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悪魔の次元
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剣に封印されし、悪魔グラハム。
そいつによって作られた別次元……それはドロドロとした悪意に満ちた、どこまでも歪んだ空間だった。
空気は淀み、足元は泥濘みたいに柔らかで頼りなく、靴底を通してウゾウゾと何かが蠢く感触がする。陰という陰には常に不気味な気配を感じ、遠くからは獣の断末魔のような笑いが響く。
腐った血溜まりみたいに赤く濁った天には、真っ黒な太陽が昇り、その傍らには鋼色の雲が浮いている……それは良く見ると、硬質な魚が空をウヨウヨと泳ぐ光景なのだ。
30メートルほど離れた場所に、巨木が聳え立っていた。表面は鈍色で朽ちたようにささくれて、まばらな葉は錆びた鉄クズそっくりだ。
デュラハンはその木の下で、胡坐を掻いていた。その姿は、異次元に住む怪人そのものである。
ピクリとも動かない。だが、ボロボロになっていたはずの鎧や、砕けていた兜はきれいに直っている。左手に己の首を、右手に『魔剣グラハム』を持っていた。
俺は『霊剣マクドウェル』を構えて、油断なく前へと踏み出す。
……すると耳に、何者かが語りかけてきた。
なあ、お前。お前、お前だよ。
石動柔太、お前だよ。
お前……何しようとしてんだい?
デュラハンを倒そうとしてんだろ?
でもさ、お前は『マリオンを守る』と誓ったんじゃないのかい?
あそこにいるデュラハンの身体は、マリオンの身体だぞ。
それを壊しちゃって……いいのかなぁ?
マリオンは、なんて思うかな?
きっと、めちゃくちゃ悲しんで泣きまくるぞ!
お前を嫌いになるんじゃない?
それともガッカリして、お前の元から去るんじゃないか?
下手したら、絶望で自殺しちゃったりして……?
なあ……やめとけよ。
それより、俺様が協力してやる。
俺様が力になってやる。
俺は立ち止まって、呟いた。
「お前は……。まさか、悪魔か……グラハムなのか!?」
声は、ゲラゲラと笑ってから答えた。
ああ、そうだよ!
俺様はグラハム……神さえ恐れる大悪魔だ!
実は言えば俺様、もうカノッサの手元はウンザリなんだよなぁ。
お前がもし、カノッサを倒してくれるなら、俺様はお前の物になってもいいぜ?
俺様が力を貸せば、きっと傷ひとつなくマリオンの身体を回収できるだろう。
そしたら、マリオンはお前に感謝する。
……素敵なマリオンの笑顔が見放題。
どうだい、魅力的な提案だろ?
お前、マリオンに大好きになってもらえるぜ?
「あ……それ、いいなぁ。俺、マリオンに喜んで欲しいよ」
だろ?
だったら、まずは……その剣を手放すんだ!
それは強力すぎる。
使ったら、マリオンの身体が壊れちまうぞ!
そして、ほら……目の前にある剣を……俺様を……『魔剣グラハム』を掴むんだ!
ふと気づくと、目の前には1本の剣が浮かんでいた。
幅広の真っ黒い大剣だった。
柄には、微細で華麗な彫刻が施されている。
濡れたように光る刃は、空気さえも切り裂きそうに鋭い。
……すごく強そうだ。
なんだか『霊剣マクドウェル』より、こっちの方が良い武器に感じる。
これを持てば、俺は無敵になれるだろう……そうだ。
俺に相応しい武器は、きっとこれなんだ!
マリオンに喜んでもらうには、この剣が必要なん……で、い、痛っ。い、いて……いててて? 痛い、痛い、痛い、いったぁーっ!?
突然、胸の辺りがヂクヂクと痛み出す。俺は慌てて懐に手を突っ込み、中を探った。
出てきたのは、フォクシーの尻尾の毛を入れたお守り袋だった。
針のように尖った毛が、至るところから飛び出している。
先っぽに血が付いてる所を見ると、これが肌に刺さって痛みを出していたのだろう。
と、悔しそうな悪魔の声が響いた。
けえーっ! こいつ、魔女のアミュレットなんか持ってやがるーっ!
