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彼との遭遇
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放課後。校門前で待っていた砂月と帰宅する。
そして砂月が見てない隙を見計らい、「ちょっと出かけるよ。もしかしたら、遅くなるかもしれない」と母親に伝えて、素早く家を出た。
本屋で時間を少し潰してから、アニスとの待ち合わせ場所へ向かう。途中、なんとなーく後ろを見る。砂月か雪乃がいるかな? と思ったのだ。だけど、誰もいなかった。
空那は、ホッとする。
だって、もしもアニスの家に遊びに行くなどと知られたら、どちらも絶対に付いてきたがるだろう。アニスがどういうつもりで誘ったのかわからないのだから、勝手な行動で迷惑はかけられない。
(でも……雪乃だったら、きっと俺みたいに先輩の理解者になってくれるな。砂月も失礼だけど根はいい子だから、先輩を邪険にしたりしないだろ)
……いつか。
いつの日か、アニスを含めた四人で、遠出の計画でも立てたいものだ。この前世騒ぎに決着がついたら、そんな日も来るのだろうか?
結局、自分が彼女らにもっとも色濃く感じているのは、『恋』ではなくて『愛』や『情』なのだ。
(恋は下心、愛は真心なんて……昔の人は、上手いこと言うぜ!)
恋という字は心が下にあり、愛は真ん中に心がある。ついでに言えば、情は心が寄り添ってる。
だったらいくら可愛くっても、下心に流されて、彼女達を抱いてしまうのは、やっぱりいけないことなんだろうか……なんて事を考えながら、商店街のアーケード入り口に向かう。すると、アーチの下にアニスが座り込んでいる。
空那は手を振って声をかけた。
「アニス先輩!」
アニスが空那を見て、立ち上がる。トテトテっと歩いて来ると、左手で空那の手をギュッと握った。
細くて、頼りない指だった……力を入れたら、壊れてしまいそうな気さえする。
アニスは、彼の手を引いて歩き出す。
途中、商店街の肉屋でコロッケと焼き鳥を買い求め、惣菜屋で酢豚のパックを買った。さらにコンビニに入って、1リットルのコーヒー牛乳を購入する。
連れ回されながら、空那は聞いた。
「それ、晩ご飯ですか?」
すると、こくりと頷く。そして小さな声で、
「たべて」
「あ……はい!」
ようやく、アニスの目的がわかった。どうやら空那は、夕飯にお呼ばれしたらしい。
アニスに手を引かれたまま、商店街を出る。そして次に連れて行かれたのは、駅前の一角にある、打ちっぱなしのコンクリートの建物だった。
表札に『炙山』とある。どうやら、ここが炙山家らしい。
スチール製のシンプルな扉を開けて入ると、中は薄暗い。突き当たりまでの廊下が伸びて、等間隔に頼りない照明が、奥の方へと続いている。
中に入ると、アニスはやっと手を離す。そして靴を脱がず、電気もつけずに入っていく。
空那は躊躇したが、靴箱も、玄関と言うべき部分もないので、仕方なしに土足のままで追いかけた。
長い長い廊下を、テクテクと歩く。途中で、何度も何度も左に折り返す。
通路は、下に向かって傾斜している。どうやら螺旋を描きながら、地下へと向かっているようだ。
しかしまさか、上ではなく下に向かうとは……構造を含め、なんとも不思議な家である。
気づくと廊下の壁に、額縁に入った写真が貼ってあった。一枚は、女性の写真である。薄暗くて、よく見えないが、穏やかな笑いを浮かべ、どこか眠そうな目をしている。
……これはもしかして、アニスの母なのだろうか?
そんな事を思う。それに混じって山奥の写真と、この家の周辺、さらに工事現場の写真も。
ビックリするほど長い廊下は、ついに終点を迎える。
通路の先に、塵ひとつ落ちてないタイル張りの広い部屋があった。
中央に、ダイニングテーブルと四脚の椅子がある。部屋の端にはズラリと並んだスチールラック。ラックには生活用品が並べられている。
アニスが中に入ると、抑揚のない声が響く。
「アニス。ご馳走、買ってきたか?」
アニスが、こくりと頷いた。
無言で棚から大皿を取り上げ、そこにコロッケと焼き鳥、それと酢豚を乗せる。さらに人数分のグラスに、コーヒー牛乳が注がれる。
それが……アニスの考える、ご馳走なのだろうか?
部屋に入り、彼を見て、空那はゴクリと喉を鳴らす。また、抑揚のない声が語る。
「はじめまして。私は、アニスの父だ。正確な名前は君達には発音できないため、この国の慣習にならい、苗字で炙山父と呼称して欲しい」
そう言ったアニスの父は、とても個性的な顔をしていた。
決してハンサムではないが、『整った顔』という表現をしても、間違ってはいないだろう。なにしろ、左右対称で幾何学的なのだから。
大きく張り出した頭はスペードのエースに似ている。背は……1メートル60センチくらいだろうか?
本来は、もっと高かったのだろう。しかし腹から下が、ガスバーナーで焼き切られたように、無残な断面を晒して無くなっている。
全体のシルエットは、中世の拷問器具のアイアンメイデンにそっくりだ。
煌々と輝く両目に、鈍く光る硬質の肌。
腕から伸びる爪は三本で、鋭く長く尖っている。
歯に衣着せぬ言い方をするならば……どうみても、まともな人間ではない。
……と、いうよりも。彼はおそらく、地球人ではない。
彼は……『アニスの父』を名乗る彼は……。
俗に言う3メートルの宇宙人こと、『フラットウッズ・モンスター』だった!
