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第24話 釣果はいかが?
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次の朝。雪割り木イチゴのお陰で魔力は回復し、私も元気になった。村人と別れるのは辛いが、国に向けて出立しなくてはならない。
私はラースに命じて、金の棒にて宿代を支払うように命じたが、店主は固辞して受け取らなかった。しかし、ここまで世話になってただで帰るのはバツが悪かった。
「ルビー。盗賊退治をしてくれたから宿代はいいといってくれているんだ。それに、そればかりか、村人たちは旅に必要な食糧を進物として出してくれるらしいよ。ありがたいね」
ラースはそういうが、私は寝ていただけ。一番世話になったのに。それに村人たちにも傲慢な君主として映ってるんじゃ無いかしら? それはなんかいやだわ。クシャもいるし。
この村のみんなとも仲良くしたいのよ。
宿の外に出ると、積まれていたのは保存の利きそうな野菜と干し肉。そして焼かれたばかりの美味しそうなパン。
それをソリまで運んでくれるらしい。
ラースは喜んだが私は止めた。
「みんなの気持ちありがたいけど、私はただ寝ていただけ。これは受けられないわ」
「いえいえ、旅には食べ物が大事です。王女さまには早く国に復帰して頂きませんと」
そうは言われても、そうはいかない。
その時、民家の壁に釣り竿が見えた。私はポンと手を打つ。
「ねぇ村人のみんなはお魚は好き?」
「ええ、好物です」
「私とラースで今から大物を釣ってくるわ! それを私に調理させて欲しいの。今の私にはそれくらいしかできないけど」
「いいや、なんという光栄でしょう。ルビー王女がこの村に来て料理を振る舞って下さったとあれば、伝説になりましょう」
「では楽しみにしておいてね。じゃ、ラース行くわよ」
「う、うん。ルビー」
私とラースは村を出た。しかしながら、当然この辺の地形はまるで分かっていない。
「ねぇラース」
「なんだい?」
「川はどっちかしら?」
ラースは分かりやすく驚いた顔をしていた。
「や、やっぱり分からないんじゃないか。ルビーは! もし釣れなかったらどうするのさ?」
「だって釣り竿もあるし、ラースの魔法もあるし、きっときっと大丈夫だわ」
全然ラースの表情は曇ったまま。頭を抑えていた。
「あのねルビー。魔法はそんなに万能じゃないよ。私の魔法は日常魔法ではなく戦闘を主にしたものばかりだもの。狩猟に適したものは知らないよ?」
「え? じゃ、どうするの?」
「どうするもこうするも。釣るっていったのはルビーのほうじゃないか」
ラースの言葉に彼をキッと睨む。
ラースの顔が徐々にヤバイというふうに変わるのが分かったが私の腹立ちは収まらなかった。
「不遜よ! ラース!」
「あわわわわ、お許しを、姫」
「どうせラースは、私のことなんてどうでもいいんだわ。魚が釣れなくてピクシーの村人たちから白目で見られて恥でもかけと思ってるのね!」
「いいや違う。違うよ! ルビー!」
「いいや、信じられない。私が魔力を失ってぐったりしてたときもイヤラシいこと考えてたし」
「そ、そんなことない! かな? どうだったかな?」
「ほーらほーら」
「わーーかったってば。協力するよ」
「協力するも何もないわよ。私たちは二人で一つ。一心同体にも関わらず、ルビーが言ったとかそういうこというの止めて頂戴!」
「わ、わ、わ、わー……」
久しぶりにオドオドモードに入ったラースに川まで案内させた。
先のケーブエビルの洞窟に行く際に、大きめな川を見てはいたらしい。
案内されたそこは、川幅広く流れも急なところだった。
さっそく竿を握って糸を川に放ろうとした時、後ろからラースが声をあげた。
「わー……」
「なによ」
「あの~ルビー、餌は?」
「エサってなによ」
「魚が針に食らいつくためのものですよ……」
「あら、そんな便利なものがあるのね。さっさと出しなさい」
「あの~捕らないと」
「ま。今は手元にないわけ?」
「そうです」
「準備が悪いわ」
「はは……」
ラースはその辺をうろつき出すと、木の板にうじゃうじゃと動く長い虫を差し出して来た。
「ひぃ!」
「いや~、やっぱりそうなるよなぁ」
「これを私にどうしろっていうのよ」
「はいはい。私めがやりますよ」
ラースは諦めた様子で針に虫を刺す。虫は針に刺されてもなおももがいているので思わず目を背ける。
「さぁルビー。エサをつけたよ。今度は大丈夫」
しかし私は顔を背けたまま。
「いやよ。そんな気持ち悪いのなんて」
ラースはしばらく固まっていたが、仕方なしに竿を大きく降って、よどみの少ない場所に針を落とす。
そしてその大きな岩の上に腰を下ろしたかと思うと、手招きをした。
「なによ」
「ほらルビー。こっちへおいでよ。自分でやらないと意味が無いよ。ピクシーたちにお礼をしたいんだろ。私は補助するから、魚が釣れたら思いっきり釣り上げるのはルビーの仕事」
私は彼の物言いに思わず微笑んだ。まったく。また人のせいにして自分でことを成さないところだった。
私はラースの竿を持つ腕の中に抱かれるように中に入る。
大きな胸の中。温かくて心地よい。
「苦しくない?」
「ん。大丈夫」
ラースの優しさ。気遣い。
そう。こういうところが強くても傲慢じゃないラースのいいところ。
私の好きなところなんだわ。
「ほらしっかり竿を握って。下を見てご覧。ものすごく大きな魚影だ。雪の中だから食べ物も少ないし動きも遅い。あれが食らいついたら思いっきり竿を後ろに引くんだよ」
「わかったわ。竿を後ろにね」
しばらく糸の先と魚影とにらめっこ。
つんつんと針に魚のいたずらを感じる。
その時。グイっと竿が大きく曲がる。
「さぁ引いて。思い切り」
「うん!」
竿を思い切り天に向けて立てる。先端は大きく曲がっていた。
魚の方では大きく抵抗して、竿が引き込まれそう。
「きゃぁ! 重いわ! ラース!」
「ルビー! 諦めちゃダメだ。私がついている」
竿には四本の腕。しばらく格闘したところで、ラースが思い切り竿を上にあげると、銀色の鱗をした大魚が大きな岩の上に釣りあがり、大きく跳ねていた。
「うわー! やったわ! ラース!」
「お見事。これでピクシーたちも喜ぶでしょう」
ラースはその大魚を縄で縛り、肩に下げる。
「さあルビー。戻ろう」
「ええ、そうねラース」
私たちはピクシーたちの村へと戻って行った。
私はラースに命じて、金の棒にて宿代を支払うように命じたが、店主は固辞して受け取らなかった。しかし、ここまで世話になってただで帰るのはバツが悪かった。
「ルビー。盗賊退治をしてくれたから宿代はいいといってくれているんだ。それに、そればかりか、村人たちは旅に必要な食糧を進物として出してくれるらしいよ。ありがたいね」
ラースはそういうが、私は寝ていただけ。一番世話になったのに。それに村人たちにも傲慢な君主として映ってるんじゃ無いかしら? それはなんかいやだわ。クシャもいるし。
この村のみんなとも仲良くしたいのよ。
宿の外に出ると、積まれていたのは保存の利きそうな野菜と干し肉。そして焼かれたばかりの美味しそうなパン。
それをソリまで運んでくれるらしい。
ラースは喜んだが私は止めた。
「みんなの気持ちありがたいけど、私はただ寝ていただけ。これは受けられないわ」
「いえいえ、旅には食べ物が大事です。王女さまには早く国に復帰して頂きませんと」
そうは言われても、そうはいかない。
その時、民家の壁に釣り竿が見えた。私はポンと手を打つ。
「ねぇ村人のみんなはお魚は好き?」
「ええ、好物です」
「私とラースで今から大物を釣ってくるわ! それを私に調理させて欲しいの。今の私にはそれくらいしかできないけど」
「いいや、なんという光栄でしょう。ルビー王女がこの村に来て料理を振る舞って下さったとあれば、伝説になりましょう」
「では楽しみにしておいてね。じゃ、ラース行くわよ」
「う、うん。ルビー」
私とラースは村を出た。しかしながら、当然この辺の地形はまるで分かっていない。
「ねぇラース」
「なんだい?」
「川はどっちかしら?」
ラースは分かりやすく驚いた顔をしていた。
「や、やっぱり分からないんじゃないか。ルビーは! もし釣れなかったらどうするのさ?」
「だって釣り竿もあるし、ラースの魔法もあるし、きっときっと大丈夫だわ」
全然ラースの表情は曇ったまま。頭を抑えていた。
「あのねルビー。魔法はそんなに万能じゃないよ。私の魔法は日常魔法ではなく戦闘を主にしたものばかりだもの。狩猟に適したものは知らないよ?」
「え? じゃ、どうするの?」
「どうするもこうするも。釣るっていったのはルビーのほうじゃないか」
ラースの言葉に彼をキッと睨む。
ラースの顔が徐々にヤバイというふうに変わるのが分かったが私の腹立ちは収まらなかった。
「不遜よ! ラース!」
「あわわわわ、お許しを、姫」
「どうせラースは、私のことなんてどうでもいいんだわ。魚が釣れなくてピクシーの村人たちから白目で見られて恥でもかけと思ってるのね!」
「いいや違う。違うよ! ルビー!」
「いいや、信じられない。私が魔力を失ってぐったりしてたときもイヤラシいこと考えてたし」
「そ、そんなことない! かな? どうだったかな?」
「ほーらほーら」
「わーーかったってば。協力するよ」
「協力するも何もないわよ。私たちは二人で一つ。一心同体にも関わらず、ルビーが言ったとかそういうこというの止めて頂戴!」
「わ、わ、わ、わー……」
久しぶりにオドオドモードに入ったラースに川まで案内させた。
先のケーブエビルの洞窟に行く際に、大きめな川を見てはいたらしい。
案内されたそこは、川幅広く流れも急なところだった。
さっそく竿を握って糸を川に放ろうとした時、後ろからラースが声をあげた。
「わー……」
「なによ」
「あの~ルビー、餌は?」
「エサってなによ」
「魚が針に食らいつくためのものですよ……」
「あら、そんな便利なものがあるのね。さっさと出しなさい」
「あの~捕らないと」
「ま。今は手元にないわけ?」
「そうです」
「準備が悪いわ」
「はは……」
ラースはその辺をうろつき出すと、木の板にうじゃうじゃと動く長い虫を差し出して来た。
「ひぃ!」
「いや~、やっぱりそうなるよなぁ」
「これを私にどうしろっていうのよ」
「はいはい。私めがやりますよ」
ラースは諦めた様子で針に虫を刺す。虫は針に刺されてもなおももがいているので思わず目を背ける。
「さぁルビー。エサをつけたよ。今度は大丈夫」
しかし私は顔を背けたまま。
「いやよ。そんな気持ち悪いのなんて」
ラースはしばらく固まっていたが、仕方なしに竿を大きく降って、よどみの少ない場所に針を落とす。
そしてその大きな岩の上に腰を下ろしたかと思うと、手招きをした。
「なによ」
「ほらルビー。こっちへおいでよ。自分でやらないと意味が無いよ。ピクシーたちにお礼をしたいんだろ。私は補助するから、魚が釣れたら思いっきり釣り上げるのはルビーの仕事」
私は彼の物言いに思わず微笑んだ。まったく。また人のせいにして自分でことを成さないところだった。
私はラースの竿を持つ腕の中に抱かれるように中に入る。
大きな胸の中。温かくて心地よい。
「苦しくない?」
「ん。大丈夫」
ラースの優しさ。気遣い。
そう。こういうところが強くても傲慢じゃないラースのいいところ。
私の好きなところなんだわ。
「ほらしっかり竿を握って。下を見てご覧。ものすごく大きな魚影だ。雪の中だから食べ物も少ないし動きも遅い。あれが食らいついたら思いっきり竿を後ろに引くんだよ」
「わかったわ。竿を後ろにね」
しばらく糸の先と魚影とにらめっこ。
つんつんと針に魚のいたずらを感じる。
その時。グイっと竿が大きく曲がる。
「さぁ引いて。思い切り」
「うん!」
竿を思い切り天に向けて立てる。先端は大きく曲がっていた。
魚の方では大きく抵抗して、竿が引き込まれそう。
「きゃぁ! 重いわ! ラース!」
「ルビー! 諦めちゃダメだ。私がついている」
竿には四本の腕。しばらく格闘したところで、ラースが思い切り竿を上にあげると、銀色の鱗をした大魚が大きな岩の上に釣りあがり、大きく跳ねていた。
「うわー! やったわ! ラース!」
「お見事。これでピクシーたちも喜ぶでしょう」
ラースはその大魚を縄で縛り、肩に下げる。
「さあルビー。戻ろう」
「ええ、そうねラース」
私たちはピクシーたちの村へと戻って行った。
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