56 / 58
決着
しおりを挟む
ふと気づくと、空には満月が浮かんでいた。
眩いばかりの月光が降り注ぎ、夜とは思えないほどの明るさが周囲に広がる。
地面は焼夷弾でも炸裂したかのように完全に焼け焦げて、『カウンター』によって抉られた痕が4本も走っていた。
俺の足元には、デュラハンの首が転がっている……傷だらけで真っ白な、老人の顔だ。左半分はめちゃくちゃで、目が潰れて頬は裂け、並んだ歯が覗いてる。
身体の方も酷いもので、手足は捥げてバラバラになり、あちこちに千切れ飛んでいた。
数メートルほど離れた所に、ゴロンと胴体が転がっている。鎧は完全に砕け、腹部からは真っ白な臓物がドロドロと溢れる。おそらく魔術によって防腐処理されたであろうそれらは、まるで生々しさを感じられず、一見すると壊れたマネキンの腹に豆腐を叩き付けたみたいだった。
幽霊の大群も、とっくに消えてる。『メガクラッシュ』に巻き込まれたか、それともデュラハンがいなくなって統率を失ったか……どちらかだろう。
俺は、口の中に苦い味が広がるのを感じながら、疲れきった体で深々とため息を吐く。
「はぁ……惨憺たる有り様だな」
……あの後、俺は『メガクラッシュ』を12回も撃った。
デュラハンは片手片足になっても、まだ立ち上がろうとした。ついには両足を失い地面に転がっても、肘までしかない寸詰まりの腕で己の首を構え、口で剣を咥えて『カウンター』を打ち返してきた。
ここまでやるつもりはなかった……だが徹底的にやらなければ、こいつは止められなかったのだ。
と、硬く閉じられていたデュラハンの目が、ゆっくりと開く。
「う、わしは……今まで、なにを……?」
デュラハンの時とは違う。穏やかさを感じられる瞳だ。
俺は首を拾い、持ち上げながら問うた。
「あんた……『剣聖カノッサ』か?」
首は、瞬きを何度かした後で苦しげに呻く。
「ぐっ……そうだ。わしは、カノッサだ。……あ、あの死霊術師はどこだ!? 仲間を、助けにいかなくては……っ!」
それから視線を動かし、自分の首から下がない事に気づき、ハッとした顔をする。
「ああ、そうか! ……わしは……そうだったな。……思い出した」
カノッサは呆けたような表情で、しばし沈黙する。
それから必死の形相で口を開いた。
「た、頼む! わしを倒したお主に、頼みがある! 東の地下迷宮に仲間が囚われたままだ! 彼らは、非道な人体実験をされている。きっと同じように、バケモノに変えられているだろう……どうか、彼らを救ってやって欲しい。お主ならできるはずだ! ……どうか頼む! ……お頼み申しますっ!」
俺は、大きく頷いて見せた。カノッサの首は、安心したように息を吐く。
それから俺は、言おうとした……あなたの仲間のマリオンは、俺と一緒にいると。
だが、伝える前に首は目を閉じて。
それきり、動かなくなってしまった。
眩いばかりの月光が降り注ぎ、夜とは思えないほどの明るさが周囲に広がる。
地面は焼夷弾でも炸裂したかのように完全に焼け焦げて、『カウンター』によって抉られた痕が4本も走っていた。
俺の足元には、デュラハンの首が転がっている……傷だらけで真っ白な、老人の顔だ。左半分はめちゃくちゃで、目が潰れて頬は裂け、並んだ歯が覗いてる。
身体の方も酷いもので、手足は捥げてバラバラになり、あちこちに千切れ飛んでいた。
数メートルほど離れた所に、ゴロンと胴体が転がっている。鎧は完全に砕け、腹部からは真っ白な臓物がドロドロと溢れる。おそらく魔術によって防腐処理されたであろうそれらは、まるで生々しさを感じられず、一見すると壊れたマネキンの腹に豆腐を叩き付けたみたいだった。
幽霊の大群も、とっくに消えてる。『メガクラッシュ』に巻き込まれたか、それともデュラハンがいなくなって統率を失ったか……どちらかだろう。
俺は、口の中に苦い味が広がるのを感じながら、疲れきった体で深々とため息を吐く。
「はぁ……惨憺たる有り様だな」
……あの後、俺は『メガクラッシュ』を12回も撃った。
デュラハンは片手片足になっても、まだ立ち上がろうとした。ついには両足を失い地面に転がっても、肘までしかない寸詰まりの腕で己の首を構え、口で剣を咥えて『カウンター』を打ち返してきた。
ここまでやるつもりはなかった……だが徹底的にやらなければ、こいつは止められなかったのだ。
と、硬く閉じられていたデュラハンの目が、ゆっくりと開く。
「う、わしは……今まで、なにを……?」
デュラハンの時とは違う。穏やかさを感じられる瞳だ。
俺は首を拾い、持ち上げながら問うた。
「あんた……『剣聖カノッサ』か?」
首は、瞬きを何度かした後で苦しげに呻く。
「ぐっ……そうだ。わしは、カノッサだ。……あ、あの死霊術師はどこだ!? 仲間を、助けにいかなくては……っ!」
それから視線を動かし、自分の首から下がない事に気づき、ハッとした顔をする。
「ああ、そうか! ……わしは……そうだったな。……思い出した」
カノッサは呆けたような表情で、しばし沈黙する。
それから必死の形相で口を開いた。
「た、頼む! わしを倒したお主に、頼みがある! 東の地下迷宮に仲間が囚われたままだ! 彼らは、非道な人体実験をされている。きっと同じように、バケモノに変えられているだろう……どうか、彼らを救ってやって欲しい。お主ならできるはずだ! ……どうか頼む! ……お頼み申しますっ!」
俺は、大きく頷いて見せた。カノッサの首は、安心したように息を吐く。
それから俺は、言おうとした……あなたの仲間のマリオンは、俺と一緒にいると。
だが、伝える前に首は目を閉じて。
それきり、動かなくなってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
付きまとう聖女様は、貧乏貴族の僕にだけ甘すぎる〜人生相談がきっかけで日常がカオスに。でも、モテたい願望が強すぎて、つい……〜
咲月ねむと
ファンタジー
この乙女ゲーの世界に転生してからというもの毎日教会に通い詰めている。アランという貧乏貴族の三男に生まれた俺は、何を目指し、何を糧にして生きていけばいいのか分からない。
そんな人生のアドバイスをもらうため教会に通っているのだが……。
「アランくん。今日も来てくれたのね」
そう優しく語り掛けてくれるのは、頼れる聖女リリシア様だ。人々の悩みを静かに聞き入れ、的確なアドバイスをくれる美人聖女様だと人気だ。
そんな彼女だが、なぜか俺が相談するといつも様子が変になる。アドバイスはくれるのだがそのアドバイス自体が問題でどうも自己主張が強すぎるのだ。
「お母様のプレゼントは何を買えばいい?」
と相談すれば、
「ネックレスをプレゼントするのはどう? でもね私は結婚指輪が欲しいの」などという発言が飛び出すのだ。意味が分からない。
そして俺もようやく一人暮らしを始める歳になった。王都にある学園に通い始めたのだが、教会本部にそれはもう美人な聖女が赴任してきたとか。
興味本位で俺は教会本部に人生相談をお願いした。担当になった人物というのが、またもやリリシアさんで…………。
ようやく俺は気づいたんだ。
リリシアさんに付きまとわれていること、この頻繁に相談する関係が実は異常だったということに。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた
歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。
剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。
それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。
そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー
「ご命令と解釈しました、シン様」
「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」
次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる