俺が追放した役立たずスキルの無能女どもが一流冒険者になって次々と出戻りを希望してくるんだが……

立沢るうど

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第九話……モンスター教養面接を受けたんだが……

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「おはようございます」
「おはよう。早く来たつもりだったんだが、俺より早いな」

「バクスが早く来そうだったので。昨日もそうでしたから」
「そんなこと別に気にしなくていいのに」

 ギルドの受付前で話していた俺達を見て、奥から面接官の一人のリセラが近づいてきた。

「早く集まったのなら、早く始める?」
「いいんですか⁉️」

 ディーズが少し驚きながらリセラに確認するが、俺は特段驚かない。

「こっちも準備できてるし、お互いに待つのは時間の無駄だからね」
「おお! 流石です!」
「実はそれも『ギルド内規程』の『パーティーランク昇格認定試験運用規定』に書いてあるんだ」

「流石、バクス。よっ! 『マリレイヴズギルド規則』を全部記憶している唯一の冒険者!」
「薄々思っていましたが、やっぱり全部覚えているんですか……」
「他のギルドだったらどうだったかな。『マリレイヴズ』の規則は論理的だし、効率を求めているから、自然に覚えやすいんだよ」

「それをいつでも記憶から引き出せるんだから、すごいよねぇ。ママだってできないことだよ。冒険者は一般的に頭を使わない人、いわゆる脳筋が多いけど、バクスは別だよね」
「…………」
「アウトプットが重要だな。特に誰かに教えることが一番記憶に定着しやすい。俺は、あの三馬鹿に何度も教えまくったからな」

 ディーズが唖然としているようなので、俺が声をかけようとしたところ、リセラがギルドの奥を指差した。

「あまり立ち話が長引いてもなんだから、そろそろ行こうか」
「頑張ってね~」

 それまで黙っていたアクセラが、ママから預かっているクウラを抱きながら手を振って、俺達を送り出してくれた。それに応えるように、ディーズも手を振り返していた。緊張はしていないようだ。

 リセラに案内されて面接室に入ると、すでにママが横長テーブルの右横に座っていた。そして、正面右側にリセラが座り、俺達が手前右側に、俺からディーズ、シーズ、ビーズの順に座った。つまり、テーブルの右側に全員寄っている形だ。
 一般的に、面接と言えば、テーブルを挟んで向かい合う形だが、『マリレイヴズ』ではそうではない。正面から対象者を見定める必要はないし、お互いに声を張らなくても聞こえる位置にいた方が良い。何なら、態度が悪くても全く問題がない。それは評価に含まれていないからだ。あくまで、知識と対処法が頭に入っているかのみ問われる。

「それじゃあ、始めようか。ママ、お願い」
「さて、モンスターリストについて質問する前に、この面接の目的について確認しておこうと思う。この場の全員が一度以上昇格してるから、すでに知っていることだけど、確認は大事だからね。
 このモンスター教養面接は、あなた達『誰よりも前へ』がこれから向かう洞窟Bのモンスターの知識とその対処法のみを問い、他の項目については一切評価しない。だから、楽にしていい。普段通りのあなた達で、私達に接してもらってかまわない。緊張する必要もない。仮に緊張しているとしたら、一呼吸置いたり、いつでも深呼吸したりしていい。勉強したことを思い出すまでに時間がかかるようでもね。いくらでも待つから。そのために、昇格は一日一組だけにしてるんだからね。
 確認は以上。早速、質問に移ろうか。洞窟Bに出るモンスター名を一体だけ、バクスが挙げて、ディーズがその特徴について攻撃防御どちらの面も、そしてシーズが通常の倒し方を、ビーズが『マリレイヴズ』流の倒し方をそれぞれ答えてもらう。
 全員答え終わったら一つずれて、ディーズがモンスターを一体挙げて、シーズが特徴、その繰り返し。最終的に、全種類挙げてもらう。特徴はできるだけ細かく挙げてほしいから、一番大変な番だね。分からなかったら、当然他のメンバーに聞いていい。あくまで、効率的な答え方で進めて行くだけだから。まぁ、洞窟Cに比べて、随分種類が少なくなるから、時間はかからないよ。
 ああ、そうだ。声に出したくない人のことを考慮して、運用規定を修正して紙を用意したから、シーズはそれを使っていいよ。
 それじゃあ、バクス」
「ああ。俺が挙げるのは、『ディペンデントフラッシュアイハードボディマジックトロール』だ」

