俺が追放した役立たずスキルの無能女どもが一流冒険者になって次々と出戻りを希望してくるんだが……

立沢るうど

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第二話……新メンバーを加入させたいんだが……

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「あー、スッキリした。ママ、パーティーメンバー変更届ちょうだい!」

 本当に久しぶりの清々しい気分で、俺の舌もさらによく回るようになった。
 『ママ』は、ここのギルド『マリレイヴズ』のギルドマスターだ。高々二十六歳なのに誰からも『ママ』と呼ばれている。
 もちろん、俺の母親でもなく、俺の両親からも祖父母からもママと呼ばれている、ある意味で謎の人物だ。
 しかし、俺の育ての親と言っても過言ではなく、人生十六年のほとんどは、ママの教えが占めていて、俺にとってはそこまで謎でもない、とても頼れる存在だ。

「まさか、パーティーランクが下がることを覚悟の上で、本当に三人とも追放するとはねぇ。と言っても、ギルドの冒険者登録はそのままだから、完全な追放ではないにしろ、初めて私の所に相談に来た時は驚いたよ。
 まぁ、冒険者パーティーにとっては、目的や価値観を合わせることは大事だからね。
 でも、仲間のポテンシャルを見抜けなくて、後悔するパターンも多い。追放した人から復讐されたパーティーもある」
「アイツらは、それ以前の問題だろ。そもそも、俺はポテンシャルを見抜けない間抜けでも考えなしでもないし、それはママのアドバイスに従って、ちゃんと説明してる。
 仮に一流冒険者になって帰ってきても、『今更戻ってきても、もう遅い! と言うか、まず性格を直せ!』と言い放つさ。逆恨みで復讐に来たら、当然返り討ちにできる想定だ。
 でも、アイツらの最大の欠点は、一言で言えば、当事者意識が足りないことだから。何か言われても全てが他人事なんだよ」

「それはそうでしょ。あの子達にとっては、バクスが全てなんだから。それ以外のことは、自分含めてどうでもいいんだよ」
「だったら、俺の心配事についても少しは考えてほしかったね。結局、一緒にいられなくなったんだから、何も考えてないだろ。アイツらマジでバカだし」

「あー、ぱーぱ、いーうい、あー」
「ほら、よしよし。『クウラ』もバクスが言い過ぎだって」

 ママは抱きかかえていた生後半年の赤ん坊をあやしながら、俺を責める形で意図的に通訳した。
 俺達のやかましいやり取りを、泣きもせずに黙ってじっと見ていた天才児だが、本当にそう言っていたかはママにしか分からない。

「そうだよ、『パパ』。バカなんじゃなくて、何も考えてないだけなんだから」

 続けて、ギルドの受付の奥から、年齢にしては大人びた仕草と言葉を紡ぎながら、幼女とも少女とも言える五歳児が歩いてきた。
 次女クウラと同じく、ママの子どもだ。そして、コイツも天才ときてる。ママからは天才しか生まれてこないのか、それとも父親の因子か。

「聞いてたのか、『ラウラ』。でもそれ、俺が言ったことを逆に言っただけだよな? あと、俺を『パパ』と呼ぶのはやめろっていつも言ってるだろ。本当のパパが悲しむぞ」
「パパはパパだよ。クウラもパパって呼んでるし。そんなことよりも、もっと言い方があるでしょ、言い方が」

「お前はここに来た時のアイツらしか知らないからな。いくらお前が天才だと言っても、現場を知ることは大事だぞ。もうやりたい放題だから。いや、何もしてない放題か……。
 とにかく、冷静なお前でもブチ切れるから。俺をパパと呼ぶなら、『パパ、いつも頑張ってるね』と頭を撫でて褒めてほしいぐらいだ」
「イ、モッ!」
「クウラが『キモい』って」
「いや、イモが食べたいって言ってるんだよな? イモ、美味いからな。反抗期には早すぎるし」
「ゼロ歳児はイモを食べないよ」
「流石、天才ラウラさん。冷静なツッコミをありがとう」
「あ、私をバカにしてる! 『お笑いすら理解できないのに何が天才だよ。天才なら何でも理解しろよ。俺の気持ちも』とか思ってる!」
「いや、流石に当たりすぎてて怖いんだが……」
「そんなに私をバカにするんだったら、パパに私の初めてを捧げてあげないんだから!」
「その方が健全なんだが……。ところで、そのセリフ流行ってんの?」