そして砂月が見てない隙を見計らい、「ちょっと出かけるよ。もしかしたら、遅くなるかもしれない」と母親に伝えて、素早く家を出た。
本屋で時間を少し潰してから、アニスとの待ち合わせ場所へ向かう。途中、なんとなーく後ろを見る。砂月か雪乃がいるかな? と思ったのだ。だけど、誰もいなかった。
空那は、ホッとする。
だって、もしもアニスの家に遊びに行くなどと知られたら、どちらも絶対に付いてきたがるだろう。アニスがどういうつもりで誘ったのかわからないのだから、勝手な行動で迷惑はかけられない。
(でも……雪乃だったら、きっと俺みたいに先輩の理解者になってくれるな。砂月も失礼だけど根はいい子だから、先輩を邪険にしたりしないだろ)
……いつか。
いつの日か、アニスを含めた四人で、遠出の計画でも立てたいものだ。この前世騒ぎに決着がついたら、そんな日も来るのだろうか?
結局、自分が彼女らにもっとも色濃く感じているのは、『恋』ではなくて『愛』や『情』なのだ。
(恋は下心、愛は真心なんて……昔の人は、上手いこと言うぜ!)
恋という字は心が下にあり、愛は真ん中に心がある。ついでに言えば、情は心が寄り添ってる。
だったらいくら可愛くっても、下心に流されて、彼女達を抱いてしまうのは、やっぱりいけないことなんだろうか……なんて事を考えながら、商店街のアーケード入り口に向かう。すると、アーチの下にアニスが座り込んでいる。
空那は手を振って声をかけた。
「アニス先輩!」
アニスが空那を見て、立ち上がる。トテトテっと歩いて来ると、左手で空那の手をギュッと握った。
細くて、頼りない指だった……力を入れたら、壊れてしまいそうな気さえする。
アニスは、彼の手を引いて歩き出す。
途中、商店街の肉屋でコロッケと焼き鳥を買い求め、惣菜屋で酢豚のパックを買った。さらにコンビニに入って、1リットルのコーヒー牛乳を購入する。
連れ回されながら、空那は聞いた。
「それ、晩ご飯ですか?」
すると、こくりと頷く。そして小さな声で、
「たべて」
「あ……はい!」
ようやく、アニスの目的がわかった。どうやら空那は、夕飯にお呼ばれしたらしい。
アニスに手を引かれたまま、商店街を出る。そして次に連れて行かれたのは、駅前の一角にある、打ちっぱなしのコンクリートの建物だった。
表札に『炙山』とある。どうやら、ここが炙山家らしい。
スチール製のシンプルな扉を開けて入ると、中は薄暗い。突き当たりまでの廊下が伸びて、等間隔に頼りない照明が、奥の方へと続いている。
中に入ると、アニスはやっと手を離す。そして靴を脱がず、電気もつけずに入っていく。
空那は躊躇したが、靴箱も、玄関と言うべき部分もないので、仕方なしに土足のままで追いかけた。
長い長い廊下を、テクテクと歩く。途中で、何度も何度も左に折り返す。
通路は、下に向かって傾斜している。どうやら螺旋を描きながら、地下へと向かっているようだ。
しかしまさか、上ではなく下に向かうとは……構造を含め、なんとも不思議な家である。
気づくと廊下の壁に、額縁に入った写真が貼ってあった。一枚は、女性の写真である。薄暗くて、よく見えないが、穏やかな笑いを浮かべ、どこか眠そうな目をしている。
……これはもしかして、アニスの母なのだろうか?
そんな事を思う。それに混じって山奥の写真と、この家の周辺、さらに工事現場の写真も。
ビックリするほど長い廊下は、ついに終点を迎える。
通路の先に、塵ひとつ落ちてないタイル張りの広い部屋があった。
中央に、ダイニングテーブルと四脚の椅子がある。部屋の端にはズラリと並んだスチールラック。ラックには生活用品が並べられている。
アニスが中に入ると、抑揚のない声が響く。
「アニス。ご馳走、買ってきたか?」
アニスが、こくりと頷いた。
無言で棚から大皿を取り上げ、そこにコロッケと焼き鳥、それと酢豚を乗せる。さらに人数分のグラスに、コーヒー牛乳が注がれる。
それが……アニスの考える、ご馳走なのだろうか?
部屋に入り、彼を見て、空那はゴクリと喉を鳴らす。また、抑揚のない声が語る。
「はじめまして。私は、アニスの父だ。正確な名前は君達には発音できないため、この国の慣習にならい、苗字で炙山父と呼称して欲しい」
そう言ったアニスの父は、とても個性的な顔をしていた。
決してハンサムではないが、『整った顔』という表現をしても、間違ってはいないだろう。なにしろ、左右対称で幾何学的なのだから。
大きく張り出した頭はスペードのエースに似ている。背は……1メートル60センチくらいだろうか?
本来は、もっと高かったのだろう。しかし腹から下が、ガスバーナーで焼き切られたように、無残な断面を晒して無くなっている。
全体のシルエットは、中世の拷問器具のアイアンメイデンにそっくりだ。
煌々と輝く両目に、鈍く光る硬質の肌。
腕から伸びる爪は三本で、鋭く長く尖っている。
歯に衣着せぬ言い方をするならば……どうみても、まともな人間ではない。
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