 俺は左を向いて、ディーズの答えを促した。

「前回の教養面接と同様に、正確に答えたいので、自分の考えを一つ一つ確認しながら答えたいと思います。……。
 『ディペンデントフラッシュアイハードボディマジックトロール』はその名の通り、接近した攻撃者に対して、自身の目を激しく光らせて、目潰しを主に多用するトロールです。……。その体は鋼鉄のようで、あらゆる武器を受け付けないとされています。……。
 また、見かけによらず、魔法を多彩に使用してきて、目潰しからも分かるように、どちらかと言うと、攻撃魔法よりも補助魔法を多く使うとのことです。……。そのためか、多くの場合は二体以上で出現し、お互いに補助魔法をかけ合います。……。
 邂逅して最初に光を放ったあとは、積極的に攻めてこず、身を寄せ合って受け主体。……。ただし、離れすぎると、怒涛の攻撃魔法が飛んできます。……。武器は持っておらず、物理は殴打か握り潰しか踏み潰しが主体。……。防御はその鋼鉄の体が自信なのか、皆無です。……。
 ちなみに、他の地方では、『キングトロールプリースト』と呼ばれ、モンスターランクは、二体以上でトリプルA。……。達人以外は、ほぼ為す術なし、らしいです。しかしながら、ノウズ地方の洞窟Bでは最弱のモンスターです」

 ディーズが答えている間、と言うか、答えと答えの間に、素早くシーズが回答を紙に書いていた。

『通常の倒し方は、目を狙い、完全に潰すしかない。少しでも目が開く状態だと、状況は変わらない。閉じた瞼も鋼鉄だから、そのあとは口の中に剣を突き立てる。
 ただし、トロールが両目を瞑っていても、こちらの動きは常に捕捉されているので注意だし、強靭な歯と顎で剣を入れた瞬間、折られる場合もあるから、素早く抜かなければならない。それが達人にしか討伐できない理由。
 ビーズ、頼む!』
「…………。あたしは、このトロールに対しての『マリレイヴズ』流の倒し方を見た時、衝撃を受けたね。それはともかく……コイツは目潰しが効かないと判断した相手には、目を光らせない。それは、トロール自身の目が見えない状態でも判断できる。つまり、コイツは目で何かを判断しているわけではない。では、それはどこか。鋼鉄の肌全体、肌が視覚を持っているという特異体質だ。しかし、その視覚は不十分。
 この性質を利用して、擬似的な目をどこかに描いておけば、常に目潰しが効かない状態を演出できる。一度は目潰しを使わせる必要があるが、その時だけ目を手で覆って、すぐに距離を取ればいい。その後は、目潰しを一切使ってこなくなるっていうとんでもない裏技だ。
 そして、その『擬似目』が描かれた木の板や衣服、まんま『擬似目板』や『擬似目服』は、申請すればギルドから貸与してもらえるという限りない親切設計だ。
 ただし、大事なのはここから。その状態だと、超硬い体が少しずつ柔らかくなっていく。最初に光を放つのは、それと同時に自身の体を硬くするためってわけだ。以降は、目を光らせる度に硬くなる。じゃあ、定期的に目を光らせればいいじゃないかと思うかもしれないが、そうすると、自分も見えなくなるので隙が生まれる。相手に目潰しが効かないのであれば、なおさら危険になる、ということで使えない。
 つまり、目の光に依存し、それがなければ弱点を晒してしまう。これが名前の『ディペンデント』の由来。
 そこで、魔法を使ってこない距離を保ちつつ、最も柔らかくなる時間に、最も柔らかくなる場所に刃を入れることで容易に倒すことができる。答えは、最初に光を放ってから五分後、股間から上に斬り上げる。これが『マリレイヴズ』流だ。
 ちなみに、『五分』や『股間』が名前に含まれていないのは、それらはあくまで最適解の話で、その条件に従わなくとも倒せるから。以上!」

「コホン……。では、二巡目は私からですね。私が挙げるのは『エクスパンディングマジックスライムウォーター』……」



 そして、俺達が洞窟Bでの全てのモンスターを挙げ終わると、面接官二人からは特に異論も出ず、リセラが机に置いていた書類を持ってトントンと揃え始めた。

「お疲れ様でしたー。昼食までは全然時間あるけど、どうする? もう認定同行始める?」
「ありがとう。ディーズが良ければ始めたい」
「はい。私も始めてもらいたいです」

「オーケー。まぁ、バクス達なら、昼過ぎぐらいには終わるでしょ。その分、ラウラちゃんとクウラちゃんとアクセラでご馳走作って待ってるから。それじゃあ、いってらっしゃーい!」
「クウラは作れるのか……? まぁいいや、いってきまーす! よろしく、ママ」
「よろしくお願いします」
「あいよ」

 そして、いよいよ本番の昇格認定士の同行が始まった。
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