俺はもう一度、目の前を見る。
そこに浮いてたはずの『魔剣グラハム』は、影も形も消え失せていた。
……えっ。っていうか、俺……今、なにをやろうとしてた……?
バカか俺は!?
自ら『霊剣マクドウェル』を捨てるとか、なんてアホな事を考えてんだ!
そもそも『魔剣グラハム』は、さっきからデュラハンが持ってるわけで、それが手元に現れるわけねーだろが!?
「うおおーっ!? あ、あ、あっ……あっぶねええーーーーっ!!」
と、デュラハンが『魔剣グラハム』を手に、立ち上がる。
そして低い声で叫んだ。
「やはり、グラハムの誘惑如きには負けぬか! 任せておけば、楽に始末できると思ったが……!」
俺は『霊剣マクドウェル』を構えると、ドッキンドッキンと脈打つ心臓を感じながら足をガクガクさせて叫び返す。
「う、うるせえーっ! すんげえ危なかったぞ、この野郎!? めっちゃ誘惑に負けてたわ、超ギリギリだったぁ! てめえ、こんな気味悪いとこに引きこもりやがって……あーもう、SAN値が限界だ! とっとと、外に出てもらうぞ!」
言うや否や、俺は『メガクラッシュ』を発動した!
雷光と衝撃が周囲を走り、空中に亀裂がバリバリと走る。
異次元が壊れる瞬間に、また悪魔の声が響いた。
うぎゃはははっ! なんだこりゃあ、すんげえスキル!
このグラハム様以上に強力な魔剣に、異次元まで入ってくる手腕、そして獣人族の貴重な毛を使った魔女のアミュレットまで……お前、見た目に反して実は凄い奴なのかもな?
いいぜ……もしもカノッサを倒して……そしていずれ、あのクソったれな神に喧嘩を売る事があったなら……その時は、俺様が力を貸してやる!
それを聞いた俺は、力いっぱいに怒鳴り返す。
「余計なお世話だ! お前の助けなんていらねえよ、さっさと失せろーっ!」
その叫びと共に、異次元空間は粉々に砕け散った。
そいつによって作られた別次元……それはドロドロとした悪意に満ちた、どこまでも歪んだ空間だった。
空気は淀み、足元は泥濘みたいに柔らかで頼りなく、靴底を通してウゾウゾと何かが蠢く感触がする。陰という陰には常に不気味な気配を感じ、遠くからは獣の断末魔のような笑いが響く。
腐った血溜まりみたいに赤く濁った天には、真っ黒な太陽が昇り、その傍らには鋼色の雲が浮いている……それは良く見ると、硬質な魚が空をウヨウヨと泳ぐ光景なのだ。
30メートルほど離れた場所に、巨木が聳え立っていた。表面は鈍色で朽ちたようにささくれて、まばらな葉は錆びた鉄クズそっくりだ。
デュラハンはその木の下で、胡坐を掻いていた。その姿は、異次元に住む怪人そのものである。
ピクリとも動かない。だが、ボロボロになっていたはずの鎧や、砕けていた兜はきれいに直っている。左手に己の首を、右手に『魔剣グラハム』を持っていた。
俺は『霊剣マクドウェル』を構えて、油断なく前へと踏み出す。
……すると耳に、何者かが語りかけてきた。
なあ、お前。お前、お前だよ。
石動柔太、お前だよ。
お前……何しようとしてんだい?
デュラハンを倒そうとしてんだろ?
でもさ、お前は『マリオンを守る』と誓ったんじゃないのかい?
あそこにいるデュラハンの身体は、マリオンの身体だぞ。
それを壊しちゃって……いいのかなぁ?
マリオンは、なんて思うかな?
きっと、めちゃくちゃ悲しんで泣きまくるぞ!
お前を嫌いになるんじゃない?
それともガッカリして、お前の元から去るんじゃないか?
下手したら、絶望で自殺しちゃったりして……?
なあ……やめとけよ。
それより、俺様が協力してやる。
俺様が力になってやる。
俺は立ち止まって、呟いた。
「お前は……。まさか、悪魔か……グラハムなのか!?」
声は、ゲラゲラと笑ってから答えた。
ああ、そうだよ!
