二次コンでキモオタデブな俺が、異世界で幼女のおっさんとイチャラブする!

森月真冬

文字の大きさ
34 / 58

シャルロットは約束した

しおりを挟む
 さて、デュラハン退治への旅立ちの朝である。
 天気は秋晴れで、風は少し冷たかった。
 俺が持つ荷物は、2人分の着替えと小物くらい。隣にいるマリオンの旅装りょそうは、真っ白なフレアコートを着て、日差しが強いので白いツバ広帽を被ってる。手には、弁当を詰めたバスケットを持っていた。見た目だけなら、誰もが貴族の令嬢と思うだろう。
 屋敷の前に、4人乗り2頭仕立ての馬車が止まる。御者台に座っているのはウラギールだ。
 ウラギールが俺を見て、言う。

「おはようございやす、ジュータさん! どうぞ、乗ってください!」

 馬車に乗り込むと、中にはシャルロットがいた。腕を組み、目を瞑っている。かたわらには『霊剣マクドウェル』が置いてあった。
 マリオンはシャルロットにすっかり苦手意識を持ってしまったらしく、俺の陰に隠れるようにしてコソコソと乗り込んだ。俺らが座席に座る同時に、馬車がゴトゴトと進み出す。
 するとシャルロットが目を見開き、マリオンに真っ直ぐに頭を下げて言った。

「幼女よ……いや、マリオン殿っ! 先日は、申し訳ない事をしました。すべて、私の勘違いだった。あれは単なる『ごっこ遊び』であり、あなたは悪の組織の総帥ではないと聞きました。ジュータ殿も、その遊びに付き合っていただけであったとか……かような事情とは露知らず、不快な思いをさせました」

 なんとウラギールは俺がした説明を、しっかりシャルロットに言い聞かせてくれたらしい。
 こいつめ、いくら洗脳されてると思い込んでたからって、俺らがどれだけ訴えても無視しやがったくせに……やっぱシャルロットは、彼にしかコントロールできないんだなぁ。
 ま、ひとつ訂正するなら、『俺の遊びにマリオンが付き合ってくれた』んだけどねっ!
 マリオンはムッツリした顔で、外の景色を眺めながら言った。

「もう、いいよ」

 だが、シャルロットは首を振る。

「いいや、それでは私の気がすみません! 救国の英雄であるジュータ殿の家族を泣かしたままでは、騎士の名折れ! どうか、償いをさせて欲しい……お手を失礼します」

 それから揺れる馬車の床に片膝をつき、マリオンの片手を取った。
 マリオンの顔に困惑が浮かぶ。

「え、おい……なんだよ?」

 シャルロットは真剣な表情で、マリオンの手の甲にキスをする。

「シャルロット・ドゥ・ヴィリエ……騎士の誇りにかけて。これから先、もしも貴女に危機が訪れし時は直ちにさんじ、剣となり盾となって死力を尽くしてお守りすると……そう誓わせていただきます!」

 マリオンは、目を白黒させながら手を引っ込めて言う。

「だ、だから……いいってば! やめろよ、そういうの! オレ、もう気にしてないからさ……ええっと、許すから。あ、あの……シャルロット。オレ、朝メシにおにぎり作って来たんだけど……食べるか?」

 シャルロットは、にっこりと笑って応える。

「許しをもらい、嬉しく思う。感謝します、マリオン殿。ふむ、『おにぎり』か……初めて耳にする食べ物だな、いただきましょう!」

 馬車は王都の門を抜け、長閑のどかな田園風景を進む。
 窓の外には暖かな陽光が降り注き、金色の稲穂が風に踊り、その上空を数匹の鳥達がゆっくりと旋回している。
 俺らは、それを眺めながらおにぎりを食べた。具は煮卵と、ベーコンチーズの二種である。海苔がないのは寂しいが、それは贅沢と言うものだろう。代わりにサラダ菜が巻いてある。
 シャルロットはおにぎりが気に入ったらしく、3つも平らげた。
 御者台に座るウラギールにも差し入れると、「これは、すいやせんね」と言いながら、ひとつを食べた。
 食事が終わり、暇になってしまう。馬車には沈黙だけが満ちる。
 するとシャルロットが、マリオンに言う。

「マリオン殿。……もしかしてあなたは、歌が上手いのでありませんか? 私は芸術がわからぬ女だが、先日のジュータ殿の熱狂を見るに、きっとかなりの物だと思うのです。私は、あなたの歌をちゃんと聞いてみたい。よかったら今、歌って欲しい」

 マリオンが頬を染める。

「バカぁ……なに言ってんだよ、シャルロット。こんなとこで、歌えるわけないだろ!」

 おおっ、偉いぞシャルロット!
 マリオンの歌が聞きたいのは俺も同じだ、加勢しよう!

