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Prologue
忘れられない-7
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「俺だって、したくてしてるわけじゃないんだからな? 儀式だと思えば、きっと何も感じない」
「……そっか。儀式ね」
そう思えば、何とか我慢できなくもない。
「だから、この契約は女子限定にしてもらいたいね。男はムリ」
「あのー……、他の方法はないの?」
できることなら、好きでもない人にキスをされるのは遠慮したい。
「あるよ一応。でも、かなりの痛みを伴うからな……」
「痛み?」
(何だろう、すっごく気になる)
「精神的な苦痛、3日間悪夢を見て熱を出すっていう話だよ」
「痛いのは嫌だなー」
「じゃあ今回は優しくするよ。痛くない方法で――」
すぐそばまで近づいた真鳥が、私の左の頬に手を添える。
「まず練習してみようか。目を閉じて、一度頭の中を真っ白にしてから、忘れたい記憶をイメージして」
私は指示されたとおり、目を瞑り柏木先輩と三井先輩が寄り添う姿を思い浮かべた。
思い出したせいで、閉じた瞼に涙が滲んでくる。
先輩に抱いていた想いを、無くしてしまいたい……
そのとき、ふっと額に何か柔らかいものが触れ、私は目を開けようとした――。
*
目を開けたら、すぐそばに真鳥がいて私の二の腕を支えるように触れていた。
驚きのあまり後ずさる。
「気分はどう?」
真鳥は心配そうに私の顔を覗き込んでいた。
「立ちくらみでもしたの? 貧血? 白坂、いきなり倒れ込んできたから」
「あ……ごめん。もう大丈夫。気分は悪くないし」
なんだか、霧が晴れたようにひどくすっきりした気がする。
(私、真鳥と何をしに公園に来たのかな)
めまいがした直前の出来事を、よく覚えていなかった。
不審に思いながらも、その後は真鳥に家まで送ってもらい、家で安静にすることにした。
*
「ねえ結衣。真鳥、どうだった?」
一年生の廊下で未琴にそう聞かれたのは、次の日のことだった。
「え、真鳥……?」
「結衣が気に入りそうかと思って、まずは友達として紹介してみたの」
「どうって……昨日は家まで送ってもらっただけで」
「送ってもらっただけー?」
腕を組んだ未琴はどこか不満げに聞き返した。
「……あ、でも真鳥と会ったあとの私、何だか気分がすっきりした感じがしたよ。意外と癒し系なのかな」
「そっかぁ、良かった。結衣、もっと落ち込んでるかと思ったから。真鳥のこと紹介して良かったかな」
安心したように未琴は笑い、自分のクラスへ入って行った。
(落ち込む? ……私、何かあったかな)
考え込むも、頭の中に靄がかかったみたいに、それ以上探ることはできなかった。
「……そっか。儀式ね」
そう思えば、何とか我慢できなくもない。
「だから、この契約は女子限定にしてもらいたいね。男はムリ」
「あのー……、他の方法はないの?」
できることなら、好きでもない人にキスをされるのは遠慮したい。
「あるよ一応。でも、かなりの痛みを伴うからな……」
「痛み?」
(何だろう、すっごく気になる)
「精神的な苦痛、3日間悪夢を見て熱を出すっていう話だよ」
「痛いのは嫌だなー」
「じゃあ今回は優しくするよ。痛くない方法で――」
すぐそばまで近づいた真鳥が、私の左の頬に手を添える。
「まず練習してみようか。目を閉じて、一度頭の中を真っ白にしてから、忘れたい記憶をイメージして」
私は指示されたとおり、目を瞑り柏木先輩と三井先輩が寄り添う姿を思い浮かべた。
思い出したせいで、閉じた瞼に涙が滲んでくる。
先輩に抱いていた想いを、無くしてしまいたい……
そのとき、ふっと額に何か柔らかいものが触れ、私は目を開けようとした――。
*
目を開けたら、すぐそばに真鳥がいて私の二の腕を支えるように触れていた。
驚きのあまり後ずさる。
「気分はどう?」
真鳥は心配そうに私の顔を覗き込んでいた。
「立ちくらみでもしたの? 貧血? 白坂、いきなり倒れ込んできたから」
「あ……ごめん。もう大丈夫。気分は悪くないし」
なんだか、霧が晴れたようにひどくすっきりした気がする。
(私、真鳥と何をしに公園に来たのかな)
めまいがした直前の出来事を、よく覚えていなかった。
不審に思いながらも、その後は真鳥に家まで送ってもらい、家で安静にすることにした。
*
「ねえ結衣。真鳥、どうだった?」
一年生の廊下で未琴にそう聞かれたのは、次の日のことだった。
「え、真鳥……?」
「結衣が気に入りそうかと思って、まずは友達として紹介してみたの」
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考え込むも、頭の中に靄がかかったみたいに、それ以上探ることはできなかった。
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