俺様はグラハム……神さえ恐れる大悪魔だ!
実は言えば俺様、もうカノッサの手元はウンザリなんだよなぁ。
お前がもし、カノッサを倒してくれるなら、俺様はお前の物になってもいいぜ?
俺様が力を貸せば、きっと傷ひとつなくマリオンの身体を回収できるだろう。
そしたら、マリオンはお前に感謝する。
……素敵なマリオンの笑顔が見放題。
どうだい、魅力的な提案だろ?
お前、マリオンに大好きになってもらえるぜ?
「あ……それ、いいなぁ。俺、マリオンに喜んで欲しいよ」
だろ?
だったら、まずは……その剣を手放すんだ!
それは強力すぎる。
使ったら、マリオンの身体が壊れちまうぞ!
そして、ほら……目の前にある剣を……俺様を……『魔剣グラハム』を掴むんだ!
ふと気づくと、目の前には1本の剣が浮かんでいた。
幅広の真っ黒い大剣だった。
柄には、微細で華麗な彫刻が施されている。
濡れたように光る刃は、空気さえも切り裂きそうに鋭い。
……すごく強そうだ。
なんだか『霊剣マクドウェル』より、こっちの方が良い武器に感じる。
これを持てば、俺は無敵になれるだろう……そうだ。
俺に相応しい武器は、きっとこれなんだ!
マリオンに喜んでもらうには、この剣が必要なん……で、い、痛っ。い、いて……いててて? 痛い、痛い、痛い、いったぁーっ!?
突然、胸の辺りがヂクヂクと痛み出す。俺は慌てて懐に手を突っ込み、中を探った。
出てきたのは、フォクシーの尻尾の毛を入れたお守り袋だった。
針のように尖った毛が、至るところから飛び出している。
先っぽに血が付いてる所を見ると、これが肌に刺さって痛みを出していたのだろう。
と、悔しそうな悪魔の声が響いた。
けえーっ! こいつ、魔女のアミュレットなんか持ってやがるーっ!
俺はもう一度、目の前を見る。
そこに浮いてたはずの『魔剣グラハム』は、影も形も消え失せていた。
……えっ。っていうか、俺……今、なにをやろうとしてた……?
バカか俺は!?
自ら『霊剣マクドウェル』を捨てるとか、なんてアホな事を考えてんだ!
そもそも『魔剣グラハム』は、さっきからデュラハンが持ってるわけで、それが手元に現れるわけねーだろが!?
「うおおーっ!? あ、あ、あっ……あっぶねええーーーーっ!!」
と、デュラハンが『魔剣グラハム』を手に、立ち上がる。
そして低い声で叫んだ。
「やはり、グラハムの誘惑如きには負けぬか! 任せておけば、楽に始末できると思ったが……!」
俺は『霊剣マクドウェル』を構えると、ドッキンドッキンと脈打つ心臓を感じながら足をガクガクさせて叫び返す。
「う、うるせえーっ! すんげえ危なかったぞ、この野郎!? めっちゃ誘惑に負けてたわ、超ギリギリだったぁ! てめえ、こんな気味悪いとこに引きこもりやがって……あーもう、SAN値が限界だ! とっとと、外に出てもらうぞ!」
言うや否や、俺は『メガクラッシュ』を発動した!
雷光と衝撃が周囲を走り、空中に亀裂がバリバリと走る。
異次元が壊れる瞬間に、また悪魔の声が響いた。
うぎゃはははっ! なんだこりゃあ、すんげえスキル!
このグラハム様以上に強力な魔剣に、異次元まで入ってくる手腕、そして獣人族の貴重な毛を使った魔女のアミュレットまで……お前、見た目に反して実は凄い奴なのかもな?
いいぜ……もしもカノッサを倒して……そしていずれ、あのクソったれな神に喧嘩を売る事があったなら……その時は、俺様が力を貸してやる!
それを聞いた俺は、力いっぱいに怒鳴り返す。
「余計なお世話だ! お前の助けなんていらねえよ、さっさと失せろーっ!」
その叫びと共に、異次元空間は粉々に砕け散った。
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