろすバーバチカ。
「──じゃあ、儂とバーバチカは出かけるからな。すまんが、今日も洞窟からは離れないように」
「・・・・・・何かあってもボクは知らないからね!!」
次の日の朝、竜の姿へと戻った二人はそう言い残して空へと舞う。風圧で目を細めていると、あっという間に二人の姿は遠ざかっていった。
降り注ぐ暖かな光。澄んだ青空を見るだけで心が軽くなるような気がする。
少しだけ息を吐いて、一人呟いた。真っ直ぐに前方を見る。
「よし、行くか」
──当然、行くのはあの青年の元である。・・・・・・確かに再びフェンリルに襲われるかもしれないという心配はあるし、それが怖くないわけではない。
だが、対抗策はできた。
〝魔素変換〟
その言葉の通り、魔素を何かに変換する能力・・・・・・だと思われる。
あの時は無意識に氷への変換を行っていたが、洞窟へと戻ってから改めてやってみると、氷の他にも炎や電気など魔法の属性のように色々変換できた。
・・・・・・ただ使用の際には、小声でも必ず声に出さなければいけなかったが。
それと、これは偶然発見したことだが、どうやら魔素から生成されたものは魔素の状態に戻すことが出来るらしい。私が変換した魔素でも元の魔素に戻せる、というわけだ。因みにこれは口に出してもいいし、念じても使用可能という親切設計。
とりあえず対抗策ができたことで、心にゆとりが持てたのである。心做しか足取りも軽い。
確か洞窟から真っ直ぐだったよね・・・・・・──昨日の記憶を辿りつつ私は歩を進める。昨日は必死だったけれども、真っ直ぐに進んだはずだ。
──歩くこと数分、ようやく薄暗かった目の前から光が溢れた。と同時に、あ、と声を漏らす。
「やあ、昨日ぶりだね」
フレンドリーに軽く手を振るのは黒髪の青年。昨日と同じように木の幹に腰掛けていた。ただ、出会った時と違うのは、そこに敵意や殺意などは含まれていないという所か。
それでも恐る恐ると傍へと近づく。
「・・・・・・あ、あの、こんにちは」
「何もしないからそんなに警戒しなくていいよ。ほら、座って?」
イサに言われるがまま、私は大人しく膝を抱える。前置きもそこそこに、そんな私の顔を覗き込んでイサは聞く。
「ね、何が聞きたいの?」
少しだけ返答に戸惑った。聞きたいことは山ほどあるが、まずは何から聞けばいいのやら。時間も限られているというのに。
そこであっと思い浮かんだのはイサの台詞。
「あの、黒の魔素を持っているのが希少魔族じゃないんですか?」
私の記憶が正しければこの青年は、黒の魔素持ちは限定されている、というようなことを言っていた気がする。
問われたイサは少しの間考え込むと、そうだよ、と小さく微笑んだ。
「希少魔族と魔族の違いは、魔素が見えるか見えないか。希少魔族の中でも黒い魔素を持っているのは、ほんの少数なんだ──特別な、ね」
「特別・・・・・・」
「黒い魔素は、ご先祖さまの内の一人が残してくれた力。受け継ぐにはある特殊な儀式が必要なんだけど・・・・・・」
そこで言葉を止めると、イサはこちらを見る。困ったように苦笑した。
「君には必要ないのかもね」
「必要ないって・・・・・・じゃあ、なんで私には」
「──今は知らなくていいと思うよ」
少し強い口調で会話を打ち切る。そう言われると、私は何も言えずに押し黙る。その代わり先程言われたことを頭の中でまとめてみる。
(まず、魔族には一部だけど希少魔族と呼ばれる種族がいる。希少魔族は、魔素が見えるという特殊な能力を持つ。希少魔族の中でも、特別な儀式を行った者には黒い魔素が体内で生成される。しかも、それを行ったのは極一部の者・・・・・・か)
そうなると、黒色と白色では何が違うのか。聞いてみると、内包する魔素量の比率が違うのだと言われた。
「魔素量の比率?」
「そう。黒の少しは白のいっぱいって言えばわかりやすいかな? 黒色は白色の魔素を凝縮したものだと考えればいい。・・・・・・少し使っただけでも爆発的な強さになるんだよ」
それに、とイサは言葉を付け足す。
「──黒い魔素を持つ者は固有の能力を持つんだ。・・・・・・これは個々で違うから詳しくは言えないけどね」
「じゃあ、私にも・・・・・・」
「うん、持ってると思うよ」
希少魔族は魔素が見えるだけというのだから、これは魔素操作のことだろうか。・・・・・・どうにもしっくり来ないが。
目の前には優しく微笑むエンシャと、冷たく見下ろすバーバチカ。