「いいじゃないか、マリオン! こうやって馬車に乗ってるだけじゃあ、暇だしさ。せっかくだから、聞かせてやれよ」

 マリオンは帽子で目を隠して唇を尖らせ、モジモジしながら言う。

「ヤ、ヤダよ……。だってそんなの……恥ずいじゃんッ!」

 するとシャルロットは、不思議そうに首を傾げた。

「なぜだ……なぜ、歌うのが恥ずかしいのです? 下手なら恥ずかしかろうが、上手ければむしろ、得意になって然るべきでしょう? ……ううむ、意味がわからぬ。どうして上手くて恥ずかしいのか、納得のいく説明をして欲しい!」

 シャルロットがあーだこーだといつまでもうるさいので、ついにマリオンは折れる。

「あー、わーったよ! ……歌う、歌うよ。歌えばいいんだろ。でもお前ら、絶対にからかうなよ?」

 そう言ってマリオンは帽子を脱ぎ、胸に手を当て落ち着ける。そして何度か深呼吸をしてから、大きく息を吸い込んで、口を開いた。
 高く美しく、透き通った声が響く……マリオンが歌ったのは『鳥の空』だった。
 泣けるエロゲソングや神曲ランキングでは、必ずと言っていいほど名前が上がる名曲だ。エロゲソングの中でも、随一の知名度を誇っている。
 それは切なく迫力がある旋律と、心揺さぶる情緒のある歌詞で……マリオンは目を閉じて、とても気持ちよさそうにのびのびと歌った。大きな声で、時にビブラートをかけ、強い感情を込めて歌ってくれた。
 シャルロットは目をつぶり、黙ってそれを聞いていた。そして歌が終わると、ホロホロと涙を流して言った。

「美しい歌でした……大変、心に染み入る歌です!」

 御者台から、ウラギールも言う。

「ええ、本当に素晴らしい歌でやす! ……あっしはこう見えて、歌劇鑑賞が趣味なんですがね。この歌は何というか、とても新しい。まるで歌の歴史が、数百年は進んだ気分でさあ。こりゃ、誰が作ったんでしょう……そういや、ジュータさんとマリオンさんは、同じ世界の出身だそうで? 今のは、そこの歌なんですか?」

 俺が別世界から転生した事は、デビットとウラギール、そして国王だけに言ってある。
 久しぶりに聞いた『鳥の空』の余韻よいんに浸ってた俺は、その言葉に頷いた。

「ああ、俺の国の歌だよ。……やっぱ、『鳥の空』はいいなぁ!」

 それも、マリオンの歌唱力あってのものだが。
 マリオンの歌は、やはりいい。
 アカペラでここまで聞かせるなんて、これはもう立派な才能だろう。
 俺とウラギールとシャルロットは、マリオンの歌を褒めちぎった。マリオンはその後、リクエストに応じて、恥ずかしがりながらも5曲を歌ってくれた。
 見事に全部、エロゲソングだった……やっぱマリオンは、俺の尊敬するマリオンだぜ! そこにシビれる、あこがれるゥ!!

 馬車で半日ほど進んだ所に小さな町があり、そこで食料品を購入した。普通なら、ここで宿を取るべきなのだが……しかし、デュラハン退治が遅れたら、誰かが殺されるかもしれない。
 国宝の持ち出しや旅の支度で、出発まで一日半が掛かったわけだし、ゆっくり休んでいられない。俺たちはデュラハンにぶつかるまで、国境方面への道のりをノンストップで進むつもりだった。

 小休止を取って馬を休ませた後、町を出る。
 その頃にはマリオンはもう、すっかり疲れてしまったようで、揺れる馬車の中で俺に寄りかかってヨダレを垂らし、「くかー」とイビキをかいて寝てしまう。
 うーん、幼女の身体は体力なくて、ほんと大変そうだよなぁ……俺はマリオンの頭を膝に乗せ、自分の上着を掛けてやりながら、そう思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

付きまとう聖女様は、貧乏貴族の僕にだけ甘すぎる〜人生相談がきっかけで日常がカオスに。でも、モテたい願望が強すぎて、つい……〜

咲月ねむと
ファンタジー
この乙女ゲーの世界に転生してからというもの毎日教会に通い詰めている。アランという貧乏貴族の三男に生まれた俺は、何を目指し、何を糧にして生きていけばいいのか分からない。 そんな人生のアドバイスをもらうため教会に通っているのだが……。 「アランくん。今日も来てくれたのね」 そう優しく語り掛けてくれるのは、頼れる聖女リリシア様だ。人々の悩みを静かに聞き入れ、的確なアドバイスをくれる美人聖女様だと人気だ。 そんな彼女だが、なぜか俺が相談するといつも様子が変になる。アドバイスはくれるのだがそのアドバイス自体が問題でどうも自己主張が強すぎるのだ。 「お母様のプレゼントは何を買えばいい?」 と相談すれば、 「ネックレスをプレゼントするのはどう? でもね私は結婚指輪が欲しいの」などという発言が飛び出すのだ。意味が分からない。 そして俺もようやく一人暮らしを始める歳になった。王都にある学園に通い始めたのだが、教会本部にそれはもう美人な聖女が赴任してきたとか。 興味本位で俺は教会本部に人生相談をお願いした。担当になった人物というのが、またもやリリシアさんで…………。 ようやく俺は気づいたんだ。 リリシアさんに付きまとわれていること、この頻繁に相談する関係が実は異常だったということに。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...