「そうだよ、バクス。私達双子の初めても捧げたんだから、お腹の中の子どもに悪い影響を与えないようにしてくれないと。ねぇ、『アクセラ』」
「『リセラ』の言う通りだよ。私達の大切な子どもなんだから。ねぇ、バクス」

 二人が何を肯定したのかよく分からなかったが、最初から黙って受付にいた双子の『セプト姉妹』も参戦してきて、女五人衆に囲まれる俺。
 ちなみに、ママの子どもと姉妹の名前が似ているのは、彼女達が従姉妹同士で、命名規則のようなものがあるからだ。

「次から次へと俺を責めてきやがって……。そして、お前達も二人の腹の中の子どもを俺の子どもみたいに言わないでくれるか? それも流行ってるのか? 人を貶める流行りにまんまと乗せられる愚かな者どもかよ。これだから女ってヤツは……」
「あー! いつものパパの差別発言だ! 女の子に囲まれすぎて、こじらせた男の末路だ!」
「いいか、ラウラ。それは被害者意識の強い弱者の発言だ。本当に強い女は、自衛のための攻撃発言を一切しない。ママを見てみろよ。『あ、またバカが何か言ってる』みたいな顔をしてるだけだろ?」
「勇者志望なのに弱者を守ろうともせず切り捨てて、本当の女だけを受け入れるパパ、かっこいいー」
「あ、俺をバカにしてる!」
「親子だねぇ。はいよ、パーティーメンバー変更届」

「おっと、忘れるところだった。じゃあ記入を……」
「あ、あの……!」
「ん?」

 その小さい声に気付いて振り返ると、ワイルドセクシー系美人冒険者とワイルドマッチョ系男冒険者、その二人の後ろ中央には物静かそうな美少女冒険者が立っていた。中央の子が声の主だろう。

「……っゴホン! 話は聞いてたよ! パーティーメンバーが減ったんだろ? あたし達をパーティーに入れてくれないかい? あたしは『ビーズ』、男の方は『シーズ』、この子は『ディーズ』だよ!」
「ほう……。パッと見た感じは前衛の手練れだな。名前から察するに姉弟か親戚関係か。スキルは?」

「親戚。スキルは特殊系で『連携』。戦闘時、あたし達三人が完全に意思疎通できて、お互いの動きに合わせて反射で動ける」
「へぇ、そんなスキルがあるのか、すごいな。よく考えなくても物理現象を越えている。魔法系スキルなら可能なのか。だから特殊系だと」

「そういうこと。さっきいた変身スキルの彼……フォルは肉体魔法系だけど、あたし達は肉体物理と魔法の両方。完全後天性って意味もある」
「なるほど、面白いな。でも、お前達は元々パーティーでギルドに登録してるんだろ? いいのか? そのパーティーがなくなって、俺のパーティーに吸収されても」

「もちろん。そうじゃなけりゃ、前日に騒動を予測した上で、朝一から狙って声をかけないよ。
 アンタの実力はみんなが認めていて、あの三人に合わせていたから今はCランクだけど、それでも将来的には、ギルド創設以来のトリプルAランクに行くんじゃないかって評判だったからね。正直言って、その歴史に名を残したいヤツらは多いんだよ。
 まぁ、そもそも『マリレイヴズ』のCランクは、他のギルドのAランクに相当するほどレベルが高いらしいから、ここで鍛えてから他に行けば、名前自体は残せると思うけどね。
 でも、もし加入できたら、途中で抜ける気はないよ。それに、今の自分達のパーティーにこだわりもない」
「そういう考えもあるのか。俺にはこだわりがあるからな」

「『誰よりも前へ』だろ? パーティー名っぽくないってみんな言ってるけど、あたしは好きだよ」
「ふふっ、その言葉だけでも加入してほしくなったが、まずは実力を見せてもらおうか。アイツらのせいで新メンバーの加入には慎重になってるんだ。
 ママ、これからいつもの所に行く。変更届は帰ってきてからでいいか?」
「今日だけなら、私達が把握できているから問題ないよ」

「よし、それじゃあ行くぞ!」
「了解!」

 ビーズの返事と同時に、他の二人が何も言わず先に出口へ向かった。
 行動が早くて助かる。アイツらならまだここで三十分ぐらい喋っていただろうからな。

 俺は高まる期待を胸に、モンスターの討伐場所である北の森に向かった。
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