俺が追放した役立たずスキルの無能女どもが一流冒険者になって次々と出戻りを希望してくるんだが……

立沢るうど

文字の大きさ
14 / 36

第十四話……無能だった女が才能を発揮しているんだが……

しおりを挟む
 それからコミュと俺は、パーティーメンバー変更届を以前のように後回しにして、北の森に向かった。
 当時から人数が二人減っているので、最高でもコミュの冒険者ランクより二つ下の洞窟Eにしか行けないが、成長結果を見るには十分だろう。

 これまでは、コミュの『説得及び交渉』スキルをモンスターに使用する場合は、低レベルモンスターにしか通用しないものだった。ここで言う低レベルとは、ノウズ地方で言うところの洞窟Gだ。しかも、対象は一体のみ。例えるなら、虫一匹を説得して洞窟内に帰ってもらうレベルだった。
 洞窟Eでは、最弱の五番口でも普通に凶暴なモンスターが出てくるので、どのような効果が得られるのかは見ものだ。

「やっぱり、この時間の洞窟Eはパーティーが少ないね」
「まだ駆け出しの一組だけか。と言っても、アイツらは最短で昇格していた優秀なパーティーだったような気がする。次の昇格まで、この一番口で金を稼いでるだけだな。ほら、管理パーティーの位置に行くぞ」

「ねぇ、あの右側の男の子、調子悪そうじゃない?」
「え?」

 俺は、思ってもみなかったコミュの言葉を内心で疑ったが、目線の先をよく見てみると、確かに男の動きが若干鈍いし、対峙しているモンスターのレベルに比べて、異常に汗をかいているようだった。
 そもそも、『マリレイヴズ』流の倒し方を知っているパーティーにとって、こんなに時間のかかるモンスターではない。

「あれは……これよりも前に、『ヴェノムシャワーパイソンマジック』の毒を少量だが浴びたな。体質によっては少量でも効いてしまう場合があるらしい」
「力試しに魔法を使わないで倒してみよう、みたいなことをやってたのかな。それをやるなら、モンスターを選ばないといけないのにね。今だってそう。正攻法じゃ、無駄な時間を過ごすだけだよ」

 俺は、コミュの一瞬の観察力と冷静な口調に驚きを隠し切れなかったが、今はそれよりも優先すべきことがあった。人の命だ。

「アイツ、このままだと重症化して死ぬぞ。リーダーは何をしてるんだ? それとも、アイツがリーダーか? リーダーだから言い出しづらいのか? なら俺が……」
「私が止めるよ!」

「いやしかし、俺達から手を出すのはルール違反だから監視官に……」

 俺の言葉に耳も傾けず、コミュはすぐに討伐パーティーの元に走って向かった。

「何やってるの‼️ そこまでにしなさい‼️ 早く回復して! ほら、君も戻って!」

 俺はその光景に唖然とした。『君』とはモンスター……『ロングヘッジボアミッドレンジマジック』のことだ。ソイツが、コミュのあの短い言葉で、体を一瞬ビクつかせ、すごすごと洞窟内に戻っていったのだ。説得とか交渉とかいうレベルではない。単に驚かせたわけでもない。ほとんど、いや、完全に指示、命令だ。
 しかも、今はチラチラと洞窟内からモンスターが顔を覗かせて、猪のかわいらしさまで見せている。まるで、いつぞやのコミュのようだ。

 そして、その言葉はもちろん討伐パーティーにも有効だった。文句一つなく、構えていた剣を下ろし、すぐに回復魔法をかけ合っていた。
 俺が前に見た時のコミュのスキルは、長々とモンスターに話しかけて、俺達が理解できない無駄な話をしたり、本当に効果があるのか分からない論理展開だったりで、聞くに堪えないものだったのに……。

「監視官にも私から話しておくね」
「あ、ああ……」

 こちらに戻ってきたコミュは、すぐさま監視官のところに説明に行った。
 討伐パーティーに周囲から関与した場合、当日のモンスター討伐数がその影響度合いによって両者減らされるのだが、盗み聞きしてみると、どうやらコミュは『影響なし』『減少なし』で監視官と交渉して、成功したようだ。
 実際、一声のみでモンスターが洞窟内に戻っていったことなど、かつてないのだから、前例と照合はできず、判断もできない。当然の結果と言えるだろうが、それをあのコミュが行ったことが驚きだ。
 しかも、交渉とは言ったものの、監視官とは全くと言っていいほど交渉せず、コミュが『減少なしでいいよね?』と言って、それに対して監視官は『あ、はい』と言っただけだ。
 一体どんな魔法を使ったのか詳しく聞きたいところだが、次は俺達が討伐パーティーなので、その時間はない。

「それにしても、アイツはどうするんだ? まだこっちの様子を伺ってるぞ?」
「ふふふっ。これからが私の腕の見せ所だよ。こっちおいで!」

 コミュが手招きしながら、洞窟内の猪に声をかけると、なんだか嬉しそうにこちらに向かって走ってきた。マジかよ……。

「お願いがあるんだけど、洞窟の一番奥から、輝く鉱石のカケラを咥えて持ってきてくれないかな? 鳴き声とかで他のモンスターに頼んでもいいから」
「なっ……! おいおい……。それが簡単にできたら、紛うことなき人間国宝だぞ⁉️」

 コミュの突拍子もない『お願い』に、猪が鳴き声を上げつつ、両前足を挙げて反応した。

「持ってきてくれるって」
「お、俺は信じないぞ。その目で確認するまでは……! そもそも、アイツに何のメリットがあるんだよ。交渉になってないだろ」
「私に従うことが気持ち良い、それがメリットだよ。相手に対して、感情や論理や損得で訴えかけるんじゃなくて、それ以上の、お互いの波長を合わせるって言うのかな。モンスターにとって、そんなことをしてくれる人間なんていないからね。もちろん、モンスターにもいないんだけど」

 とんでもないことを淡々と話すコミュが、俺に奇妙な恐怖を抱かせた。凄まじいほどのスキルアップだ。おそらく、その言い方からモンスターレベルに関係なく命令できるはずだ。
 当然のことながら、『波長』とは何なのか分からないし、どうやってこの域に達したのかも分からない。後者なら、聞いてみれば分かるのだろうか。悪魔に魂を売っていなければいいのだが、そこまで聞くと俺の命が危ないような気もして、別の意味で恐怖だ。

「……。あのモンスターがチラチラ見ていたのは、また命令されたくてウズウズしていたってことなのか……。さっきみたいに、人間に対しても有効なんだよな? もちろん、俺にも……」
「人間にも有効だけど、そこはできるだけ自然にお願いしたいと思ってるかな。バクスには試そうとも思ってないよ。それこそ、ルール違反みたいな気がするし。
 って言うか、そもそもバクスには効かないような気がしてならないんだよね。もしかして、バクスのスキルに関係するのかな?」

 なんだか、コミュが別人みたいだ。本当に別人か、誰かに操られているかを疑わざるを得ないほどの、頼もしさを感じる。この短期間でここまで人は成長するものなのか?

「それは俺も分からないな……。一番気になっているのは、どうしてそこまで覚醒できたかだ。正直言って、俺の想定を遥かに超える異常なほどの成長性だ。本当に、『あの』コミュなのか? 場合によっては、剣を向けざるを得ないんだが……」
「手段だけじゃなくて、あれからの経緯について、しっかりと順を追って話した方が良いってことだよね」

「その通りだ。今の発言が本当のコミュから出てきたとしたら、抱き締めたくなるほど嬉しいんだが」
「じゃあ、あとでいっぱい抱き締めてもらうね!」

 コミュは目一杯の笑顔で、本当に嬉しそうに両手を横に広げて飛び跳ねた。
 それまでのギャップもあって、今までで一番かわいい表情と姿だと、不覚にも思ってしまった。
 『まだ油断できないぞ。これじゃあ、悪魔の思う壺じゃないか』と、俺は心に言い聞かせて、できるだけ平静を装うようにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

処理中です...