「──じゃあ、儂とバーバチカは出かけるからな。すまんが、今日も洞窟からは離れないように」
「・・・・・・何かあってもボクは知らないからね!!」
次の日の朝、竜の姿へと戻った二人はそう言い残して空へと舞う。風圧で目を細めていると、あっという間に二人の姿は遠ざかっていった。
降り注ぐ暖かな光。澄んだ青空を見るだけで心が軽くなるような気がする。
少しだけ息を吐いて、一人呟いた。真っ直ぐに前方を見る。
「よし、行くか」
──当然、行くのはあの青年の元である。・・・・・・確かに再びフェンリルに襲われるかもしれないという心配はあるし、それが怖くないわけではない。
だが、対抗策はできた。
〝魔素変換〟
その言葉の通り、魔素を何かに変換する能力・・・・・・だと思われる。
あの時は無意識に氷への変換を行っていたが、洞窟へと戻ってから改めてやってみると、氷の他にも炎や電気など魔法の属性のように色々変換できた。
・・・・・・ただ使用の際には、小声でも必ず声に出さなければいけなかったが。
それと、これは偶然発見したことだが、どうやら魔素から生成されたものは魔素の状態に戻すことが出来るらしい。私が変換した魔素でも元の魔素に戻せる、というわけだ。因みにこれは口に出してもいいし、念じても使用可能という親切設計。
とりあえず対抗策ができたことで、心にゆとりが持てたのである。心做しか足取りも軽い。
確か洞窟から真っ直ぐだったよね・・・・・・──昨日の記憶を辿りつつ私は歩を進める。昨日は必死だったけれども、真っ直ぐに進んだはずだ。
──歩くこと数分、ようやく薄暗かった目の前から光が溢れた。と同時に、あ、と声を漏らす。
「やあ、昨日ぶりだね」
フレンドリーに軽く手を振るのは黒髪の青年。昨日と同じように木の幹に腰掛けていた。ただ、出会った時と違うのは、そこに敵意や殺意などは含まれていないという所か。
それでも恐る恐ると傍へと近づく。
「・・・・・・あ、あの、こんにちは」
「何もしないからそんなに警戒しなくていいよ。ほら、座って?」
イサに言われるがまま、私は大人しく膝を抱える。前置きもそこそこに、そんな私の顔を覗き込んでイサは聞く。
「ね、何が聞きたいの?」
少しだけ返答に戸惑った。聞きたいことは山ほどあるが、まずは何から聞けばいいのやら。時間も限られているというのに。
そこであっと思い浮かんだのはイサの台詞。
「あの、黒の魔素を持っているのが希少魔族じゃないんですか?」
私の記憶が正しければこの青年は、黒の魔素持ちは限定されている、というようなことを言っていた気がする。
問われたイサは少しの間考え込むと、そうだよ、と小さく微笑んだ。
「希少魔族と魔族の違いは、魔素が見えるか見えないか。希少魔族の中でも黒い魔素を持っているのは、ほんの少数なんだ──特別な、ね」
「特別・・・・・・」
「黒い魔素は、ご先祖さまの内の一人が残してくれた力。受け継ぐにはある特殊な儀式が必要なんだけど・・・・・・」
そこで言葉を止めると、イサはこちらを見る。困ったように苦笑した。
「君には必要ないのかもね」
「必要ないって・・・・・・じゃあ、なんで私には」
「──今は知らなくていいと思うよ」
少し強い口調で会話を打ち切る。そう言われると、私は何も言えずに押し黙る。その代わり先程言われたことを頭の中でまとめてみる。
(まず、魔族には一部だけど希少魔族と呼ばれる種族がいる。希少魔族は、魔素が見えるという特殊な能力を持つ。希少魔族の中でも、特別な儀式を行った者には黒い魔素が体内で生成される。しかも、それを行ったのは極一部の者・・・・・・か)
そうなると、黒色と白色では何が違うのか。聞いてみると、内包する魔素量の比率が違うのだと言われた。
「魔素量の比率?」
「そう。黒の少しは白のいっぱいって言えばわかりやすいかな? 黒色は白色の魔素を凝縮したものだと考えればいい。・・・・・・少し使っただけでも爆発的な強さになるんだよ」
それに、とイサは言葉を付け足す。
「──黒い魔素を持つ者は固有の能力を持つんだ。・・・・・・これは個々で違うから詳しくは言えないけどね」
「じゃあ、私にも・・・・・・」
「うん、持ってると思うよ」
希少魔族は魔素が見えるだけというのだから、これは魔素操作のことだろうか。・・・・・・どうにもしっくり来ないが。
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