俺が追放した役立たずスキルの無能女どもが一流冒険者になって次々と出戻りを希望してくるんだが……

立沢るうど

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第十二話……無能女(自称)が脱退したんだが……

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 『誰よりも前へ』がBランクに昇格してから、二週間が経過していた。
 その間、俺達は洞窟Bの二番口と三番口の少し奥でモンスターの討伐を繰り返していた。初めの内は、モンスターを討伐する度に俺の所にかわいく走り寄ってきたディーズも、今では無表情で俯きがちに歩いてくる。
 完全に馴染んだ、わけではない。おそらく……。

「あの……。どうでしたか?」
「ああ、文句なしだ」

「…………」
「…………」

 この沈黙も何度目だろう。もう慣れたと言えば慣れたのだが、それとは異なる違和感を俺は覚えていた。ディーズはそんな俺に気付いている。

「やっぱり、つまらないですか?」
「……ああ……い、いや! 違う……! 今のは考え事をしていて、つい……」

「…………」
「…………」

 今までとは違う沈黙が訪れたように感じた。こんなバツが悪い時間は初めてだ。空気を変えたい、そんな一心で俺は仕事の話を続けた。

「じゃあ、そろそろ一番口に行くか。もう流石に不安要素はないだろ? もちろん、俺は最初からなかったんだが」
「…………。いえ……それでも……変わらないと思います……何も……。私も……無能ですから……」

 ディーズは泣きそうな声で震えていた。そんな姿は見たくない。俺は彼女の震えを抑えるように両肩にがっしりと手を当てた。

「大丈夫だって! 俺がいるんだ! 怖くない! 前に言ったように、俺が全部やるから! まずは場に慣れよう、な! ディーズは無能じゃない、俺が保証する! 真の無能なアイツらが何もしなくても、俺だけで何とかできたんだから大丈夫だって!」
「…………」

「それとも……ママが言ったように、俺の言葉がプレッシャーになっているのなら、何も言わない。もっと時間が必要なら待つから、遠慮なく言ってくれ」
「…………。違います」

「え?」
「違うんです……。そんなことじゃないんですよ……。私が気にしていることは……。いえ……最初はそうでした。でも、今はこちらの方がずっと大きい……」

「……。分かった。じゃあ、それを言ってくれ。ママは説明しない方が良いこともあると言っていたが、俺が未熟なのか無能なのか、分かる気がしない。それに、俺なら理解できるとも言っていたが、正直な話、このままではずっと分からないと思う。だから……」
「それじゃあ、バクス。私を抱いてください」

「…………は? ……え……っと、それは今ここで抱き締めるとかじゃなく?」
「はい、違います。そしたらきっと……何かが変わる……分かる……。そんな気がするんです」

 ディーズの表情を改めて見ると、とても冗談で言っているようには思えない。うるうるとした瞳で、真剣に俺の目を見つめ、有無を言わせないような、表現しきれないほどにかわいい表情。
 それはきっと俺への好意だろうから、嬉しいことは嬉しいのだが、俺には全く理解できない展開だった。ディーズの中では論理的な展開なのだろう。それを詳しく聞かない方が良いことは俺にも分かる。

「分かったよ……って言うと仕方ないように聞こえて失礼か……。いいだろうディーズ、俺も望むところだ!」
「ありがとうございます。大魔王みたいなセリフの勇者(予定)のバクス様」

「あ、バカにした!」
「ふふっ、はい。もっとバクスらしい、ロマンティックなセリフが来るのかと思っていましたから」

 そう言って、ディーズは正面から俺に抱き付いてきた。久しぶりに彼女の笑顔を見たような気がする。そのことに嬉しくなった俺は彼女の背中に手を回し、力強く抱き締めた。
 まだ何も解決していないのに、何も考えたくなくなっていた。
 ディーズが抱えていた不安、俺が抱いた違和感、そのどちらも両手から投げ捨てて、俺はその夜、彼女を抱いた。



 朝起きると、俺の横にディーズはいなかった。
 どこを探しても……。
 誰に聞いても……。

 夢でも幻でもない。
 しかし彼女は、『彼女達』はどこにもいなかった。
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